たまにはアーデさん家のリリルカさんが強くてもいいじゃない 作:ドロップ&キック
ザニスの放った魔剣、仕込まれていた炎の魔法により比喩ではなく火達磨になるリリルカ・アーデであった……
「ひゃはっ! ひゃっひゃひゃっ!! バカめ! 俺に逆らうからこういう目にあう!!」
炎に包まれ今にも燃え尽きそうなリリルカを見ながら気色の悪い哄笑をあげるザニス。
幸い、このザニスの私室はレア素材がふんだんに使われた完全防火・防音仕様、身の危険を感じればすぐに篭れるようにとザニスの性格を反映した現代風に言えばシェルターのような構造だった。
”
だが……
「何がそんなに嬉しいんですか?」
それは正しく悪夢のような光景だった。
そう、紅蓮の炎に包まれながら確かにリリルカは静かに”
「この炎に焼かれるのは、”
”轟っ!”
まるでその囁きが発動呪文だったかのように炎は翻り、
「ぎゃあっ!!?」
放ったザニス自身を喰らい尽くす!!
☆☆☆
リリルカ・アーデの魔法、それは言うまでもなく”
その効果は、
・受けた攻撃を放った相手に”
・反射できる上限は、術者の
・魔力消費は反射量に比例
・解呪か魔力枯渇に陥るまで効果は継続
という恐るべき
「鏡を己の姿を反射し映す」、「自分に向けられた悪意/敵意/害意の篭った力は呪いと同じ」、「鏡は太古より魔除け……呪詛を跳ね返すものとして祭られてきた」などの事象が詠唱術式から推察できる。
そしてある意味、「今の自分以外の誰かになりたかった」という想いが溢れた原作リリルカとの決定的に違う内面が、この魔法の本質なのかもしれない。
細かい推察はともかく、つまりはザニスの放った魔法は『リリルカを殺しきれる威力』はなかったのだ。だから反射され、その威力がまんま本人に返ったということだ。
単体でも破格と言っていい能力を持つ”
Lv2昇格時に発現したそのスキルの名は、
”
・耐久上昇。レベルに応じて上昇値は拡大する
・耐久の経験値獲得に補正。また上限解除
・精神/肉体を問わず状態異常無効化
・消耗に比例して耐久が大規模補正
というレアであると同時にまたしても強力なものだった。
常時耐久は上方修正され、また経験値も上限を無視して伸びやすく、状態異常にも強い。
だが、特筆すべきは”消耗に応じて大きく補正される耐久値”だ。
平たく言ってしまえばスパロボなどに出てくる”底力”と同種のアビリティで、残りHPが少なくなればなるほどリリルカは”
突き詰めてしまえば、オラリオにいる全てのLv2冒険者の中でも、リリルカは極め付きの”斃しにくい/斃されにくい”冒険者なのだ。
某狼人に言わせれば、「薄さと小ささに反比例するような頑強さを誇る盾」だそうな。
何しろとあるモンスターの突進をまともに喰らい、弾き飛ばされダンジョンの壁にめり込むような目にあっても、「痛いじゃないですか!」と大したダメージを負った様子もなくあっさり再起動し、”バハムート”で平然とどつき返すような娘なのだ。
無論、この時は……というか普段は、耐久の経験値を上げるために意図的に魔法は使っていない。
いや、命の危険を感じる時以外、基本リリルカは魔法を使わないのだ。
それ故に、その小柄な肢体に見合わぬ圧巻の耐久力を誇るリリルカにとり、ザニスの放った炎は残念ながら命を燃やし尽くすには到底足りなかった。
何しろヘルハウンドの
だが、Lv2になってからまともに鍛錬しなかったザニスは……
「まっ、こんなもんでしょう」
既に呼吸はなく、自ら放った炎に
あまりに呆気ない……自滅に等しいザニスの最期。それを見つめるリリルカの目に憐憫は無く、ただただ踏み潰された虫の屍骸を見るような目だった。
(これで下準備は終わりましたし……)
だが、彼女の目的はこれでしまいではなかった。
ザニスの首は目的の一つではあっても、目的の”全て”ではない。
リリルカには最後の仕上げが残っていた。
(ですが、その前に……)
☆☆☆
リリルカは、ファミリア本拠地の最深部にある扉をノックする。
そこは酒蔵と醸造所が一体となった、ファミリアで最も尊き者がおわします場所で、
「ソーマ様、リリです。入りますよ?」
既に何度も潜った扉を開けたリリルカに、
「よく来た」
少年の姿をとる酒の神ソーマは、微かな……だが、花がほころぶ様な笑顔でリリルカを迎え入れたのだった。
今回のノルマ:ザニス団長、あっさり退場
いや、禁欲で中身を腐らせていたザニスがどう考えてもこのシリーズで修羅の道を歩むリリに抗えるとは思えなかったもので(^^
ちなみに難攻不落のルビにある”ヴェルダン”は、第一次世界大戦で難攻不落と謳われた要塞の名前です。