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【茨城】

常磐線試運転 車両付着ちり 放射能濃度23倍に 動労水戸調査

JR常磐線の車両の床下に設置された空冷装置のフィルター(動労水戸提供)

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 全線開通(三月十四日)に向けたJR常磐線の試運転で福島県内の帰還困難区域を通過した車両に付着したちりの放射能濃度が、通常の車両より二十三倍も高かったことが分かった。調査した労働組合「動労水戸」の木村郁夫委員長らが二十八日、県庁で記者会見して明らかにした。木村委員長は「JRは車両の線量をきちんと測定し、公表すべきだ」と指摘している。

 常磐線は現在、東京電力福島第一原発事故の影響で富岡(福島県富岡町)-浪江(浪江町)間の二〇・八キロが不通となっている。不通区間の沿線一帯は放射線量が高く、住民が戻る見通しが立たない帰還困難区域に指定されたままだが、JR東日本は昨年十二月十八日に試運転を開始した。

 調査した試運転の車両は一月十八~二十二日の五日間運行。フィルターはモーターなどの空冷装置に取り付けられ、外気を取り込む際にちりなどを除去する。

 動労水戸の組合員がJR東日本勝田車両センター(ひたちなか市)でフィルターのちりを採取し、農作物や土壌の放射性物質を調べる「つくば市民放射能測定所」(つくば市妻木)で濃度を測定した。

 その結果、一キロ当たり二三五〇ベクレルのセシウム137が検出された。一方、六カ月間通常運行した車両のフィルターのちりから検出されたセシウム137は一〇一ベクレルだった。

 動労水戸によれば、勝田車両センターでフィルターの洗浄作業に携わっている整備員は約五十人。マスクを着けていても、鼻の中まで真っ黒に汚れるという。

 動労水戸はJR東日本に対し、帰還困難区域内を運行する場合、全車両の線量測定のほか、整備員の被ばく防止教育や防護用具の配備などを要求してきたが、会社側は「車両の測定を実施する考えはない」と拒否。動労水戸は今後、今回の調査結果を会社側に示し、車両の測定などを重ねて求めていく方針だ。

 自身もフィルター洗浄などの車両検査に従事し、調査を担当した照沼靖功(やすのり)書記長は「車両に放射性物質が付着するのは明らかだ。整備員がちりを吸い込み、内部被ばくする危険性は高い」と訴える。(佐藤圭)

JR常磐線の車両の床下に設置された空冷装置のフィルター(動労水戸提供)

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