東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

一斉休校要請 混乱収拾は国の責任で

 全国の学校は大わらわだろう。新型肺炎拡大防止で、国の一斉休校の要請はあまりにも唐突だった。どういう根拠にもとづく施策かも説明不足だ。生じる混乱の責任は国が負わねばならない。

 学校保健安全法は、感染症の予防上必要があるときは、学校設置者は臨時に休校できると定めている。つまり公立は地方自治体の教育委員会、私立は学校法人に判断は委ねられている。

 そのため一斉休校は国からの「要請」という形を取っている。強制力はない。しかし判断材料も十分ではない中、独自の対応をするのは困難と考える自治体も多いだろう。週明けから休校の動きは広まるとみられる。

 期末試験を実施しないまま、どうやって成績をつければよいのか。入試はどうするか。卒業式は-。休校後も先生たちの苦悩と混乱は続く。

 学校という多人数が密集する環境での集団感染を防ぎ、同居する高齢者に感染が広がらないようにする。一斉休校にはそういう効果が期待されている。しかし感染者が確認されていない地域まで一律で休校する必要があるのか、専門家の意見も分かれている。

 親が満員電車で通勤しているのに、子どもだけ休校にして家庭の感染リスクは低下するのか。学童保育や保育所は原則開所というが、判断の線引きは一体どこにあるのか。疑問は次々わいてくるが、明快な説明はない。

 根拠(エビデンス)がはっきりしない方針が次々打ち出されると、目指す方向性が見えにくく、国民の不信は増すばかりではないのか。

 心配されているのは、親が休まざるを得ない状況に追い込まれ、経済的な打撃を被ったり、働き手が不足する事態だ。実際、すでに知事が休校を要請している北海道では、大勢の看護師が日中働くことが困難になり、外来を制限し始めた病院もある。

 預け先のない家庭の子どもを学校で受け入れると決めた自治体もあるが、国は休業補償など具体策を早急に示すべきだ。

 休校後は、自宅で過ごすことを求められている子どもたちのストレスも気掛かりだ。新型肺炎への不安を過度に膨らませ、それが感染者への差別、偏見につながってしまう事態は避けねばならない。誰でも感染の可能性があるし、不運に見舞われた人がいれば互いに思いやる社会となるよう、大人は子どもたちと話をしてほしい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報