新型コロナ「『重症化してから検査・治療』という政府方針を上昌広医師がテレ朝でも「言語道断」と批判

テレビ朝日「モーニングショー」2月27日(木)テレビ画面を筆者撮影 

そもそも新型コロナウィルスは重症化してからの検査・治療でいいの?

 テレビ朝日「モーニングショー」で2月27日(木)、玉川徹の「そもそも総研」はこの問題を深彫りした。

 「重症者に対して検査・治療する」という方針を日本政府が2月25日(火)に発表したばかりだ。

 だが担当のレポーター兼ディレクターの玉川徹は「基本的に医療は軽いうちに見つけて、治療を開始して重症化させないというのが鉄則なのでは?」という疑問を専門家たちにぶつけた。

 問題が専門家でないとわかりにくいテーマになっていくと取材者がこうした自分の問題意識をぶつけるような報道が少なくなる傾向があるなかで、注目すべき取材姿勢だと感じたので以下、お伝えしたい。

東京大学医科学研究所の四柳宏教授

 ウィルス治療の専門家である四柳教授を玉川はインタビュー取材した。

(玉川)

「軽症の段階でPCR検査をして感染していると分かった場合は抗ウィルス薬を早めに使った方がいいのでは?」

(四柳教授)

「抗ウィルス薬に関してはご自身の治療という意味と他の人に対する感染を防ぐという意味があって後者のためには早い方がいいということは明らかだと思う。前者に関してもおそらく(治療)効果があるということがはっきりすればできるだけ早い方がいい。」

 感染拡大を防ぐためには早期治療が必要だというのが四柳教授の考えだった。2月25日に政府が出したコロナウィルス対策の基本方針は重症者を中心にした医療体制にするというものだったが、それに疑問を投げかけていた。

(玉川)

「抗ウィルス薬を早めに投与した方がいい理由というのは、ウィルスの仕組みからすればどういう説明になるのか?」

(四柳教授)

「一番の理由は、たとえば今回の新型コロナウィルス肺炎にしても、最終的にはやっぱり肺の組織が損傷を受けて、治療しても肺がうまく機能してくれないというふうなことがありますので、そういった臓器の損傷を防ぐということ。原因となるようなウィルスが消えてくれればそこから先は損傷は少なくとも進まなくなるというふうに考えてよろしいと思いますので、そういった意味で抗ウィルス薬の効果というのは最終的にはそのウィルスが感染をする臓器、それの障害を軽減して、最終的には生命予後を良くするというような、そういうことになるかと思います。」

 四柳教授は「感染が進んで臓器が損傷する前にウィルスを減らす治療をする方が合理的」だと言う。

医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師

 上昌広理事長は自身も内科医で元東京大学医科学研究所特任教授の上昌広医師もリスクの高い人々への対応として「早期の治療」が必要だと主張している。

(玉川)

「PCR検査をする基準において『まだ重症じゃないから検査できません」と言っているところもあるんです。これは合理的だといえるのか

どうか?」

(上昌広医師)

「私はもう言語道断だと思いますね。

ご高齢の方がかかれば亡くなる非常に怖い病気に対する時には、早期診断、早期治療が鉄則です。

重症まで待ってから診断をつけるというのは・・・

医師として許容しがたい状況ですね。」

 上医師は2日前にTBS「NEWS23」に出演した際にも口にした言葉と同様にかなり強い言葉で医師としての倫理をにじませていた。

(玉川)

「やはり軽症の方が治療の開始にとっては良いんですか?この病気でも?」

(上昌広医師)

「もちろんです。要はウィルスの感染症は早く治れば何の問題もなく治るんですが、こじらすと様々な他の菌の感染なども合併してくるんです。その結果、どうしようもなくなるんですよ。ですから早期診断、早期治療は特に高齢者の感染者には鉄則です。」

(玉川)

「なぜ早期の方が良いんですか?」

(上昌広医師)

「ウィルスとの闘いは自分の免疫力プラス薬なんですね。」

(玉川)

「ああ、はい。」

(上昌広医師)

「それは相手(ウィルス)が少ない時の方がこっちも強いですから、早くやらないとダメです。」

(玉川)

「なるほど。やはりウィルスの数が少ない時に薬を使う方が良いわけですね。」

(上昌広医師)

「もちろんです。これは鉄則です。」

(玉川)

「ということはウィルスが少ないということは軽症の段階で使うということなんですね?」

(上昌広医師)

「その通りです。」

 上昌広医師は軽症者が感染を拡大させないためにも、検査をして確定診断を受けること重要だと指摘する。

(上昌広医師)

「軽症の方が無理して職場に行って、うつしてしまいます。

でも行かないようにするためには、やはり診断しないと動機づけできませんよね?

軽症者こそ、ご希望される方は検査をして診察して『あっ、自分がかかっていた』とわかればそれは注意しますよね?」

(玉川)

「はい・・・」

(上昌広医師)

「軽症者は検査をせずに『とにかく家にいてくれ』って(という政府方針は)、それは無理ですよ。

(玉川)

「なるほど・・・」

(上昌広医師)

「それ、厚生労働省の官僚が検査を受けずに働いていましたよね?」

(玉川)

「はい・・・」

(上昌広医師)

「あれはたぶん軽い風邪だと思って検査を受けなかったんですね。」

(玉川)

「そうすると軽症の人に家にいてもらうためにも、軽症の人が感染しているかどうかを調べる必要があるということですね」

(上昌広医師)

「その通りです。とにかく患者さんもやはり熱が続いたりすると検査を希望されるんですよ。患者さんの立場に立って、ご希望なさる検査を提供する。そして自分で結果がわかれば行動を変えますからね。こういうふうなサポートをするのが国の仕事だと思うんですね。」

 上昌広・医療ガバナンス研究所理事長(医師)の歯切れの良さは2日前のTBS「NEWS23」に出演した時と変わりなかった。

 こうしたVTRの後、レポーター役の玉川はスタジオで呼吸器内科アレルギー内科の専門医である池袋大谷クリニックの大谷義夫院長にも話を聞いた。

(玉川)

「一般的に軽い段階で見つけて、早く治療すれば、重症化は防げるというのは当たり前のことですよね?」

(大谷義夫・池袋大谷クリニック院長)

「鉄則です。薬はもちろん必要ですけれども、薬よりも必要なのは、辛くなる前のご自分の免疫力。免疫がなかったら助からないですし、さらにはどんな病気も遅くなってはいけない。結核なんか典型ですけど、患者さんの受診が遅れる。医師がレントゲン撮るのが遅れる。遅れてしまって保健所への報告が遅れると、私たちは後悔するし、いろいろな方々から責められる。今回はそれが行政のところで止まっている。

(玉川)

「ウィルスの感染症もまったく例外ではないということなんですよね?」

(大谷義夫・池袋大谷クリニック院長)

「おっしゃる通りです」

 スタジオでは玉川徹が新型コロナウィルスに関しても「早期検査」のメリットとして(1)重症化を防ぐ、(2)検査をして感染を確定させることで感染者を自宅待機させて他人への感染拡大を防ぐことができる、と解説して、どちらもPCR検査の普及が必要だと解説した。

その上で、厚生労働省に取材したところ民間の検査会社にも働きかけて、PCR検査用のキット配付を進めていくとし、PCR検査の保険適用についても臨機応変に対応するという姿勢を取材して伝えていた。

 ただ、こうなってくるとつい2日前の2月25日に政府が出した基本方針がどのようにして決まったものなのか。それを決める会議でなぜ上昌広医師のような異論が出なかったのか。今後はこの問題を検証していくことが報道機関に求められる課題だと考える。

症状が軽い人も早めに検査して早めに治療する

 上医師の説明を聞いてみれば素人でもわかるような常識的な理屈である。ところが政府の基本方針がそうしたものにならなかったのは一体なぜなのか。何か別の事情があったのか。ジャーナリズムはぜひこの問題を深掘りしてもらいたい。