東京2020 祝祭の風景
アスリートや市井の人々の思いに耳を傾けながら、この国の風景を見直す
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【暮らし】「男性だから」「女性だから」「外国人だから」 職場で注意「無意識の思い込み」女性活躍推進や外国人労働者の増加などを背景に、多様な人が働きやすい職場づくりへの意識が高まっている。異なる価値観を持つ人と信頼関係を築くときに注意が必要なのが「男性だから」「文系だから」といった無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)だ。どのように気を付ければいいのか、性別に関するアンコンシャスバイアスを例に考える。 (生津千里) 「女性の方が角が立たずにマイルドに伝わるから」 名古屋市内の商社に勤める二十代の女性会社員は一年ほど前、男性上司の言葉に違和感を覚えた。仕事のやり方について、取引先に注文をつけないといけない場面だった。「女性の特性を生かした働き方の一つか」と思って従ったが、釈然としなかった。 愛知県刈谷市の製造会社勤務の女性(25)がいら立ったのは、同僚との飲み会の支払いの際、男性が言った「女の子は安くていいよ」というせりふ。「同じ戦力としてみられていないのでは」と感じたという。同じ会社で働く女性(26)は、上司との面談時、「いつ結婚するの」と毎回聞かれることが不満だ。結婚願望はないと伝えているのに。「女性は全員、結婚、出産すると思い込んでいる」 こうした一見何げない言動の裏にあるのが、アンコンシャスバイアスだ。問題が根深いのは、本人に悪気がないこと。「良い上司、同僚であろうとして、相手を気遣う中で言ってしまう場合もある」と話すのは、二〇一八年設立の一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所(東京)の認定トレーナー、名古屋市の市川麻波さん(47)だ。 多様な人が働きやすいようにと、近年、アンコンシャスバイアスに関する研修を行う企業が増えている。職場でまん延すると、人間関係が悪化したり労働意欲が低下したりする危険が高まるからだ。セクハラなどハラスメントの原因にもなりかねない。 以前は「女性だから」といった無意識の思い込みに裏付けられた言葉を投げ掛けられても、受ける側も「そういうもの」という共通の認識があった。だが、価値観が多様化し、人権意識も高まった今は「接し方に正解はない。一人一人に合った方法を考えないといけない」と市川さんは言う。 アンコンシャスバイアス関連の研修に年約五十回、講師として出向く市川さんは「無意識の思い込みは誰にでもある」ときっぱり。例えば冒頭の女性会社員は後輩の男性を指導する際、「男性は度胸があるから飛び込みで営業ができて当然と思っていた」と振り返る。「相手が女性の時より教え方が雑だったかも」と話す。 「自分にも無意識の思い込みがある、と気付けるかどうかが第一歩」。市川さんは研修で女性への思い込みを扱う場合、「男性にも同じことを言いますか」と尋ねる。多くの人は「言わない」と答える。なぜ言わないのかを聞くと、自分で理由が分からず押し黙るという。これが、気付きだ。 重要なのは、目の前の相手がどのように受け止めたかに注意を向けること。上下関係があると、部下が上司に指摘するのは難しいため、「むっとした」「苦笑いしている」など言葉以外の反応を見るといい。言動が適切かどうか自問することも必要だが、自分では分かりにくい例も多い。周囲に率直な指摘をくれる人をつくることも効果的だ。 怒らせたり傷つけたりしたと感じたら、どう思ったかを聞いてみる。上司と部下の関係だと相手が遠慮する可能性があるため、「私はこういう思い込みをしていたかもしれない」と率直に伝え、同じ言動を繰り返さないよう注意する。 「アンコンシャスバイアスがなくなることはない」と市川さん。ただ「意識すれば、傷つけることは減らせる。まずは接する回数の多い相手と向き合うことから始めてほしい」と話す。 PR情報
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