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【社説】

新型肺炎と倒産 中小向けに集中支援を

 新型肺炎の拡大に伴い、企業倒産への不安が増大している。終息の兆しがみえない中、体力のない中小企業は崖っぷちに立たされている。政府は中小向けのピンポイント型支援策を強化すべきだ。

 ここにきて愛知県蒲郡市の旅館や北海道のコロッケ業者が経営破綻した。新型肺炎の影響で経営が急激に悪化したためだ。

 中小企業への打撃は、中国からの旅行客が激減した観光業界を中心に広がっている。宿泊施設のほかバスやタクシー会社、飲食店や土産店などが軒並み大幅な売り上げ減少に陥っている。

 日本旅行業協会は団体旅行が禁止となった一月下旬から三月末までの中国人旅行客の減少は四十万人と予測。昨年の訪日中国人は約九百五十九万人だが、このままだと激減は必至。資金繰りが悪化する事業者も確実に増えるだろう。

 コンサートやスポーツなど各種イベントの開催を見合わせるケースも一気に増えた。感染拡大を防ぐ意味では理解できる措置だ。

 ただイベント関連の事業者もその多くが中小だ。会場の違約金や顧客への払い戻しなどが重なり、短期間で資金不足に陥る恐れもあり注視が必要だ。

 さらに観光地に限らず飲食店への影響も懸念され始めている。中国からの輸入食材に頼る店は多い。だが供給網の寸断で在庫が底をつく店も出ており、早急に実態把握すべきだ。

 事業者数ベースでは、国内の九割以上が中小企業だ。中小の製造業や各種サービス業は、雇用面も含め国内経済を支える主役である。ただ財務面で脆弱(ぜいじゃく)な事業者が多いのも事実だ。

 政府は、中小向けの五千億円規模の緊急貸し付け・保証枠の拡大や、解雇防止のための雇用調整助成金の要件緩和などで対応している。各都道府県も信用保証協会がセーフティネット保証と呼ばれる仕組みを拡大し、融資を受けやすくしている。

 しかし対策は所管する官公庁別にさみだれ式で行われ、やや力強さに欠ける。株価の大幅下落などで心理面での不安も広がっている。ここは政府が緊急対策をてこ入れした上で一括公表し、支援する強い姿勢をアピールすべきではないか。

 新型肺炎の影響は大企業も受けている。中国からの部品調達難で生産に支障をきたす企業も多い。だが体力がある大企業が代金値下げといった負担を下請けにかけないようくぎを刺しておきたい。 

 

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