たまにはアーデさん家のリリルカさんが強くてもいいじゃない   作:ドロップ&キック

10 / 14
2桁突入♪
相変わらずリリルカ先輩は絶好調です。






第10話:”アーデさんがリオンさんの『共犯者』でもいいじゃない”

 

 

 

「”復讐者(リベンジャー)”に堕ちましたか……リュー・リオン」

 

「まあ、いいんじゃないですか? リリは賛成も反対もしませんが……それが今の貴女の生きる糧だというのであれば、全肯定もしましょう。どんなものであれ、生きる理由があるというのは悪いことじゃありませんし」

 

彼女自身でも少し白々しい気もしたが、意外な事にそれはリリルカの本音でもあった。

だからだろうか? リリルカがこんなことを言い出したのは。

 

「なんだったら協力しましょうか? ああ、人殺しの直接的なのは勘弁ですが、隠れ家の提供や食料や物資の調達なら受け持ちますよ? 無論、無償と言うわけにはいきませんがね。きっちり対価はもらいます」

 

「なぜ?ですか……そうですね、大した理由ではありませんよ」

 

彼女はシニカルに笑い、

 

「リリはとても歪んでるからでしょうかね?」

 

どういうこと?

 

「リリは嬉しいんですよ。光届かぬ地下迷宮(ダンジョン)の中においてさえ自ら輝いていた貴女が……自らがオラリオの正義と秩序の番人だと肩で風を切っていた貴女が、」

 

いくつか確保してる隠れ家の合鍵を投げ渡し、

 

「リリと同じ”暗がり”に堕ちてきたことが、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

復讐を一応は成し遂げたリューは、数奇な運命(シル・フローヴァにお持ち帰りされたとも言う)を経て”豊穣の女主人”に雇われの身となる。

シルがリューを拾ったのは偶然かもしれないが、全てが偶然とは言い切れない部分があるのだが……

 

とはいえ影から支えたがしばらく姿を見なかった、あるいは隠れ家(ヤサ)を使った形跡がなかったため死んだかと思っていたリューが、行き着けの店(豊穣の女主人)でウエイトレス姿でいたのを目撃したときリリルカはあんぐりと口を開けたものだが……

 

だが、ばつが悪そうな顔で再会する彼女にリリルカは自然に微笑んでいた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

さて、時節は再び現在に戻る……

 

 

 

ベートはリリルカの差し向かいに座ったまま自分の注文を行い、それを持ってきたリューはちゃっかりリリルカの隣に座りお酌のサービスと言うレアな風景だ。

彼女がそろそろシフト的に休憩と言うのもあるが、リリルカは開店当時からとは言わないものの古株のお得意様、毎度その小さな肢体のどこにそんなに入るのか?と生命の神秘を感じさせる上客だ。

この位のサービスは大目に見る大柄……もとい。大らか店主(ミア)である。

 

もっとも、彼女が昵懇な関係にある某女神のお気に入りというのもあるが……

 

「ところでリリルカ、お前いつまで”Lv2(ソコ)”にいるつもりなんだ?」

 

リリルカがLv2に昇格したのは”平原の主”を駆逐した直後……ギルドにはソーマ・ファミリアの抱える諸事情があるため報告してないが、その事実を知る数少ない人物であるベートは厚手の肉を噛み千切りながらそう疑問を呈した。

 

「それは私も疑問だった。リリの力量ならとっくに”上”へいける」

 

と不本意ながらベートに相槌を打つリュー。

リューもまたリリルカがLv2であることを知るレアな存在であり、また現状のリリルカの強さ……「Lv2冒険者にあるまじき戦闘力」はよく知っていた。

 

それもその筈で、リリルカがかつて協力を申し出る代わりに要求した対価は、金銭ではなく「戦闘訓練とダンジョンでのノウハウの伝授」だった。

つまりリューもまた、ベートと同じく言うならば”リリルカの師”の一人なのだ。

そして、その師弟関係も未だに続いている。

リューに言わせれば、「腕と勘を鈍らせない程度のトレーニングにリリルカがつきあってるだけ」ということになるのだが。

 

「リリにも色々と思うところがあるのですよ。当然、今のレベルで足踏みしてるのも理由はあります」

 

リリルカはとある理由から神ソーマの寵愛を一身に受ける身だ。

だから今のパラメータを見る限り、いつでもLv3に上がれるはずだった。

実際、彼女はLv2になった時点で発現した発展アビリティ”隠者行(ハーミット)”を駆使してソーマ・ファミリアの団員に気づかれないまま頻繁に主神(ソーマ)と逢瀬を重ね、細かくステイタス更新を行っていた。

 

「例えば、現在公的なリリの冒険者Lvは1ですから、今以上にあげると流石に誤魔化しづらいですし」

 

どこぞのファミリアでは大半がレベル詐称をしてる疑惑があるが……それはよい。

リリルカは最後のから揚げを飲み込み、

 

「だけど、そろそろそれも潮時なのかもしれませんね」

 

腕を組みスッと目を細め、

 

「どうやらリリの実力(レベル)団長(ザニス)に勘付かれたようです……刺客を送られました」

 

カヌゥたちのことなのだろうが、ベートもリューも驚くような反応はしなかった。

ソーマ・ファミリアの体質やザニスの性格を考えれば、遅かれ早かれこうなることは予想できた。

リリルカ、いや神ソーマが彼女のレベルをギルドに申請しなかったのも、こうなる事態を少しでも先延ばし……リリルカが、それを跳ね返せる実力をつけるまでの時間稼ぎと言う意味合いもあった。

 

むしろよくぞ今まで勘付かれなかったと上手く立ち回りファミリアの団員を欺き続けてきたリリルカを褒めてもいいぐらいだ。

 

「スキルのおかげで力と耐久は未だに景気良く伸びてますが……他のパラメータが頭打ちになってきてます。そういう意味でも頃合かもしれません」

 

「やるのか?」

 

ベートの言葉にリリルカは小さく頷き、

 

「ザニスの動向は把握済み。今夜で決着をつけます……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のノルマ:リリルカとリューの繋がりを明確化

前書きにも書きましたがようやく10話突入、そしていよいよクライマックスに入っていけそうです。
だけどそれは同時に折り返し地点を過ぎたということで……最後までエタらず書きたいところです。

ご感想などなどお待ちしています。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。