たまにはアーデさん家のリリルカさんが強くてもいいじゃない 作:ドロップ&キック
行き着け料理屋兼酒場の”豊穣の女主人”にて、いつものように
二人がけのテーブルに一人で陣取り舌鼓を打っていたら、埋まる予定のなかった相席にどかっと何者かが腰を下ろす。
精悍と言う言葉が擬人化したような引き締まった筋肉質の体にかつて怨敵であり仇だったモノを象った刺青を施し、白銀の頭髪に揺れる髪と同色の獣耳……
「よお、”リリルカ”。相変わらずのボッチメシか?」
「これはこれは。誰かと思えば、ヴィーザル
と返しながら、リリはきょろきょろと周囲を軽く見て、
「そちらこそ珍しく一人ですか? もしかして”
「阿呆。だれがそんな寂しい遊びをするか。それと、」
彼は苦笑しながら、
「妙に懐かしいイントネーションだな?」
リリルカ・アーデとヴィーザル・ファミリアの”
それこそ、彼がLv2の時に与えられLv4になるまで使っていた二つ名、姓をもじった”
無論、今の二つ名は”
☆☆☆
ベート・ローガは紛れもなくオラリオの誇る”
無論、単純な強さで英雄と呼ばれているわけではない。
彼より強い存在は、オラリオの冒険者に限っても片手の指の数よりは多いだろう。
では、何故彼が英雄なのか? 何が彼を英雄に足らしめさせているのか?
言うまでもない。彼の生き様が英雄に相応しいからだ。
そう、彼の波乱万丈に満ちた半生は、まさに「悲劇と栄光に彩られた」……”英雄譚”に相応しいものだった。
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ベート・ローガは、狩猟と放牧を生業とする遊牧の獣人部族”平原の獣民”、その族長の息子として生まれた。
生まれ乍らに彼の身体能力は高く、また弱肉強食を是とする部族の気風を体現したような存在で、強さに対し真摯であり、また自己鍛錬に弛まぬ努力を続けた。
一族の誰もがベートが父を越える良い族長になると期待していた。
そう、それはベートにとっても家族にとっても約束された未来だった……いや、そうなるはずだった。
だが、彼が12歳の誕生日を迎える日……悲劇が襲った。
”平原の主”
その竜型のモンスターは、そう呼ばれていたらしい。
そして、そう呼ばれるほどの強さを誇る……ダンジョンの外側であれば、規格外もいいところのモンスターだった。
”平原の獣民”は誰一人、”
そんな彼らが一丸となっても、勝てるような相手ではないのは自明の理だった……
ただ一人生き残った幼き日のベート・ローガの目に映ったのは、あまりに凄惨な光景だった……
食事よりも短い時間の間で父が、母が、妹が、一族が、そして……将来を誓い、共に一族を守り立て引っ張っていこうと約束した幼馴染が物言わぬ骸となり散乱していたのだった……
なぜ、”平原の主”が高々遊牧獣人族を襲ったのかは、今となっては誰にもわからない。
単にたまたま通り道に”平原の獣民”が野営していただけなのかもしれない。
理不尽だった。何もかもが。
だが、その理不尽を何食わぬ顔で行えるのが圧倒的なまでの”力の差”だった。
例えば、である。
子供の頃、面白半分に……いや、面白さのためだけにアリを踏み潰したり、あるいは大人になった今では考えられないほど無慈悲に他の動物や昆虫の命を奪った記憶はないだろうか?
”平原の主”と”平原の獣民”の間に起こったそれは、突き詰めてしまえばそれらの行動と大差ない。
ただ、たまたま踏み潰された側が、感情をもてるほどの知性と思考を持ち合わせていただけだ。
そして、その情景を嗚咽と慟哭と共に魂に焼き付けたベート・ローガは、優しい日々をくれた愛しい者達を弔い、迷宮都市オラリオへと足を向けた。
二度と『理不尽に踏み潰されない』ために……
だが、その街でベート・ローガを待っていたのは、原作と呼ばれる世界と似て非なる運命の連鎖だった。
今回のノルマ:ベートさんをヴィーザル・ファミリアに所属させたままにする
いや~、読んでるダンまちSSの中でベートさんが元鞘のヴィーザル・ファミリアに所属したままって作品が読んだことなかったため、思わず書いてしまいました(^^
そして、この世界のベートさんは……