「必ずしも全ての委員が、報告書全ての記載について完全に合意したものではありません」。2020年2月5日、最終回となる第5回葛西臨海水族園事業計画検討会が新宿NSビル(東京・新宿)で行われた。冒頭は、報告書案の「おわりに」に記された一文だ。これほど複数の委員が不満を主張し、物別れに終わる検討会も珍しい。
葛西臨海水族園(東京・江戸川)は都立葛西臨海公園内に立つ水族館で、1989年10月に開園してから約30年がたつ。大人も子どもも楽しめる水族館の先駆け的存在で、現在も年間約150万人が訪れる。谷口建築設計研究所(東京・千代田)が設計を手掛け、建築業協会賞(BCS賞、91年)などを受賞している。
都は既存施設の老朽化やバリアフリー化の困難さなどを理由に、水族園の見直しを進めてきた。2019年1月に基本構想を発表。それを踏まえて、新たな水族園の規模や整備手法、コストなどについて検討を行うために「葛西臨海水族園事業計画検討会」を同月に設置した。
(これまでの経緯は、「葛西臨海水族園の「改築」検討に谷口吉生氏が苦言」(18年12月公開)、「水族館ブームの火付け役、「葛西臨海水族園」の新築議論を知っていますか?」(19年9月公開)で既報)
都は隣接する土地に最大約276億円をかけて別の建物を新築し、PFI-BTO(建設・移管・運営)方式で事業化することを想定している。報告書案によれば、7年後に新施設の完成、開園を目指す計画だ。しかし一部の検討委員は、既存施設や周辺にある公園との連携などを含めた検討を都に求め、議論は平行線をたどった。
そもそも既存施設は使い続けるのが困難なほど老朽化しているのだろうか。水族園の裏側を取材した。
訪れたのは2月12日水曜の休園日。バックヤードの入り口は思っていたよりも小さく、入ってすぐ右側に運搬用エレベーターがあった。「開園した当時はまだバリアフリー対策がそれほど重視されていなく、来園者が使用できるエレベーターはこの1基のみ。飼育員が作業している中を、ベビーカーを押す親子連れなどが通っている状況だ」と、都建設局公園緑地部の野上哲郎・再生計画担当課長は話す。
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