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(百合子)いらっしゃ~い。あ~! 近藤君。
(照子)えっ 誰?(信作)知らん。
(近藤)こんにちは 百合ちゃん。百合ちゃん…。
(百合子)え~ ほんまに来てくれたん?ありがとう。
当たり前や。 約束したやろ あの時。
あの時?知らん。
これ。(百合子)何?
知らん。何?何? 知らん。
(百合子)あ~! あっ これ… もう ありがとう。
あっ 紹介します。中学の時の同級生の…。
自分は 近藤 彬といいます。
自分を自分って言うタイプ。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
(百合子)お待たせしました。ありがとう。
はあ~ 同窓会か~。はい 先月行ってきたんです。
でも 何でイヤリング?その時に どっかで落としたみたいで。
百合ちゃん もうず~っとしゃべりっ放しやったから気ぃ付かへんかったんやなあ。やんなあ 次の日 声カスカスやったもん。
同窓会て 毎回 毎回同じことで盛り上がりますよねえ。
(百合子)そう そう そう。誰々君 運動神経よかったぁとかな。
(近藤)運動神経といえば 和田や 和田。ちょっと見んうちに 太りよったなあ。
(百合子)昔は すごい かっこよかったんやからぁ。
(近藤)「昔は」て。(百合子)あ… ハハハッ。
(近藤)和田は悦子ちゃんと つきあってたしなあ。
あっ ちゃう ちゃう ちゃう小森さんや 小森さん。
ああ 小森は 悦子ちゃんの前や。そやった。
なあ 知ってる? あそこもめて大変やったんよ。えっ そうなん?
何か… あっ…。ああ…。ごめんなさい。
あ… いや そら 声カスカスなるなあ。
先輩方もしてはるんですか 同窓会。
あ… うちら… 同窓会したことあった?
記憶にございません。同窓会はあっても声かけてもろてへんのちゃう?友達いいひんから。
ちゃうわ! いるわ 友達。うちと ここと あの… 喜美子や。
そや 3人や。そやで 腐れ縁や。
回想 ♪~
あれ? ほれ…。
(喜美子)とやあ~!
ああ…。アッハッハッハ…。
息できひん…。
アッハッハ 新聞紙 詰めたった。
鼻血か…。出てへん。出てへんのかい!
中学も終わりや。うち性格悪いさけ 友達できひんかった。
ハハハハ。高校行っても できひんわ。
あんた いいひんと困るわ。
(敏春)僕は 羨ましいけどなあ。うん?
腐れ縁の3人が ずっと おんなじ町でずっと仲ようしてるなんて。
さすが 敏春さんやあ。
あっ うちの旦那ですぅ。ええ さっきお聞きしました。
同窓会いうても結局 なかなか集まらへんしねえ。
あっ でも 近藤君が声かけたらほとんど来るやんなあ。
いや たまたまやて。たまたまちゃうよ。
高屋君まで来てたやん。(近藤)北海道から来てくれたもんなあ。
(百合子)近藤君昔から そういうとこ変わらへんわ。
(近藤)百合ちゃんも全然 変わらへんやん。
(百合子)えっ?(近藤)あのころのまんまやん。
いや~ もう 何か この辺は変わったでえ。こうな…。
あっ… あっ また…。ごめんなさい。
あっ ええよ ええよ。話 尽きませんね。
百合ちゃんは 同窓会ん時ず~っと大野先輩の話 してました。
ちょちょ… やめえ。(近藤)自分 全部 覚えてます。
やめろや 恥ずかしいな。それ うれしい時の顔やん。
あっ?(近藤)「信作と13人の女」。
(笑い声)(敏春)今日は その話 よう出てくるな。
信作の人でなしぶりが よう分かったやろ。
俺 もう家帰ってええ?いや ここや ここ。
先輩は別れた女の人たちに未練が残らんようわざと ひどい別れ方をしはったんですよね?えっ?
自分は そこに先輩の男らしさを感じました。
あ…。何してんねん。
けど 自分が一番 感動した話は違います。そんな話ある?
先輩は 百合ちゃんと一緒になるために柔道の特訓を…!
回想 信作。 うち 子ども4人産んでるんやで?
4人やで 4人。そうは見えんかもしれへんけど若い頃の筋肉 ぜ~んぶ脂肪に変わって美しかった体は ボロボロや。
おなかなんかな 4人も産んでみぃもう 妊娠線が いつまでたっても消えへんスイカみたいに残ってるわ!
スイカ?ほや。 スイカみたいな線が ここにな…って そんなとこに反応せんでええ。
はあ その上 柔道なんて十何年ぶりやで?
そんな うちみたいなもんに投げ飛ばされるて どういうこっちゃあ!
(八郎)えっ! 信作照ちゃんに投げ飛ばされたん?何や。 何?
ちょちょ ちょちょ… 何 何…。(陽子 照子)甘えんな!
うちには 惨めな話にしか聞こえへん。
負けて 負けて 負けて。どん底に突き落とされてもそれでも諦めず 恥ずかしげもなく百合ちゃんに 堂々とプロポーズをする!
今のは 褒めてた思てええんやな?(近藤)先輩は すごい人です。
彬。はい。
何回もせんでええ。そのとおりや。
草間流柔道は 勝ち負けが大事やないんや。感動しました。
彬!
これが 草間流柔道や!
痛い! 痛い痛い! 参った! 参った!
はい。
(近藤)すんませんでした…。あんなん ほっとけ ほっとけ。
負けることには慣れてるもんなあ。
近藤君 中学の柔道部主将で県の大会でも優勝してるんです。
そんな すごい後輩がいたなんてなあ。
何や そういうたらどっかで見たことあるて思ててん。
また調子ええこと言うて。いや ほんまに。 会うの初めてやないで。
アッハハハ…。
多分 見たことあんのは ほんまです。なっ?
実は 自分も 皆さんのことはお見かけしたことがあります。
うちらのことを? えっ?
ヒント。え~… あっバキュ~ン! うっ。 ああっ。
何じゃこりゃ~。
(銃声)
あ~! あっ あっ 分かった 分かった!あの ここまで出てる! あの あれ…!
お巡りさんや!ピンポ~ン!
(信作)おおっ!昨年の春の異動で信楽の派出所に配属になりました。
何や 私服やと分からんもんですねえ。ハッハッハッハッ。
先輩?うちも夢やってん。
小さい頃 うち 婦人警官 目指しててん。
へえ~。(百合子)へえ~。
あ~ 見たかったなあ…照子の婦人警官姿。
ほんまにぃ?けど もし そうなってたら僕らは 会うてへんかったかもしれん。
あかんあかん! それは嫌や~。(敏春)僕も嫌や。
いつまでいんのやろ この2人。
百合ちゃんの夢は家庭科の先生やったな。
えっ 何で?卒業文集。
あ~ 読んだん?(近藤)読んだ。
俺 読んでへん。
回想 お姉ちゃん。うん?ちょっとええ?
あ… これ 済んだらな。今。
お父ちゃんが行水してる間に言いたいねん。何?
先生がよ 明日 うちまで来てくれる。お父ちゃんと 話 しに。
ああ 進学の話?
喜美子姉ちゃんにいてほしいねん。
(マツ)せやけど 仕事やもんなあ。
早く帰ってくることはできるよ。いた方がええの?
助かるぅ。無理せんでええよ?
お母ちゃんだけやと 心細い。そら 分かる。
分かるけど…。分かった 百合子の大事な話やはよ帰ってくるわ。ありがとう!
大学行きたいの?
家政科いうのがあんねん。
新しくな そういう科が出来てんて。ともちゃんが教えてくれてん。
ともちゃん。(マツ)一番の仲よしや。
(常治)知らんわ もう。
家庭科得意やったら そういうとこ行ったらええやんって ともちゃんが…。
ほんでな うちも自分で調べてみてん。
ほんでな そこ行ったらな家庭科の先生になれんねん。
(寺岡)教員免許が取れます。
家庭科の先生になりたいの?
うちも お姉ちゃんみたいに自分の得意なこと 好きなこと何か 見つけたいなあ思てたんよ。
ほやから 行きたいねん。県短行きたいなあ思てんねん!
そうか… そんなこと考えてたんやな。
ほんでな 寺岡先生に相談したらな…。
はい。 県短目指すんなら高校は 甲賀一高がええんやないかと…。
分かった もう…。
百歩譲って 二百歩譲って大学は行ってええねん。
ほんま!?(寺岡)短期大学です。
短期でも何でも行ったらええよ もう。せやけど 高校はあかん。
えっ?そもそも 高校は行く必要がない。
何 言うてんねや!?「女に学問は必要ない」ねん。
家庭科の先生なりたい言うてるやん!
先のことは かまへんねん 別にな。
今は 高校の話をしておんねん。な? 高校はあかん言うてる。
何で あかんの!?
うちの どこに お前ほんな高校行かす余裕があんねん。
えっ!? 昔とおんなじこともう何回も言わすな もう。
昔とはちゃうやろ。今は喜美子姉ちゃん働いてるやん。
火鉢の生産が 大幅に縮小されんねん。
(百合子)えっ…。そうなん?
知ってたん?当たり前や お前こっちは運送やっとんねん。
あのころは…ほんまに ず~っと悩んでた。
そうかあ。 文集からはすてきな家族の姿しか浮かばんかったで。
うちが高校行けたんは喜美子姉ちゃんのおかげや。
回想 何でしょう?
うちは丸熊陶業に しがみつくことにしました。
うちは ここに残って引き続き お仕事をさせて頂きます。
マスコットガール ミッコーでもキッコーでも 何でもかまいません。
それが お仕事であれば一生懸命やらせて頂きます。
(加山)ええ心がけです。分かりました。
つきましては…。まだあんの?
信楽初の女性絵付け師としてそれに見合った…その… 要求といいますか…。
要するに 賃金アップ?
はい。よう言うわ 女だてらに。
すいません。中学しか出とらんのに。すいません!
ほやけど 稼がなならんのです。
これまでみたいなお給金やとこの先やっていけるかどうか…。
養う奥さん 子どもがいるわけやなし。
家族がおります。 うちには 家族が。
下の妹を進学させてやりたいし電話かて引きたい。
養うてくれる人 見つけた方が早いんちゃいますか?
すいません ご検討下さい。お願いします。
お願いします!
結局 家庭科の先生にはなれへんかったけどな。
それでも やってきたことは何も無駄になってへんやん。
そやそや。ここのカレーは 絶品です。
桜と桃の服 百合ちゃんのお手製やんなあ。
あっ! 同窓会に着てきた服もあれ 自分で仕立てたん?
あ~ あれは お義母さんのお下がりを手直ししただけ。
はあ~。
きれいやったでえ。
えっ?
ハッ あ… あれ?あれ? ああっ あっ お前百合子のこと好きやったんか。ちょっと!
同じこと思ててもな口に出してへんねん。
いやいやいや 今の感じは 好きやったやろ好きやったやろ! お前。
好きでした。ええっ! えっ…。
ほ… ほな 今は?
今は どう思ってんねん!
♪~