たまにはアーデさん家のリリルカさんが強くてもいいじゃない 作:ドロップ&キック
このシリーズのアーデさんは、ヒロインでもなければましてやヒーローでもないです。
主人公なのは間違いないですが……強いて言うならダークヒーロー?
ダンジョン……それは富と栄光、そしてそれを求めたツワモノどもの欲望と策謀が渦巻く場所……
今日もオラリオのダンジョンは、多くの命を飲み込んでゆく……
「これだけいたぶれば当然ですが……やってきましたよキラーアントの団体さんが」
どこか楽しげに、そして嬉しげに嗤うリリルカに対し、逃げるために必要な筋肉と骨を破壊されたカヌゥ・ベルウェイと他ソーマ・ファミリアのモブ2名は今度こそ顔色を完全に失った。
「あ、アーデさん、まさか俺たちを置いていかないよなっ!? 助けてくれるんだよなっ!?」
必死の形相で懇願するカヌゥに、
「あっはっはぁ♪ 何を言ってるんです? リリがカヌゥさんたちを置いてくわけないじゃないですか」
「だ、だよな! 俺たちは同じファミリアの、」
”仲間”だなんて薄ら寒いセリフを言わせる気も聞く気もなかったリリルカは、
「”カヌゥさんたちが生きたままモンスターにパクパクされる”なんて面白いショーを、リリが見逃すとお思いですか?」
「き、き、き、貴様ァ!!?」
「リリは別に”リリの命を狙った黒幕”の正体をしゃべったら助命する”なんて約束してませんよ?」
とそ知らぬ顔で言い放ち、
「とはいえリリも鬼でも悪魔でもありません」
とカヌゥたちから根こそぎ奪い取ったポーションの一本を弄びながら、
「ポーション以外の装備は残しておいてあげますから……」
そして満面の笑みで、
「精々抵抗してみてくださいね? その方がより楽しめますから♪」
楚々とゴミ3体から距離を取り、高みの見物を決め込もうとするリリルカの背中に、
「呪われろっ!! 地獄へ堕ちろ!!」
とカヌゥたちの怨嗟の声が飛ぶが、
「はは~ん。今更何を言ってるんです? 生まれ乍らのソーマ・ファイリアの団員だなんて、それだけで十分に呪いですし、地獄は既に経験済みですよ」
と鼻で笑うだけだった。
☆☆☆
悲鳴と嗚咽と絶叫……生きながらに引き裂かれ、貪られる苦痛と恐怖の宴が始まったが、それも長くは続かなかった。
そんな地獄絵図を肴に携行食を齧れるリリルカも、相当に肝っ玉だか神経だかが図太いようだが。
「まっ、こんなもんですか」
特に感慨も無くリリルカは独りごちる。
(リリの財産を何度も盗もうとしてきたどうしようもない愚物どもですが)
「いざ終わってみると、”呆気ない”って感想以外は出てこないもんですね~」
(まあ、これもリリが同じ手で何度も始末してるからでしょうけど)
弱ければ奪われるのが当たり前、弱肉強食のルールが生きるソーマ・ファミリアでは「奪うほうが悪いのではなく、奪われるほうが悪い」のだ。
実はリリルカはカヌゥ達を恨んでたわけではない。ただ、たまらなく鬱陶しかっただけだ。
そしてリリルカはその”強さ”を極力隠すように行動してきたため、割と狙われることが多かった。
今日までカヌゥとその取り巻きは、リリの得体の知れなさを警戒したのか基本的に「盗もう」としていただけで、直接的に暴力的な手段は用いてこなかったが……
だが、団員の中にはより直線的に、あるいは短絡的に襲撃し、リリルカから強奪しようとした。
そんな時は、リリルカは決まってダンジョンに逃げ込み……いや、誘い込み、
「ホント、ダンジョンもモンスターも便利ですよねえ。死体の始末に困らないのが何より助かります」
キラーアントを使ったのは今日が初めてだが、種類を問わなければダンジョンの”本来の住人達”に後始末を任せるのはむしろリリルカの常套手段だった。
無論、アフターケア……襲撃者達が遺した財産も、可能な限り奪うのも忘れない。
何せ現世にいないのなら、俗物的な財産など不要だろう。あの世に金貨は持っていけない。
なら、現世にとどまった勝者である自分が使ってやるのが礼儀であり、供養なのだとリリルカは考えていた。
「それにリリはモンスターって大好きなんですよ♪ 生ゴミの後始末もしてくれる上……」
”ブォン!”
身長より長い柄の付いた巨大なアダマンタイト製の鈍器のついたウォーハンマー”バハムート”……間違いなく150cmに届かぬ彼女の体格なら持ち上げることさえ難しいそれを、リリルカはバトン・トワリングでもするように片手で風を切らせて回し、
「リリの
両手で構えなおし、カヌゥ達を平らげたキラーアントの群れに突っ込んだ!!
今回のノルマ:カヌゥさんご一行がモンスターのお食事
いや、原作読んでてあの所業に対しあの最後は、何かちょっと物足りなかったもので(えっ?
リリルカ先輩、絶好調です(^^
何やら原作と違う、あるいは似て非なるスキルやら魔法やら発展アビリティを持ってそうですが……それはそのうちに。