たまにはアーデさん家のリリルカさんが強くてもいいじゃない   作:ドロップ&キック

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ある意味、最初から飛ばします(えっ?


第01話:”アーデさんが鈍器振り回してもいいじゃない”

 

 

 

「ぺったんぺったん、ロリぺったん♪」

 

と暢気な調子で自虐的な歌を歌いながら、片方を普通の金槌のように平たく片方をピックのように尖らせた鈍器に身長より長い柄を組み合わせた凶悪なアダマンタイト製ウォーハンマー”バハムート”と銘打たれたそれを軽々と陽気に振るうのは、非常に小柄な女の子だった。

 

その凹凸の少ない肢体を軽甲冑と呼ぶには少々分厚く広く、フルプレート・メイルとするには動きやすそうな……どちらかと言えば”聖闘士☆星矢”に出てくる”白銀聖衣(シルバークロス)”っぽい特注の鎧に包み(ただし愛らしい素顔は丸出しだが)、手には先ほどの長柄の鈍器、左腰にはソードブレイカーとしてもつかえるメイス”ファウスト”を下げ、腰の後には形状と長さは鉈で刃の厚みが鉞という斬るのではなく割断するための刃物”鬼包丁”を装着していた。

 

どれもが中々の逸品でついでに見るからに物騒だが、さらに彼女を特徴付けているのは無邪気に”バハムート”を振るうたびに、”ぐきゃ””ごきっ”という肉と骨が折れるのではなく潰し砕かれる音が響き、いい年をした男達の悲鳴や泣き声がダンジョンに響いてたことだろう。

 

音の発生源に視線を移せば、いるのは全身血まみれで横たわりあちこちから皮膚を突き破り骨片が飛び出してる三人の男……見るからに冒険者風、それもどちらかといえばガラの悪い類のそれであった。

 

「カヌゥさんたちもおバカさんですね~。ダンジョンで怪物進呈(パス・パレード)でもすればリリを証拠も残さず抹殺できると思いましたか? わざわざこんな物まで用意して」

 

その視線の先にいたのは、死にかけのキラーアント……無論、危機状態でフェロモンを発生させ仲間を呼び寄せるモードだ。

 

「も、もう、やめてくれ、リリルカ……」

 

「はぁ?」

 

”ぐりっ”

 

「あぐっ!?」

 

傷口に装甲で覆われた尖ったつま先を無造作にねじ込み、そのまま捻るとカヌゥと呼ばれた男は悲鳴を上げるが、

 

「誰がリリを親しげに名で呼んでいいなんていいました?」

 

冷徹にそう言い放つと、

 

「ところでリリの手元には、アナタ達から”奪った”回復薬(ポーション)があるんですが……どうしてほしいですか?」

 

「リ……アーデさん、お願いです。ポーションを返してください」

 

「ほ~う。リリの命を狙っておいて随分と虫のいい話ですね?」

 

と小柄な少女はポーションのビンの蓋を外して逆さにし、”地面に”中身を落とした。

 

「テ、テメェ!!」

 

「テメェ?」

 

”ごきっ”

 

「あぎゃっ!?」

 

軽く振り下ろされた鈍器に再び体のどこかを粉砕され泣き叫ぶカヌゥを冷たく見下ろし、

 

「カヌゥさん、口の利き方に気をつけたほうがいいですよ? 少しは自分の立場を弁えたほうが身のためです」

 

彼女の痛めつけ方は実に理にかなっていた。

身動きとれないように三人の部位を破壊しながら、かといって気絶や出血死やショック死しないギリギリのラインをちゃんと見切っている。

おかげでこのならず者たちは、痛みで逆に気を失うことはできなさそうだ。

 

これほどの手際のよさを身に着けるために、彼女は一体何人を痛めつけてきたのか……いや、正確に言うなら”何人、()()()()()()()()()()()”を返り討ちにしてきたのやら。

 

別にそれは同じファミリアの人間を屠る限りは、「暗黙の了解」とされているので問題はない。

ある意味、”ソーマ・ファミリア”は正しく弱肉強食の世界ゆえに、降りかかる火の粉は払わねばあらないのもまた必定。

ついでに襲撃者たちの財貨を命を奪うついでに根こそぎポケットに放り込むのも必然。

ソーマ・ファミリアの一員たる者、稼ぐときは貪欲に、間違っても”襲われ損”などになってはならない。

彼女はその不文律の掟を実践してるに過ぎないのだ。

 

 

 

「さて時間もないことですし……そろそろ本題に入りましょうか?」

 

リリルカと呼ばれた少女はスッと目を細め、

 

「一体、誰の命令でリリの命を狙ったんです?」

 

「…………」

 

「黙秘ですか? いい度胸です」

 

彼女はバハムート尖ってる(ピック)部分に文字通り虫の息なキラーアントを引っ掛け、無造作に身動きできぬカヌゥへと放り投げた。

 

”がりっ”

 

「ぎゃあっ!!」

 

最後の抵抗と言うよりモンスターの本能に従い、瀕死でありながらもキラーアントは硬い顎でカヌゥの皮膚を食い破った。

激しい痛みに一際大きな悲鳴をあげるカヌゥだが、リリルカは表情一つ変えずに、

 

「しゃべりたくないなら別にいいですよ?」

 

チラッとボロ雑巾のような姿で横たわる二人を見て、

 

「予備のゴミ袋は残り二つありますし」

 

 

 

「わかった! 言う! だからこれをなんとかしてくれっ!!」

 

「ならさっさと言ったらどうです? なんとかするのは話を聞いてからです」

 

「……ザニスだ! ザニスのクソ野郎だよっ!! お前を殺せと命じたのは!!」

 

ザニス、ザニス・ルストラ。Lv2の冒険者であり、ソーマ・ファミリアの団長である人間種(ヒューマン)の名を聞いたリリルカだが、ショックを受けるどころかむしろ平坦な反応で、

 

「意外性も何もあったもんじゃない答えですね~」

 

 

 

(まあ、いくら金勘定を除けば無能で愚鈍なザニスでも、そろそろリリの”本当のレベル”に気づいても不思議じゃないですからね)

 

「そろそろ潮時ですかね? ザニスの顔も見飽きましたし」

 

「あ、アーデさん……そろそろ、キラーアントを、し、死ぬ」

 

捕食されかているカヌゥが懇願するが、リリルカはクセっ毛の茶色の髪からにょきっと生えた”()()()()()”をピクッと動かし、

 

「助けてあげたいのは山々なんですが……」

 

彼女はニヤリと笑い、

 

「どうやら時間切れ(タイムアップ)みたいですよ?」

 

彼女の()()()()()()()()()()()()譲りの鋭い聴覚が捉えたのは、這い寄る死の気配……無数のキラーアントの足音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリルカ・アーデ

ソーマ・ファミリアに所属していた犬獣人族(シアンスロープ)の父親と小人族(パルゥム)の母親の間に生まれた、生粋のソーマ・ファミリアの構成員。

 

備考:”()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のノルマ:アーデさんにカヌゥ達をボコらせてみる。

いや~、勢い任せではじめてしまいました(^^
最近、別のシリーズの執筆速度とモチベーションが徐々に下降してきた為、ふと思いつきで気分転換がてらに書き始めました。

はっきり言って迷走するだろうこのシリーズですが、少しでも楽しんでいただければ嬉しいです(^^


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