海外メディア、日本に不信 政府の情報開示不足 五輪危ぶむ記事も

西日本新聞 総合面 塩入 雄一郎

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が国内で拡大する中、政府が海外への情報発信に腐心している。クルーズ船の乗客対応で海外メディアの批判を浴び、ようやく外国人記者たちへの説明を本格化させたものの、国民に日本渡航の自粛を求める国は既に12カ国に上る。海外メディアからは夏の東京五輪開催を危ぶむ記事も世界に発信されている。

 「海外メディアへの発信が十分でないのは否定できない。反省し、改善したい」。20日、外務省であった新型肺炎に関する海外メディア向け説明会。対応した厚生労働省の担当者は、これまでの説明不足を率直に認めた。

 海外メディアへの情報発信にようやく本腰を入れ始めた日本政府だが、今月中旬にクルーズ船での感染拡大が表面化するまで積極的な情報開示をしてこなかった。船内の隔離や検疫など日本政府の対応に疑念を抱いた海外メディアは、船内にいる自国の乗客らと連絡を取り、不満や疑問の声を取り上げた。

 だがこうした海外メディアの「日本不信」は初めてではない。2011年の東京電力福島第1原発事故では、政府が避難指示や放射線量の数値開示であいまいな対応を続けたとして批判を浴びた。米メディアには、今回の日本政府の対応を「福島第1原発事故と共通点がある」と指摘する専門家のコメントを載せたところもある。

 国民に日本への渡航自粛を求める国も増えてきた。外務省によると、25日時点でイスラエル、タイ、韓国など12カ国。ほかに米国、オーストラリア、台湾が渡航者に注意喚起している。政府関係者は「こうした国が増え続ければ、五輪中止が現実味を帯びることにもなりかねない」(政府関係者)と警戒する。

 日本政府は、他国による訪日自粛などの対応は「不適切」(外務省幹部)との立場だ。茂木敏充外相は25日の閣議後の記者会見で「日本の安全性に理解を求めてきた。あらためて丁寧に説明していきたい」と強調。国際的な情報発信を強化する構えだ。

 ただ、感染に終息の気配が見えない限り、日本への厳しい見方は変わりそうにない。「2020東京五輪はCOVID19の犠牲になる?」。米タイム誌は20日、こんな見出しの記事で五輪中止の可能性を報じた。ロイター通信は「一部投資家はウイルス流行が7月24日に東京で開幕予定の五輪を奪う可能性を心配している」などと伝えている。 (塩入雄一郎)

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