慣習的な部分が多く明確なルールがないため、対応に迷うことも多い喪中の基本的なマナーをご紹介します。(監修:市川 愛)
[ 喪中の基礎マナー ]
1.喪中の起源とは
近親者が亡くなった場合、一定の期間、故人の死を悼み、身を慎むことを「服喪(ふくも)」といいます。元々は神道の穢れ(けがれ)という概念から来ている風習です。古くから、死は穢れの一種と考えられてきましたので、身内に死者が出ると、その穢れが他の人に波及しないように、一定の期間、他の人と相対さないように生活していこうという習わしの、「喪に服す」という部分が今に残っているものです。
2.喪中の範囲は一般的には二親等まで
喪に服する範囲は、一般的には故人を中心とした一親等(両親、配偶者、子)と、二親等(兄弟姉妹、祖父母、孫)までとされています。
ただ、最近では同居してるか別居してるかで考えを変える人もいます。
例えば、昔はおじいさんが亡くなったら、家全体で喪に服していましたが、最近では、同居か否かで変えている方もみられます。同居のおじいさんが亡くなったら喪に服しますが、別居の場合は喪中としない方も多くなっています。
ポイント
プライベートとビジネスで分ける喪中の考え方
友人や知人などプライベートのお付き合いの方には喪中はがきを送り、ビジネス上(仕事や会社関係)のお付き合いの方には、通常どおり年賀状を送るなど、プライベートとビジネスを分けるという考え方もあります。
3.喪中の期間は亡くなった日から約1年間
1年経てば、死者の穢れがなくなるだろうという考え方から、現在では、近親者が亡くなった日から1年間(13ヵ月の場合も有)を喪中とするのが一般的です。その中で、四十九日法要までは忌中として、より厳格に身を慎む期間とされています。
4.喪中になったら
喪中の期間は、基本的には身を慎み、おめでたいことをしないということが基本なので、松飾やおせち、初詣も控えます。また、年賀状を送らず、年賀を欠礼する挨拶状である、「喪中はがき」を送ります。
特に、忌中では、結婚式が決まっていても、日程をずらすという対応をする方もいます。昔は、喪中の際に遺族は一年間、人と会わないという家もあったようです。
[ 喪中と年賀状 ]
1.喪中はがきは挨拶状?
一般的に「喪中はがき」と呼ばれているものは、正式には「年賀欠礼状」と言います。これは喪中の期間のお正月に、新年を喜ぶ挨拶を控えることを詫びるものです。
喪中はがきというと、自分が喪中であることや、自分の家に不幸があったことを知らせる訃報のはがきと思っている方もいますが、本来は、「喪中のため、今年は新年のお喜びをお伝えできませんので、失礼いたします」という趣旨の挨拶状なのです。
2.喪中はがきはいつ出すの?
喪中はがきは遅くても12月初旬までに送りましょう。
先方が年賀状の用意を始める前に手元に届くよう、11月中か遅くとも12月初旬頃までには届くように出すのがマナーです。
3.喪中はがきの書き方
「喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます」という挨拶文を最初に。
「誰が、いつ、何歳で亡くなったのか」
「故人が生前お世話になったお礼や挨拶」などを入れます。
ポイント
亡くなったのがどの時期でも喪中はがきは送る?
喪中の期間は1年間とするのが一般的なので、亡くなった時期が年の前半でも年末でも、年始は喪中に当たるため、不幸があった時期に関わらず、喪中はがきを出すというのが基本的な考え方です。
葬儀に参列した方に喪中はがきは送る?
喪中であることを伝えるものではないので、送るのが礼儀です。
5.喪中でも年賀状は受け取れる?
喪中でも年賀状を受け取るのはマナー違反ではありません。
年賀状のないお正月は、とてもさみしいものです。
年賀状を受け取ることが失礼に当たるのではないかと考える人も多いですが、実は、喪中でも年賀状を受け取ることは、年始の挨拶を受けるという意味ですから、何ら問題はありません。
受け取りたい場合には、例えば、喪中はがきの文面に、「年賀状をお待ちしています」や、「例年どおり近況をお知らせください」などと書き添えてみてはどうでしょうか。また、最近では、喪中はがきの印刷サービスの文例にも使用されていますので、そちらを選んでみるのもよいでしょう。
年賀状を受取りたい場合の喪中はがきの文例
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【文例その1】
皆さまからの年賀状は励みにもなりますので
どうぞ例年どおりお送りくださいませ -
【文例その2】
年賀状のないお正月はさみしいものです
皆さまからの年賀状はいつものようにお待ちいたします
6.喪中の方への年賀状
喪中の家に対する振る舞いというのは、厳格には決まっていませんし、年賀状を送ること自体はマナー違反ではありません。年賀状を出してご遺族を励ます意味合いもあります。
しかし、新年を喜ぶ「年賀」という言葉が気になるという方も多いでしょう。そこで、新年の挨拶状としての「年始状」、もしくはお見舞いの気持ちをお伝えする「喪中見舞い」を出されてはいかがでしょうか。配慮とお悔やみの気持ちを示すことが大切です。
-「喪中見舞い」や「年始状」で、喪中の方への気遣いを-
喪中の方に対しては、新年を喜ぶ年賀状というよりは、年始に出す「喪中見舞い」「年始状」という性格のものと考え、文例としては「お悔み」のお手紙の簡略版や、遺族を励ます便りと考えればいいでしょう。
<喪中見舞いの書き方>
- ①はがき頭に題字を書く
文例: 喪中お見舞い申し上げます
- ②次にお悔やみの言葉を書く
文例:○○様の訃報に接し驚きました
心よりご冥福をお祈り申し上げます - ③最後に相手を気遣う言葉を書く
文例:くれぐれもご自愛ください
<年始状の書き方>
年始状では、お祝いの言葉を控えるということが基本です。
そのため、「あけましておめでとう」や「謹賀新年」という言葉はふさわしくありません。例えば、悪いことの後で幸運に向かう意味の、「一陽来復」や、「晴れやかな年になりますように」など、さわやかな言葉がふさわしいでしょう。また、「いつもありがとう」といった感謝の言葉や、通常の手紙と同じように、近況などを書き加えても構いません。先方を気遣う気持ちさえあれば、あまり堅苦しく考える必要はありません。
年始状の文例
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【文例その1】
新年のご挨拶を申し上げます
お静かに新年をお迎えのことと存じます
故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます
本年もどうぞよろしくお願いいたします -
【文例その2】
一陽来復
昨年は色々とお世話になり誠にありがとうございました
新年が穏やかな年でありますよう
心よりお祈りいたしております
ポイント
喪中はがきを受け取った場合にはどうするか?
「喪中はがき」を受け取った場合は、松が明けてから2月初旬頃までに着くように、「寒中見舞い」を出すということが慣習となっています。
しかし、「喪中はがき」は、11月中旬から12月初旬に届くので、「寒中見舞い」を出すまでに1ヶ月半ほど経ってしまいます。そのため、忘れてしまったり、出さないで終わってしまう方が多いようです。
そこで、出す時期が決められた「寒中見舞い」ではなく、喪中をお見舞いするという意味の「喪中見舞い」にすれば、時期にとらわれず、受け取ってすぐに気持ちを伝えることができます。新年の挨拶にこだわりたい場合は、「年始状」の形式が良いでしょう。
市川 愛(いちかわ あい)
市川愛事務所 代表 / 一般社団法人 終活普及協会 理事
1973年神奈川県出身
服飾メーカー、葬儀社紹介業勤務を経て、2004年に日本初の葬儀相談員として起業。2009年に週刊朝日誌上の連載「現代終活事情」にて終活を考案し、広く提唱を始める。2011年に一般社団法人終活普及協会を設立。
5千件を超える葬儀相談に対応し、現在は全国での講演活動を中心に、葬儀記事や書籍の執筆、番組出演など、正しい葬儀情報と終活を広めるための活動を行う。
近著として「後悔しないお葬式」(角川SSC新書)、「遺族のための葬儀・法要・相続・供養がわかる本」(学研パブリッシング)など、著書・監修多数