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 ハンセン病の差別撤廃に関する国連特別報告者のアリス・クルス氏が初めて来日し、調査を終えて19日に東京都内で記者会見した。ハンセン病回復者の権利を擁護する日本の取り組みを評価しつつ、「強制隔離や不妊手術で患者や家族が分断され、長年、非人間的な扱いを受けたことは人権侵害」と述べ、名誉回復や家族の絆の修復への支援を政府に求めた。

 クルス氏はポルトガル出身でエクアドル在住の社会学や人権問題の研究者。2017年、国連の初代ハンセン病差別撤廃特別報告者に就任し、12日に来日した。6月には国連に報告書を提出する予定。

 滞在中は、関係省庁の代表や療養所長、研究者のほか、国の隔離政策の責任を問う訴訟原告の回復者や家族から話を聞いた。東京都岡山県の療養所や資料館も訪問。隔離の歴史を伝えるため療養所のユネスコ世界遺産登録をめざす取り組みについて「政府は支援を強化すべきだ」と促した。

 新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる差別への懸念について会見で問われると、「公衆衛生政策は社会を守るためのものであっても、個々人の人権を侵害してはならない」と答えた。(編集委員・北野隆一