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【スカーレット123話】
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「似たようなこと、お姉ちゃんからも聞いたことあります……」
しみじみと、百合子が言う。
喜美子は、八郎との【ズレ】を訴えていた。不満があるなら言うて欲しい。話し合いたい。それができない! 話し合ったところで、自分でもイライラするくらいしょうもないし、一回言い出したらどんどん出てくる。
結果、あの強烈な離婚やもんな。愛し合いながらの離婚……。
本作は【感情の処理】がきっちりと描かれておりまして、川原家でも、直子は感情がその場で爆発する。ジョーと同じです。
百合子は、マツに似ており、激しい感情がそこまでない。とはいえ、不満があれば信作にはムッとした態度を見せられて、ストレスがたまらない方。
そして喜美子な。
抑制に抑制、その果てに爆発。ありのままに生きる、21世紀のヒロイン像やから……。エルサやデナーリス系統だから。
そして照子にも、そういうさみしさがあった。わがままなようで、さみしい。そういうお嬢様でした。小池アンリほどパーッとと出せないのかな。
敏春はここで、妻と向き合う決意を固めます。
◆敏春、妻へのダメ出し
・カレーは苦い!
→おそらく隠し味を入れすぎ。そこは計量と味見やで。百合子がなんとかしてくれる。
・寝る時は、いびきと歯軋りどっちかに……
→耳鼻咽喉科なり、歯医者さんに相談するのもありかもしれんね。
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照子の初恋と初・いけないことの相手って……
「それとな……それと……」
はい、10秒以内〜。そう急かすカスマスターを、百合子が突っ込んで止めてます。
「ありがとうな!」
「敏春さん!」
「ははっ、ゴキブリ以下やけどな」
「あ〜根に持ってるぅ! アホ、アホ、信作のアホ!」
なんやこの、惚気炸裂、信作受難の流れは……でもまあ確かに、信作がいると事態が無駄にややこしくなる。
ちなみに今日もあらすじが罠をしかけとって、
「照子と敏春の馴れ初めが描かれ……」
みたいな流れでしたよ。それってあの「ゴキブリや!」の回想だけやん! 馴れ初めっちゅうか、なんかちゃうやろ。信作の「モテエピソード」も、むしろ「襲撃被害歴」やし。
ここで、信作にダメ出しをしてから、「ほな帰ろうか」という流れになります。
京都出張おつかれさまでした。また朝まで飲んでたん? そう照子は気遣う。
いつものことで、いつものメンバー。敏春はそう返します。
「ほなまたいはったん? 初恋の人!」
照子はそう気にする。男と女が朝までおって、飲んで! そこはやはり気になる。
そこで信作は気付くのです。照子、人のことどうこう言えへんやろ。
初恋の相手と夜通し飲む。あるやんか。あーっ!
これは照子も喜美子も忘れていた。視聴者の大半も、私もです。
そう……幼いあの日、照子は花束を持って信作を誘いました。
「墓地で待ってます 照子」
ありました、そんな日が。
視聴者も腐れ縁の幼なじみやな〜と、流していたあの三人ですが。
信作=照子初恋の人、いけないことをしたくて墓地に呼び出した相手
喜美子=照子初接吻の人、いけないことを墓地でした相手
ドロドロやん、ほんまの腐れ縁ちゃうか!
36年前、うちは1歳。そう百合子はキョトンとしてる。照子も忘れたい過去です。喜美子に聞けば覚えていると信作は言います。まぁ、信作本人も忘れたいんやろなぁ。
百合子はここで、ちょっとすねます。
うちのことはなーんも、覚えてないのになぁ〜。
嵐を呼ぶ近藤
なんかまた波乱の予感がする……。と、そこへ(回想)のつかない5人目が登場です。
「いらっしゃーい」
お客さんでした。こんな修羅場に突入するかわいそうな誰かは、中山義紘さんが演じとるで。
「あー、近藤君!」
「えっ、誰?」
「こんにちは、ゆりちゃん!」
「ゆりちゃん……?」
信作の目に動揺と嫉妬が!
そう、これやで。
信作の場合は、数々の襲撃があった。信作の女たちは「被害者の会」を結成して、あいつは最低やと盛り上がるからええ。そこはもう、ええ。甘い思い出というよりも、襲撃したい憎悪で一致団結する。
いわば、
「石田三成だけは許さへん!」
「襲撃したるわ!」
と団結する、七将なんよ。
せやけど、百合子の場合は少人数でもきっと、今でも好きと思えるくらい惚れとるでしょう。天使やもんな。
どうする、信作?
ここで関ヶ原の石田三成になったらあかんのよ!
【ズレ】の修復システム
スピンオフみたいな今週。それでも皆さんの演技が水を得た魚で最高です。
セリフがないし、カメラがメインで当たっていなくても、きっちり表情を作り込んでいて、心の動揺、切なさ、言いたいことが伝わってくる。ええもん見せてもらいました。
めんどくさい信作。襲撃される滋賀県民枠として、石田三成役にも期待がかかる林遣都さん。顔がええのはわかっとりましたが、うっとうしさが全開です。個性がきっちり出てきております!
そして……大島優子さんがこんなにお上手だとは思わなかったと言いますか。オバタリアンという昭和で滅んでええようで、あってもええような、そんな概念に切り込んできました。彼女が野村沙知代さんのように見える日が来るとは思わなかった。すごいことや……。
福田麻由子さんは、常に天使のようで、かつ嫌味がない役所で。こういう役が一番難しいのかもしれないと思います。天使というだけではなく、あの年代のカレーに隠し味を入れて、パウンドケーキが得意な、そういうええ奥様感があって、これも半端ないと思う!
あとはやっぱり敏春さんですよね。本田大輔さんは、照子の尻に敷かれっぱなしでも、そこにほのかな安らぎを得ている感がある。そういう愛情もあると説得力を持って示す。かっこいい若社長時代もええけど、今は突き抜けたなあ〜としみじみ思ってしまいます。
そういう演技が抜群に楽しい「サニー」のわちゃわちゃしたドラマですが。
じっくり見ると、夫婦のあり方としてもおもろいなあと思える。
照子と敏春のすれちがいは、ほんとしょうもねえなぁ……としみじみ。
そこやで!
そこやと思う。
そういうすれ違いに気づいて、軌道修正できるかどうか?
これは信作にも関係があること。信作の交際相手は、モヤモヤしたものがついに爆発して、信作を襲撃しとるわけです。
【ズレ】がいかに人間関係を破壊するか。これが本作のテーマやろなぁ。
破壊してしまう喜美子と八郎だけではあまりに救いがないので、照子と信作もいるのだとは思う。
照子は、なんとかこの程度ズレの修復で済ませるし、信作と百合子は、ズレをちょこちょこと修復するタイプだとわかる。
やはり本作には、こんなに優しい八郎とどうして喜美子が離婚するのか、納得行かないから見られへんという意見は出てきております。
せやから言うとるやん……。ドラマの感想は、ゆるゆるにガードを崩して、自分の至らぬ点を自白してまうから気ぃつけなあかん……ってさ。
八郎は、優しいけど【ズレ】が出る。喜美子はなまじ耐久性が高く抑圧するだけに、爆発する。それでもエルサやデナーリスよりはマシやで。
ほんでこれが今、この時代に大事なことでもあるとは思うのです。
今週を、男性である三谷昌登氏がテーマを踏まえて描いているのが巧みだと思います。
女性脚本家だと「まあ女はこう言うんが理想やろなぁ〜」みたいな、穿った見方が出てくる。
脚本は脳で書いているもんであって、そこに性別はそこまで関係ないはず。人生経験の差はあっても、あまりに男だ女だと言いすぎるのは、モロに差別と偏見だとわかる。そういうのは、殺人経験がないと殺人犯を描けないみたいな話ですよ。
誠意ある脚本家さんは、ちゃんと勉強できると私は信じてます。
けれども、実際に女性脚本家は男性よりもぶっ叩かれやすいことくらい、私も朝ドラレビューをしていて痛感はできたのです。
だからこそ、男性脚本家でも共通点のあるドラマパートを書かせることが、偏見解消として有効だとは思えます。
ピンチヒッターだとしても、それこそ強い助っ人、バース枠でええやんか。三谷さんはがんばっとるで。神様・仏様・三谷様や。それでええんちゃうか。
あっ、水島氏に不満はないです。そこは掛布みたいなもんですよ。
【参考】
スカーレット/公式サイト