私はNISA口座で野村アセットマネジメントの原油ETF(1699)を保有しています。
NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)のWTI原油先物を買って、先物の期日が来るたびに次の限月に乗り換えて行く(ロールオーバーする)ケレン味の無い商品です。
この記事では、私の失敗談を交えて「原油ETFのリターンは報道されるWTI原油先物価格の騰落率とは一致しない」ということを解説します。
記事は2018年4月に執筆しましたが、2019年にYoutubeで動画にしていますので、気に入っていただけたらぜひ併せてご覧ください。
東証上場の原油ETF
東証上場のETFで原油価格に連動するものだと、1699の他にシンプレクスの原油ETF(1671)とETFSのWTI原油(1690)があります。
また、レバレッジ型(2038)とインバース型(2039)のETN(仕組債)が1つずつあります。
東証に上場する原油関連のETF |
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コード | 銘柄名 | フィー | 特徴 |
1671 | WTI原油価格連動型上場投信 | 0.85% |
シンプレクスアセットマネジメント運用。 |
1699 |
NEXT FUNDS |
0.50% |
野村アセットマネジメント運用。 |
1690 | ETFS WTI 原油上場投資信託 | 0.49% |
海外の取引所との重複上場銘柄。外国投資法人債に分類されるので金商法・税法のくくりが他のETFと異なる。NISAで買えない。2016年までは特定口座で取り扱えなかった(確定申告必須だった)。 |
2038 |
NEXT NOTES 日経・TOCOM原油 ダブル・ブル ETN |
0.80% |
東京商品取引所の原油先物の2倍のリターンになるように設計されたETN(仕組債) |
2039 |
NEXT NOTES 日経・TOCOM原油 ベア ETN |
0.80% |
東京商品取引所の原油先物の逆のリターンになるように設計されたETN(仕組債) |
(出所)東京証券取引所、各社公表資料 |
それぞれに難点があります。
例えば1690はフィーが低いですが、日本ではほとんど取引がなく、2016年まで特定口座で取り扱えませんでした。
また、2038は原油価格の2倍の値動きになるように設計されているので資金効率は良いですが、フィーが高いです。仕組債なのでトラッキングエラーが発生しない代わりに、発行体(野村証券のオランダ現法(資金調達用のビークル?))のカウンターパーティリスクを取ります。発行体である野村のオランダ現法が破綻したらETNの投資家も損害を被ります。
そういうわけで、フィーが低く、商品としてもプレーンな1699を選びました。
華麗なトレード
私は、2015年1月に初めてエントリーし、2016年3月に買い増しました。
その前の2014年の後半に原油先物が1バレル100ドルから50ドル台まで下落したので妙味ありと考えました。
2015年以降の推移をチャートにすると以下のようになります(2014年末を100にして指数化してあります)。
下がりきったところで買って、2番めの底をつけてからも反発局面でちゃんと買い増せているので我ながら華麗です。
さて、華麗なトレードの結果、ワタクシの1699の平均取得コストは451円/口です。
そして、1699の4月25日の終値はいくらかと言うと
431円です。ファッ!?(’・ω・`)
いったいなにゆえ、WTI原油が50ドル台と30ドル台で買ったのに、原油価格67ドルのいま、含み損なんでしょうか。
上のチャートに1699の推移を重ねたものが下のチャートです。NAVベースではなくて終値ベースですが、そういう次元の話では無いですね。直近値だと、1699が61、WTI円換算は114です。53%負けてます。信託報酬は年間0.5%なので、3年持ってもせいぜい1.5%です。
下がる時は一緒に下るくせに上昇局面では全くついて行けていません。
ロールオーバーのコストに食われてしまった
主要因は、原油先物のロールオーバーの際のコストが、想定していた以上にかかっていたことです。
運用会社のホームページを見ると、ファンドと、正式なベンチマークである野村原油ロングインデックスの乖離が出ています。チャートにカーソルを合わせると数字が出るのですが、執筆時点では、2年で1.6%の乖離です。これは信託報酬+諸経費と考えれば許容できる水準です。
ETFの基準価額と原油ロングインデックスが乖離していないということは、ファンドとWTIの乖離は、WTIと原油ロングインデックスの乖離によるものと考えられます。
そして、原油ロングインデックスは先物のロールオーバーを加味した指数なので、WTI原油を円換算したものとの乖離はほぼロールオーバーの影響だと推測します。
他の投資家からの突っ込みも多かったようで、2017年5月に指数を算出する野村證券が以下のようなペーパーを出しています。
http://qr.nomuraholdings.com/jp/oil/docs/Oil_20170511_j.pdf
かいつまんで言いますと、
◎先物価格が、期限が遠い先物の方が期限が近い先物よりも高い相場環境(「コンタンゴ」といいます)だと、先物をロールオーバーする(遠い限月に乗り換える)時にその分だけ建玉が減ってしまう。
例:6月限(ぎり)の先物の決済期日が近づいたので7月限に乗り換える(ロールオーバーする)ときに、先物価格が6月限が50ドル・7月限が51ドルのような状況だと、価格差の1ドル分だけ建玉(先物を買う数)が減ってしまう。この例だと1÷51で2%程度のインパクト。
◎原油ロングインデックスは、限月を乗り換えるときの価格差による影響も含めて計算している。
ということが書いてあります。
確かにこの期間は先物価格がほぼ一貫してコンタンゴでした。そのため、先物をロールオーバーするたびに指数が削られていったのですね。
ちなみに、1671も同じ状況のようです。
https://www.simplexasset.com/etf/doc/Ans-6.pdf
こちらは1699のような原油ロングインデックスではなく、WTI先物が連動対象としている分、もっとまずい気もします。
問題点と今後の対応
それにしたって3年で50%も乖離が出るというのはなかなか困った話です。
2014年末から当月までは40ヶ月あったので、40回ロールオーバーしたとすると、1回あたり1%強乖離していたことになります。
「原油は在庫を保管するコストが必要なのでコンタンゴになりやすい」と聞いたことはありますが、こんなにかかると思ってませんでした。
株価指数や為替の先物だと金利相当額を意識しておけばそこまで困らなかったのでなおさらです。
業が深いところがあるとすれば、結局、ロールオーバー要因で原油ロングインデックスがWTIからどの程度乖離したかは明確に明かされていないことです。
指数の説明に「原油先物に連動した投資成果を再現する」と記載されている以上、投資家はWTI先物との連動を期待しています。
指数と先物価格の乖離(≒ロールオーバーの影響)については要因分析を見せて欲しいところです。
いずれにせよ、原油価格の見通しに従って売買するより他にありません。私はそろそろエグジットを考えようと思います。
3年ホールドして市況は目論見どおり上がってるのに全く儲からないなんてつまらない話です。
コモディティ投資のコストを身をもって知れたのは収穫だったと考えることにします。
追記
2018年7月12日に470円で売却しました。簿価451円なので、4%くらいしか儲かってません。保有期間中の原油価格の上昇の割にはあんまりな結末でした。原油が下がる前に売れたのは良かったです。
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