東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

経過観察「治療の一環必要」 原爆症認定 最高裁が初判断

写真

 広島と長崎での原爆投下で被爆して病気になった被爆者が、手術などには至っていない経過観察中でも「現実に治療が必要な状態(要医療性)」として原爆症と認定されるかが争われた三件の訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)は二十五日、「経過観察自体が治療に不可欠で、積極的な治療の一環と評価できる特別な事情があるか、個別に判断すべきだ」との初判断を示した。 (小野沢健太)

 その上で、原爆症と認めなかった国に処分の取り消しを求めた原告の女性三人は、この要件を満たさないとして請求を棄却。原告側の敗訴が確定した。裁判官五人全員一致の意見。

 経過観察中の被爆者が原爆症と認定されるには「特別な事情」が必要との基準が示されたことで、今後、国による認定のハードルが上がる可能性がある。

 被爆者には被爆者手帳が交付され、医療費の負担はなく、肝硬変や糖尿病になれば月に約三万円の手当が支給される。さらに放射線が原因でがんや白内障などになり、要医療性があると判断されれば原爆症と認定され、月に約十四万円の医療特別手当が支給される。

 宇賀裁判長は判決理由で、「経過観察だけでただちに要医療性は認められない」と指摘。病気の悪化や再発の恐れが高いかなど、治療の一環として「特別な事情」がある経過観察なのかを個別に判断し、要医療性を認定すべきだとした。

 宇賀裁判長は補足意見で、慢性甲状腺炎を患っている名古屋市の原告高井ツタヱさん(84)について「今後、特別な事情があると認められる可能性を否定するものではないと強調したい」と言及した。

 三件の訴訟で国は「要医療性が認められるには、経過観察だけでは足りない。現実の治療が必要な状態でなければならない」と主張。判決は名古屋、広島高裁が原告勝訴、福岡高裁は原告敗訴と、判断が割れた。

<原爆症認定制度> 被爆による病気の治療に、国が月額約14万円の医療特別手当を支給する制度。認定には、原爆の放射線が病気の原因(放射線起因性)、現実に治療が必要な状態(要医療性)の2要件を満たす必要がある。昨年3月時点で被爆者手帳の保持者は14万5844人。そのうち原爆症認定者は7269人と5%に満たない。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報