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【社説】

新型肺炎拡大 株価急落 今こそ国際協調の時だ

 新型肺炎の影響が国際金融市場を直撃した。日米欧や中国など各国市場の株価は軒並み急落し、パニックの様相を呈している。世界経済の防衛に向けて、主要国が協調行動を起こす時が来ている。

 株式市場は先週まで新型肺炎の拡大に大きく反応していなかった。感染が中国や日本などに限定されており、主に欧米市場で楽観論が支配的だったためだ。

 しかしイタリアやイランなどで感染が拡大し、「対岸の火事ではない」との空気が市場に一気に広がった。この結果、ニューヨーク、ロンドンの二大株式市場で株価が急落し、その流れは東京、上海などアジア市場に押し寄せた。

 新型肺炎拡大に伴い、投資資金は金市場に流れ込んでいる。リスク回避のための安全資産として、金を買う動きが強まったと指摘できるだろう。同様に安全資産とみなされていた円の動きは鈍い。為替市場ではやや円高傾向だが上昇しても幅は限定的だ。

 消費税増税などの影響で国内総生産(GDP)が低迷する中、国内感染者は増え続け最大の景気足かせ要因となっている。このため安全資産としての円の信頼が落ちたとの分析も否定できない。

 一方、イタリアではベネチアでカーニバルが打ち切りとなるなど暮らしに影響が出た。市民生活の動きが市場にパニック気味の反応を引き起こした可能性もある。

 新型肺炎終息の見通しはついていない。巨額投資資金が短期間で動く各金融市場では悪材料が売りの連鎖を招く事態が起こる。

 現段階で求められるのは米中や日本、欧米だけでなく各主要国が足並みをそろえ強いメッセージを市場に出すことだ。国際協調型の分かりやすい情報発信は市場の動揺を抑える効果があるはずだ。

 だがサウジアラビア開催の中国を含む二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、具体的な行動を盛り込んだ声明が出なかった。米中も新型肺炎報道をめぐり対立。中国が米国記者の資格を取り消し、米側も反発するなど騒ぎに発展している。

 現在は覇権争いをしている場合ではない。米中は不安を増幅させるだけの無用な摩擦を直ちにやめるべきだ。同時に日米欧の主要七カ国(G7)だけでも改めて連絡を取り合い緊急声明を出すなど、即効性のある対策を求めたい。 

 

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