新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大に備え、政府は総合的な対策の基本方針を決めた。拡大を防ぐ重要な局面に社会全体で取り組むためには政府のきめ細かい説明が必要だ。
政府の専門家会議が新型肺炎の流行見通しのグラフを示した。それによると今は、山型の流行曲線のちょうど登り口にいる。「これから一~二週間が急速な拡大か終息かの瀬戸際だ」と指摘した。
本紙は十五日付社説で感染状況を巡る情報の重要性に触れ「状況認識を国民も共有してこそ対策が進む」と指摘した。政府はやっと全体像を示したといえる。
今後はグラフの山型のピークをできるだけ低く、先の時期にずらす対策を目指す。そのために基本方針では柱が二つある。
専門家会議は集団感染が起きやすい例に立食パーティーのような「お互いに手を伸ばすと届く距離で、多くの人が対面で一定の時間以上、会話をするような環境」を挙げた。
その上で個人には外出の自粛を、企業にはイベントの自粛やテレワーク、時差通勤の実施などを呼び掛けた。取り組みを広げたい。
ただ、出勤の必要な業種もあるし、地域で発生状況が違う。個人も企業も判断しやすいよう政府と自治体は協力して地域ごとの状況変化を迅速に公表すべきだ。
二つ目は医療態勢だ。専門医療機関などは重症化対策に重点を置く。検査や治療の態勢を強化しても限界がある以上、優先順位を付けざるを得ないだろう。実施には国民の理解が不可欠で政府は方針を説明し続ける責任がある。
同時に感染者増に備え一般の医療機関も治療を担う。今後は地域での医療機関の役割分担などの連携を確実に進めてほしい。
感染者の多くは軽症だといわれる。基本方針では風邪症状が軽度なら自宅での療養を求めている。二〇〇九年の新型インフルエンザ流行時には外来に患者が殺到し混乱した。今回の方針は重症者の医療を優先したり社会での拡大を防ぐ観点からの判断だろう。
だが、軽度でも感染の不安を抱える点は同じだ。相談窓口の増設を進め不安を和らげたい。多くの医療機関で使える迅速診断キットの開発も急いでほしい。
政府は拡大防止と不安解消につながる情報を丁寧に出すべきだ。
この記事を印刷する