『おしん 一挙再放送▽第46週・完結編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド)
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- 百合
- 初子
- 辰則
- 社長
- 土地
- 今日
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『おしん 一挙再放送▽第46週・完結編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
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おしん 一挙再放送▽第46週・完結編[字]
主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。
詳細情報
番組内容
昭和42年秋、おしん(乙羽信子)は67歳になり、田倉商店は従業員20名を使う大店舗になっていた。仁(高橋悦史)や辰則はチェーン店を出すようおしんを説得していたが、堅実さ第一のおしんは、他に店を出すことに反対だった。しかし、2人の説得におしんはついに根負けし、希望(のぞみ・野村万之丞)に窯を持たせてやることに対して文句を言わないことを条件に、チェーン店を新設することを認めたのだった。
出演者
【出演】乙羽信子,高橋悦史,浅茅陽子,野村萬,佐々木愛,寺田路恵,吉野由樹子,桐原史雄,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一
♬~
(テーマ音楽)
♬~
セルフサービスの店が
1周年の記念セールを迎えた
昭和32年の春から
いつか 10年の歳月が流れた。
おしんも 既に 67歳。
田倉家も さまざまに変貌しつつ
昭和42年の春が巡ってきていた。
(初子)あっ 母さん
休んでて下さい。 あとは 私が…。
(おしん)大丈夫よ。 店 出てる事
思ったら このくらい。
たまの お休みなんです。
ゆっくりなさらないと…。
初ちゃんこそ たまの お休みに
忙しい思い させちゃったね。
お休みっていったって
私は する事もないし
何にもしないで ぼんやりしてると
かえって 疲れちゃって…。
ホント! 初ちゃんも私も
よくよく 貧乏性にできてんだね。
(2人の笑い声)
昔はね 一年中 店 開けてて
定休日なんて そんな
ぜいたくなもの なかったけど
それが当たり前だと思って
働いてたんだから。
今は もう 従業員の方が
強くなっちゃって
人を使うのも
楽じゃなくなったよね。
あら お肉 これで足りるかしら?
うん?
大丈夫だよ。 だって ほかに
いろんなものが あるんだもの。
え~っと 仁ちゃん 道子さん
辰則さんに 禎ちゃん
それに 希望ちゃん。
大人5人でしょ?
剛ちゃん 食べ盛りだし…。
あ~ 一体 何の話かしらね?
仁と辰則さんだったら 毎日
店で 顔 合わせてるんだから
話だったらね
すぐ 済む事なのに…。
たまには 田倉家みんな集まって
母さんを慰めようっていう
心積もりなんですよ。
何だかんだ言ったって
みんな 母さんの事を心配して…。
とんでもない。 迷惑ですよ。
来るとなったら 食べる物だって
用意しなきゃなんないしね。
また そんな事!
(道子)よいしょ。
(仁)まだ そんな事やってるのか。
昼飯までに行くって
言ってあるんだぞ。
(あかね)もう 11時半よ。
私 やっぱり 行くの やめるわ。
みどり 連れてくの
大変なんだもん。
たまには おふくろに
みどりの顔も見せてやらなきゃ。
会いたがってるんだから
おふくろ…。
だったら
あなた 連れてって下さいよ。
私 行かなくても いいでしょ?
(剛)じゃあ 僕も やめるよ。
友達と行きたい所があるんだ。
何 言ってんだ!
わがまま 言うんじゃないよ。
お前だって そうだろ。
長男の嫁のくせに おふくろの事
みんな 初子に押しつけて…。
こんな時ぐらい
機嫌よく 親孝行したって
罰 当たらんだろうが。
別に 私が行ったって お母さん
お喜びには なりませんよ。
(仁)道子。
あなたや子どもたちの顔さえ
見てれば それで。
今日は
ほかにも 大事な話があるんだ。
お前にも
聞いといてもらいたいから。
(希望)さあ 圭 行こう。 よいしょ。
(百合)お母さんと初子さんに
くれぐれも よろしく。
ああ。 はい。
しかし みんなが集まるからって
なにも
私が行く事は ないんだがね…。
仕事が違うせいか
全然 話 合わないし
いつ行っても
私は パッとしないからね。
母さんに 「仕事は どうだ?」って
聞かれる度に 肩身が狭いよ。
また そんな事…。 焼き物は
商売とは 違うんですよ。
長い長い年季の要る事なんだもの
なにも 慌てなくたって…。
今度の展覧会に出品なさった
作品だって
私は とってもいいと思ってるわ。
じゃあ 行ってらっしゃい。
圭 いい子にしてるのよ。
(圭)母さんは?
母さんは お留守番。
どうして?
おうちに 誰も いなくなったら
困るだろ?
さあ 圭 行くぞ!
行ってきます! 行ってきます!
行ってらっしゃい!
(禎)さっさとしなさい! もう
ホントに 2人とも グズなんだから!
(辰則)おい
ガスの元栓 閉めたか?
夕方には 帰るのよ。
なにも いちいち…。
それが いけないんだ。 留守に
何があるか 分からないだろうが。
戸締まりは いいんだな?
閉めました! もう 一体
何度 聞いたら 気が済むんだろ!
(弘)人の事
早くしろって どなっといて
いつも これなんだからな!
お父さんが 神経質すぎるのよ!
あら いけない!
お財布 忘れちゃった!
また 忘れ物か…。 一体
いつになったら 出れるんだ!
先に行こうぜ!
(始)うん 行こう!
おい!
(剛)こんにちは!
(初子)いらっしゃい!
あ~ よく来たね!
お邪魔します。 は~い お入り!
こんにちは。 どうも お母さん
御無沙汰しております。
御無沙汰は お互いさま。
私もね 店が忙しくて
なかなか 出られないもんだから。
は~い
みどりちゃん 大きくなったね。
お上がんなさい。
あら 遅かったわね。
(道子)あら ごめんなさい。
私たちの方が遅れるかと思って
慌てて来たのに…。
(道子)うちは 小さいの いるから。
(仁)あ~ 腹 減った!
女こども連れて出ようと思ったら
容易な事じゃないよ。
心身ともに 消耗するよ。
母さん すぐ 飯にして。
希望が まだなんだよ。
希望 来るのか?
うん。 せっかくね
家族みんなが集まるから
いい機会だと思ってね。
困るな 勝手な事されちゃ…。
困るとは 何だよ!
希望も 田倉の人間なんだよ!
お前たち ケンカしながら
大きくなったんじゃないの。
今日 みんなが集まるって
言ったら
希望も きっと
会いたいだろうと思ってさ。
さあ はいはい!
おばあちゃん 私 4月から
小学校へ入るのよ!
はい 分かってますよ! ハハハハハ!
(弘 始)ただいま!
どこ行ってたの?
あ~ ちょっと 駅までな。
もう だらしないんだから!
さあさあ ちょうど よかった。
座って 弘もね 始もね。
はいはい。
はい これは 剛。
ありがとうございます。
はい これは あかね。
ありがとう。
あかねは 今年から 学校だろ。
何か お母さんに
好きなもの 買ってもらいなさい。
は~い!
はい これ みどりちゃん。
(みどり)ありがとう。
すみません
いつも 頂くばっかりで…。
別れて暮らしてると
なかなか おばあちゃんらしい事
してやれないだろ。
(道子)ありがとうございます。
はい 弘。 ありがとう。
始。 ありがとう。
あんたたちは
1年 よく お勉強して
上に上がったんだもんね。
弘や始にまで すいません
来る度に頂いて…。
子どもたちはね
お小遣い もらうのが
お目当てなんだから。 ねえ!
(仁)じゃあ 希望が来る前に
話す事 話してしまおう。
みんな 表で遊んでくるんだ。
(子どもたち)は~い!
(初子)あんたたちだって
おなか すいてるでしょ。
2階にも用意してあるから
2階 行って 食べてらっしゃい。
仁ちゃんたちも
ビールでも飲みながら。
ありがたいね。 さすが 初ちゃんだ
よく 気が付く。
よいしょ。 あっ すいません。
はい 母さん。
うん。
はい どうぞ。
いや 私は。
いいじゃない 今日は特別。
それじゃ 少し。
あ~ もう結構。
じゃあ 初ちゃんに。
すみません。 はい 私 もう…。
じゃあ とにかく まあ 乾杯。
母さんの健康を祝して。
乾杯。
何だか 気味が悪いね。
いや 母さんが 元気で
頑張っていらっしゃるからこそ
今の たのくらの繁栄も
あるんです。
一体 何の話なんだい?
どうせ ろくでもない話なんだろ。
すぐ そういう事 言うんだから。
みんな たのくらの将来の事を
考えて…。 ねえ!
いよいよ チェーン店 出す事に
決めたからね。
母さんの反対を
押し切ってでもやる!
辰則と市場調査もしたし いろいろ
研究もした結果の事だ。
今を逃したら
二度と チャンスはないんだよ。
今までに 何度も チャンスはあった。
その度に 母さんに反対されて
諦めたんだ。
しかし
たのくら開店の時の借金も
この春 無事に完済したし
これからは…。
今の たのくらは
開店当時の倍の売り場面積だし
従業員だって
20人からの大店舗なんだよ。
それに 辰則さんだって
小さいけど 店を持たせてやれた。
私はね もう それだけで ホントに
ありがたいと思ってんだから。
確かに 今の たのくら 大スーパーに
なったよ。 売り上げだって
順調に伸びてきてる。
しかし もう限度だよ。
ここだけじゃ これ以上の発展
望めやしないんだ。
もちろん 今のままだって
母さんには
十分 夢を果たした事になるだろ。
しかし 借金は返したばかりか
土地だって 安い時に買ったのが
方々に残ってるんだ。
土地は 投資のつもりで
今に値上がりするのを見込んで…。
その土地に 店を建てたら
値上がりなんて 目じゃないよ!
この10年間 日本は
奇跡的といわれるぐらいの
経済成長をしてきたんです。
まだまだ
この経済成長は続きます。
設備投資時代は 当分…。
そう! 借金したって
店を増やすのが得な時代なんだよ。
それぐらい
母さんだって分かるだろ?
里の父も よく言ってるんですよ。
たのくらも
このままじゃ惜しいって。
(仁)それにさ
店ばっかり大きくして
母さんと初ちゃんが住む所が
これじゃね。
母さんたちの家も 建てなきゃ。
ここも 店にしちまったら
売り場面積も増える訳だし…。
(辰則)店へは お通いになれば
いいでしょ。
総菜部門の調理場も よそへ
移してしまったんですから
なにも ここで頑張って
おられる事は ないと思いますし。
母さん 思い切って やりましょう。
辰則と私が ついてますよ。
(禎)剛ちゃんだって 弘や始だって
すぐ大きくなるのよ。
それぞれ 店の一軒ぐらい
持てるようにしといてやりたいわ。
ねっ お姉さん。
そうね。
でも お母さん 慎重な方だから。
(仁)母さん。
☎
はい 田倉です。
百合ちゃん!
ええ! みんな 元気よ!
希望ちゃん? いいえ
まだ着かないけど…。 ええ。
え~っ!?
はい はい。 それ おめでとう。
はい 分かりました。
じゃあ また 改めて…。
希望ちゃんね 何とかいう展覧会に
出品してたんだけど
特選になったんですって!
希望ちゃんが うち 出てから
知らせがあったって
伝えてほしいって!
とうとう 希望が…。
(仁)そりゃ すごいな。 いよいよ
希望も一人前じゃないか。
よかった~。
(初子)よかったですね
みんな そろって
お祝いしてあげられて!
これで 希望も
独立できるんじゃないかな。
まあ 窯 造るといったら
相当 金もかかるだろうけどさ。
そんなお金あるはずないでしょ
希望ちゃん…。
仁 さっきのチェーン店の話だけどね
あんたたちが どうしても
やりたいって言うんなら
やってもいいよ。
母さん!
ただしね 1つだけ 条件があるの。
もし 希望が
独り立ちしたいって言ったら
母さん
希望に 窯を持たせてやりたい。
(初子)母さん…。
その事は 誰も 文句 言わない事。
そんな…。
いくら かかると思ってんだよ。
だから 文句 言わないって
言ってるだろ!
それをしてやる事が
母さんの務めなんだよ。
希望には とうとう 加賀屋を
再興させてやる事ができなかった。
せめて
希望を独立させてやる事が
お加代様への ご恩返しだと
思ってんだ。
(圭)こんにちは!
(初子)圭ちゃん!
いらっしゃい!
大きくなったね!
よく来た よく来た!
お父さんは?
いや~ 遅くなってしまって…。
希望!
相変わらず 元気そうで
安心しました。
♬~
母さん?
(初子)希望ちゃん 早く早く!
おしんには 貧しさに耐えて
ただ ひたすら
ろくろを回し続けてきた希望と
黙って 希望を支えてきた百合とが
誰よりも ふびんであった。
それだけに 希望の受賞が
うれしかったのである。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(一同)乾杯!
(希望)ありがとう。
(仁)おめでとう!
(禎)おめでとう!
私は 賞なんかには 全く縁のない
男だから まだ信じられなくて…。
何かの間違いじゃないのかな?
(初子)ちゃんと 百合ちゃんから
電話で…。
(おしん)ねえ 百合ちゃんに
電話してあげなさいよ。
待ってるわよ。
いや 帰ってからで…。
それより 仁君や禎ちゃんに
こうやって祝ってもらえるなんて。
これで 希望の作品も 箔が付いて
売れるようになるんじゃないかな。
独立したって 飯が食えるように
なったって訳だよ。
とんでもない 独立するなんて。
焼き物は 一生が修業だから
これからも
先生の所で お世話になって…。
まだ 独り立ちできないの?
そう簡単に…。
先生のお許しも
もらわなきゃならないし…。
第一 独立する費用だって
ありませんよ。
私は 先生のお手伝いをしながら
コツコツ 自分のものを作るのが
性に合ってんです。
窯 造る金は 母さんが
出してやるって言ってたぞ。
(希望)冗談じゃありませんよ!
窯を持つとなったら それだけの
土地だって必要なんです。
あの辺だって
どんどん 土地は上がってます。
手も足も出やしません。
どんな事だって してあげるわよ。
何 言ってるんですか!
母さんや初ちゃんは
まだ こんな所で
暮らしてるっていうのに
私の事どころじゃないでしょ。
母さんと私はね ここが好きで
居座ってるだけなの。
お店のためにも
この方が便利だし…。
とにかく その話は もう…。
私は 田倉を出て
窯元へ奉公した時
一生 母さんにも誰にも
お世話にはならない
覚悟だったんです。 今更。
希望…。
(希望)大丈夫ですよ! 私は
私の思うとおりにやっていきます。
そういうご心配は 無用です。
私の事より
皆さん 集まられたのは
ほかに 何か
あったんじゃないんですか?
それは もう済んだんだよ。
(禎)たのくらも いよいよ
チェーン店を出す事になって
その相談だったの。
じゃあ とうとう
母さん 決心なさったんですか。
頑固だからね 母さん。
おかげで たのくら
バスに乗り遅れちまったが
今なら まだ
なんとか なりそうなんだ。
今は 車が普及して
農村からだって
みんな
車で買い物に来る時代だからね。
増えた客を
どんどん 吸収できるように
方々に 支店を作る。
そりゃ すごいですね!
じゃあ 資金が いくらあったって
足りないでしょ?
銀行が ついててくれるよ!
どんどん 借りて
設備投資するんだ。
たちまち 借金の2倍や3倍の
利益が返ってくる事は
この店で 既に実証済みだよ もう。
いや~ やっぱり
仁君は 商売人なんだな。
それじゃ 今日は そのお祝いを
しなきゃいけないんじゃ
ないんですか?
果たしてね うまくいくかどうか
分からないのに
祝うような気持ちになれないよ。
母さん!
まあね いざとなったら 私も
もう一度
たのくらを始めるつもりで
支店の経営を取り組まなきゃね!
(辰則)兄さん!
だけどね これから
まだまだ似たような店が
いっぱい 出来るんだから
ちょっと 気を許すと
すぐ 潰れちまうよ!
ああ! ほかを蹴落としても
生き残るぐらいの
がめつさで かかりますよ!
母さん
これじゃ いつまで たっても
のんびり
隠居なんか できませんね。
ホント。 うっかり
病気もできやしないからね!
(仁)ああ。 俺たちが
心配させてる間は 元気だよ。
(道子)そうよね!
これだからね!
いよいよ 明日から
行動を開始しますからね。
少なくとも 年内に 2店は
オープンできるように頑張ります!
酔っ払ってね…。
そんなに焦らないで!
やるとなったら急がなきゃ。
いつ どこが 進出してくるか
分からないんだから。
どこへ出すか よく相談をして。
あんたのとこへは
近いうちに行くから
その時 また いろいろね。
お祝いなんか 要りませんよ。
母さん 忙しいんだ。
余計な気は 遣わないで下さい。
(道子)じゃあ 行きますか。
どうも ごちそうさまでした。
(禎)また来るわよ。
(初子)また来てね。
初ちゃん 母さん よろしくね。
はい。
ほら ちゃんと ご挨拶して!
(子どもたち)さようなら!
ねえ 母さんに よろしくね。
「ありがとう」って。
さようなら!
(圭)さようなら!
(2人)さようなら!
(百合)「いつも 御無沙汰ばかりで
申し訳ございません。
お母さんも初子さんも
お元気の由
陰ながら
お喜び申し上げております。
今日は 希望さんと圭が
お世話になります。
私は伺えませんが
よろしく お願い致します。
希望さんに 手作りのケーキを
少しばかり 言づけます。
このごろ 圭のためにと
ケーキ作りを始めました。
子どもだましですが
お母さんと初子さんにも
召し上がって頂きたくて…」。
母さん?
百合の手紙が入ってたんだよ。
ホントに優しい娘だね 百合ちゃんは。
わっ おいしそうだよ 初ちゃん!
希望も圭も 幸せだね。
たとえ貧乏してたって こんな
いい奥さん 持ってるんだもんね。
道子も禎も 人のうちに来るのに
手ぶらで!
母さん!
いや 私は いいよ。
でも 初ちゃんがいるんだもの。
自分の母親が 面倒かけてると
思ったら
初ちゃんに対して
感謝の気持ち 持たなきゃ…。
私は 母さんの娘ですよ。 母さんの
お世話するのは 当然なんだし
仁ちゃんたちだって
そう思ってるんですから。
そういうもんじゃないよ。
さんざん 食べ散らかして
後片づけもしないで。
まあ それに比べて
百合ちゃんは…。
百合ちゃんも たまには
母さんの顔 見たいでしょうに
やっぱり 仁ちゃんと
顔 合わせるのが つらくて
田倉へは
出入りできないんでしょうね。
百合ちゃんには
もう ホントに どんなに詫びても
詫びのしきれないような事を
してしまって…。
せめてね 希望たちに
何かしてやりたいと思っても
百合ちゃんも希望も 私には
甘えちゃくれないんだから…。
でも 希望ちゃんも百合ちゃんも
お互いに 一番ふさわしい相手と
一緒になって
誰よりも あったかい家庭を持って
誰よりも 幸せなんです。
希望ちゃんだって
長い間の辛抱が認められて
やっと 才能が認められたんです。
これからですよ
希望ちゃんと百合ちゃんは。
今度こそ あの人たちには
できるだけの事をしてやりたいと
思ってんの。
初ちゃん。
初ちゃんには しばらく
我慢してもらわなきゃならないと
思うけど
私たちのうちを建てる前に
まず
希望の窯を造ってやりたいのよ。
ええ。
希望ちゃんと百合ちゃんには
できるだけの事を
してあげて下さい。
お願いします。
(仁)おはよう!
おはようございます!
おはよう!
あっ おはようございます。
社長は?
今朝早く
お出かけになったそうです。
どこ行ったんだ?
さあ…。 初子さんは 何にも
おっしゃってませんでしたが
今日中には
お帰りになるそうです。
困るな。
おふくろの実印が必要だって
いうのに…。 (辰則)銀行ですか?
いや。 やっぱり
例の土地に 1店 出したいんだ。
おふくろが 担保に取って
金 貸してるとこだ。
あ~ あそこは無理でしょう。
社長の古いお知り合いで
担保といったって
形だけの事なんでしょうから…。
しかし 地の利からいって
2店目で勝負するには
あそこが一番なんだよ。
いや それは そうでしょうが…。
あの店の事業内容を調査してみた。
ひどいもんだ!
菓子屋としては 老舗らしいが
今の若主人っていうのが
競輪 競馬に入れ揚げて
商売する気 全くないんだ。
職人たちは 愛想を尽かして
辞めてしまうし
腕のいい職人もいない。 これじゃ
銀行も見放すだろうし
おふくろが貸した金だって
返ってくる見込み ありゃしない。
利息だって
払ってもらってないらしいんだ。
少し金を積めば 喜んで手放すさ。
しかし…。
その方が人助けなんだよ! ハハハ!
その金を 銀行から借りるのに
おふくろが いないんじゃ…。
いや 午後 銀行と会う手はずを
決めてきたんだ。
それは よく 社長と ご相談に
なってから なさった方が…。
おふくろに話したりしたら
反対されるに
決まってるじゃないか。
もう おふくろの出る幕じゃない。
世の中 それほど厳しくなってる。
所詮
あそこへは どこかが進出する。
その前に 是が非でも
うちで押さえるんだよ!
おはようございます!
おはよう!
辰則さんも 朝早くから
こちらへ見えて…。
いよいよ動き出したという感じね。
はい コーヒー。
すいません。
初子さんが いれてくれるコーヒーは
どこの喫茶店よりも
おいしいですよ。
辰則さんは
いつも 褒めて下さるから
いれがいがあります。
初ちゃん おふくろは?
夜には お帰りになるって。
どこ行ったんだよ?
さあ…。
初ちゃん? お母さんだって
たまには いらっしゃりたいとこも
おありでしょ。
さあ 今日は 私一人で 魚売り場
頑張らなくっちゃ! ハハハ!
(辰則)社長にも困ったもんですね。
魚売り場なんか
従業員に任せとけばいいものを
いまだに あのお年で
ゴム長 履いて…。
まあ それが おふくろの
生きがいなんだろうが
今度は 絶対に引退してもらう!
いつまでも おふくろに
たのくら 牛耳られてたんじゃ
たのくらは
この程度で おしまいなんだよ!
先生のおかげで 希望が
賞を頂ける事ができまして
なんと お礼を申し上げて
よろしいやら…。
(栄造)いや
希望君の努力の賜物ですよ。
黙って 私についてきてくれて…。
それに こればっかりは
本人の天性が
ものを言いますからね。
希望君が持ってる才能も
やっと 出てきたんでしょう。
これで 私も
お預かりしたかいがありました。
ここまで育てて頂いて
こんな事を申し上げる筋合いでは
ございませんが
もし 先生のお許しが
頂けましたら
なんとかして
希望を独立させてやりたいと…。
ろくに ご恩返しもしないで
生意気な事と
さぞ ご立腹の事と思いますが
私には 希望が
将来 身を立つように
してやらなければならない
責任がございまして…。
私も 当年 もう67歳でございます。
もしもの事がありましたら
後は 希望が頼る人間は
おりません。
厚かましいのを承知で…。
そうでしたか…。
いや 私に 遠慮は要りません。
独立してからも
まだまだ 大変でしょうが
そういう事があるなら
私も 喜んで 力になりましょう。
先生…。
希望君でしたら 独立しても
なんとか やっていくでしょう。
どんな苦労も耐えていける男です。
ありがとうございます!
これで 私も
大きな荷物を1つ下ろせます。
やっと 下ろす事ができます。
♬~
40年近い歳月 一人で背負ってきた
加代への約束を
やっと 果たせる日が来た。
無心に ろくろを回している
希望を見つめながら
胸の中で つぶやいている
おしんであった。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
希望の受賞をきっかけに
おしんは なんとか 希望を
独立させてやりたいと思った。
長い間 気がかりだった
加代への約束を
ようやく
果たせる時が来たのである。
(百合)御無沙汰致しております。
(おしん)突然 やって来て…。
(希望)母さんが
先生の所へ来てくれて
いろいろ 話もあったもんだから
一緒に…。
そうですか。 圭 いらっしゃい。
お土産だよ。
はい 絵本よ。
(圭)ありがとう!
どうも すいません。
この間 希望が来た時
ケーキ ありがとう。
とっても おいしかったわ。
圭は 幸せだね
お母さんが作ってくれたケーキ
食べられるんだから。
うん!
出来たの買うと 高くて…。
うちなんか
とても 手が出ませんから…。
それに 圭が生まれてから
先生の所に お手伝いにも
あがれなくなって
退屈するほど
暇が出来ましたでしょ。
あんたたちが
経済的に つらい事は
よく分かってたんだけど
何にもしてあげられなくて
すまないと思ってんのよ。
とんでもございません。
お母さんには うちの人も私も
いろいろ ご迷惑をおかけして…。
これ以上 お世話になったら
罰が当たります。
なんとか 私たちだけの力で
生きていかなきゃ。
あんたたちが そう言うから
余計な事をしたら
かえって あんたたちの気持ちを
傷つけるんじゃないかと思って。
でも 今度だけは 私の言う事を
聞いてもらいますよ。
母さんが 私に独立しろって。
先生とも話し合ってくれて
先生のお許しも頂いた。
窯を造る土地も
先生が探して下さるそうだ。
でも うちには そんな余裕…。
費用は 私が。
百合ちゃん おめでとう。
よく 今まで辛抱して
希望に ついてきてくれたわね。
希望が 今日まで 焼き物一途に
やってこられたのは
百合ちゃんの支えが
あったからなのよ。
ありがとう。 ホントに ありがとう。
私は 何にも…。
私こそ 希望さんのおかげで
こんなに幸せになれて
夢のようです。
私は 今のままで…。
希望さんが独立するなんて
そんな大それた事…。
そりゃね 独立したらしたで
また 苦労が増えるかも
しれないけど…。
でも 先生は
あんなに 希望の才能を
買って下さってるし。
でも…。
そうなんだよ。 やっぱり
母さんのお世話になるのは…。
たのくらも いよいよ 新しい店を
出す事に 踏み切ったんでしょ?
だったら いくら
資金があったって 足りないんだ。
そんな時に 私の事なんか…。
それと これとは 別ですよ。
母さんね たとえ借金したって
希望を独立させる責任があるの。
あんたの亡くなった母さんと
約束したんだもの。
母さん!
希望。 母さんも もう年なのよ。
今してあげなかったら 後で
後悔するような事になったら
もし そんな事にでもなったら
あの世へ行って お加代様に
合わす顔がないじゃないか…。
それに 圭のためだって…。
(初子)そうですか。
よかったですね。
先生も許して下さって?
うん。
いい土地が見つかったらね
すぐ 窯場を造って
それから
作業場と住まいも造るように。
近いうちにね 設計と見積もりを
早く出すようにって
よく言ってきたわ。
相当 広い土地が必要なんでしょ?
作業場から うちまで
建てるとなると
やっぱり 大変ですね。
うん。
今ある土地をね 1つ 手放せば
なんとかなると思うのよ。
こういう時のために買っといた
土地だからね。
まあ それで足りなければ
銀行から借りれば
なんとかなるだろう。
お夕飯は?
あら 悪かったね。
済ませちゃったの。
百合ちゃんの手料理
御馳走になったのよ。
久しぶりで 希望と 3人で
ゆっくり 話もできたし…。
これからは いつでも
希望ちゃんの所に
行かれるようになりましたね。
うん。
長い間ね 希望と百合の事は
気にかかりながら
私には もう
どうしてやる事もできなかった。
2人の顔を見るのも つらかった。
でも これからは
する事してやれば
大きな顔して 遊びにも行ける。
母さんも
これで いつ お迎えが来ても
もう 心残りないからね。
また そんな事!
たのくらは これからですよ!
私は もう
する事してきたんだから。
あとは 仁と辰則が
やっていけばいいんだよ。
はい。
留守中 変わった事なかった?
ええ 別に…。
あっ 今日 仁ちゃんが
母さんの実印 貸してくれって。
急ぐ事があるようでしたから
お渡ししました。
どうして そんな勝手な事を…。
母さん。
何に使うって? さあ…。
あんた 理由も聞かなかったの?
だって ほかの人じゃあるまいし
仁ちゃんですよ。
私が いちいち そんな事…。
それに 母さんだって 今
たのくらの事は 仁と辰則ちゃんが
やっていけばいいって
おっしゃったじゃありませんか。
母さん。 いつまでも 母さんが
たのくらを握っていたら
仁ちゃんだって 辰則さんだって
自分のやりたい事もやれなくて
やる気を無くしてしまいますよ。
もう 若い人たちの時代なんです。
そろそろ 2人に任せないと…。
2人とも まだ 子どもだよ!
母さん! 母さんだって
いい加減 楽なさらないと。
(仁)銀行に 新しい店の建設費を
融資してもらうのに
実印が必要だったんですよ。
私に ひと言の相談もしないで!
母さん…。 母さん 新しい店を
出す事に 賛成してくれたんだろ。
その資金 借りるのに いちいち
母さんの許可 要るのかい?
それじゃ 我々は 仕事にも何にも
なりゃしないじゃありませんか。
そりゃ 母さん たのくらの社長だ。
社長の判がなきゃ
何にもできないし
判をもらおうと思ったら
社長の決裁を受けるのは
当然でしょう。
しかし それじゃ 急ぐ時に 間に
合わない事だってあるんですよ。
少しは 我々を信用して
任せてもらわなきゃ
やりにくくて
しかたありませんよ。
それに言っときますがね 母さん
希望に 何をしてやろうと
私には
文句を言う資格は ないでしょう。
しかし 今は 目いっぱい
銀行から 金を借りないと
年内 2店という目標は
難しくなるんですよ。
希望の方に回してる余裕なんか
ありませんからね。 仁!
それに うっかり
母さんが 希望に
資金 出してやったりしたら
それこそ 贈与になって
どれだけ 税金 取られるか
分からないんですよ。
希望は希望で
借金させたらいいんですよ。
保証人くらい
いくらでも なってやりますよ。
希望が かわいいのは分かるけど
金の事は きちんとしとかないと
希望だって うちだって
迷惑する事になるんですからね。
母さん!
もう いい加減 店へ出るの
やめたら どうですか?
いつまでも ゴム長 履いて
水 使う年でもないでしょ。
今は
大型の電気製品の1つも売れば
魚売り場の一日の もうけぐらい
出てくるんですよ。
なにも 余計な苦労
しなくったって。 仁!
魚売り場を廃止するつもりは
ありません。
たのくらは 魚屋です。
もうけるだけが能じゃない。
新しい魚を安く
お客様に ご奉仕して喜んで頂く。
その精神には 変わりませんよ。
だから もうけの薄い生鮮食料品や
総菜も大事にしてるんですよ。
ただ 若い者に任せておけば…。
(辰則)お母さん! 副社長は
お母さんの体 気遣われて…。
(ドアを強く閉める音)
やれやれ 頑固な ばあさんだ。
田倉の がんだよ。 副社長…。
母さん
お客様が混み始めましたよ!
母さん!
気分でも悪いんですか?
母さん…。
今日から 店 出るの やめるよ。
もう 年寄りの出る幕じゃ
なさそうだね。 母さん…。
昨日もね レジの女の子の
お客の応対が悪いもんだから
言葉遣い 直してたら
「そんな うるさく言ったら
勤めてくれる子いなくなるよ」って
仁に叱られたよ。 そんなバカな!
これまで たのくらの従業員の
しつけがいいって
お客様から褒められてきたのは
みんな 母さんが
やかましく 教育なさったからじゃ
ありませんか。
今の女の子は
わがままに育ってるからね
年寄りの言う事なんか
うるさくて しょうがないんだろ。
潮時だよ もう…。
母さん。
私が 昔 雄の手を引いて
魚の行商してた頃は
たとえ小さくてもいい
店を持って
自分のうちで商売したいと思った。
それが 念願だった。
やっと 店も持てて…
それも こんな立派な店を
やるようになって
父さんが果たせなかった夢も
果たして
あんなに恐れてた貧乏からも
抜け出せた。
私は もう これで十分だよ。
あとは 希望の事さえ
ちゃんとしてやれたら…。
初ちゃんもね
一生 食べるに困らないように
ちゃんと残してあるからね。
母さん…。
私も そろそろ 四国へ
お遍路さんにでも行こうかな。
それも 母さんの夢だったんだよ。
いつ お迎えが来てもいいように。
そんな…。
(次郎)社長 逃げて下さい!
変な女が飛び込んできて
「社長に会わせろ!」って
出刃包丁 振り回してます。
みんなで捕まえようと
してるんですが
とにかく 凶器を持ってるんで
危なくって!
誰なんだい?
(次郎)それが さっぱり。
私に会いたいって?
(次郎)ええ。
「社長を殺して 自分も死ぬ」って。
(初子)母さん 2階へ!
(次郎)社長!
私に会いたいって言うんなら
会おうじゃないの。
社長が出ていったって
どうしようもありませんよ。
社長に もしもの事でもあったら。
相手は 女なんだろ?
ええ…。
男のくせに オタオタして
みっともないよ!
母さん!
社長!
社長を出せ! 出さないなら
このうちに 火 付けてやるよ!
用件 言いたまえ 用件を!
お前みたいな者に 何が分かる!?
社長を連れてこい!
社長に 話があるんだ!
連れてこないんなら
ホントに 火 付けてやる!
おい!
私が 社長の田倉しんです!
(仁)母さん 危ないから…。
余計な事したら
社長の命は ないよ。
何か お話があるそうですが。
鬼! あんたは 鬼だ!
うちの人を 上手に だまして
家も土地も
巻き上げてしまうなんて!
返せ! 返してくれ!
あそこ 追い出されたら
私たち親子5人
行く所がないんだよ…。
路頭に迷って
飢え死にしろって言うの!?
何かの間違いじゃないんですか?
私には 何の事だか さっぱり…。
いい加減な事 言うな!
「10日までに立ち退け」って…
ほら ここに ちゃんと あんたの
ハンコと名前が
書いてあるじゃないか。
あそこ 返してくんないなら
あんた 殺して
私も死ぬしかないんだよ!
どうせ生きてたって
しかたがない命だからね!
仙子さん…。
あ~ 離せ! 離してくれ! 離せ!
♬~
母さん…。
♬~
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(仙子)私が何したって 言うんだ!
人 だまして
家も土地も取り上げたのは
ここの社長じゃないか!
(おしん)お騒がせして
すいません!
店の者が つい慌てて
お知らせしたんだと思います。
うちの方は 何にも
被害を受けておりません!
奥さんも きっと 悪気があって
なすった事じゃないと思います。
どうぞ 今日のところは…
今日のところは
穏便に お取り計らい
お願い致します!
(仁)母さん!
その女は 凶器を振り回して
我々を脅迫したんですよ。 なにも
かばう事なんか ありゃしない!
お黙り!
お前が出る幕じゃないよ!
待って下さい! お願いします!
お願い致します!
お待ち下さい! お願いします!
(ため息)
(初子)遅いわね 母さん…。
一体 どういうつもりなのかしら
あの女の人…。 いい迷惑ね。
お客様だって
びっくりしただろうし
第一 お店の信用に関わるわ。
(辰則)社長も 社長だ。
いきなり 仁さん 殴るなんて
あんまりですよ。
だけど 母さんは 理由もなく
あんな事なさるお人じゃないわ。
仁ちゃん。 あんた 何か
心当たりあるんじゃないの?
いい災難ね。
嫌な噂にならなきゃいいけど…。
(初子)母さん!
釈放してもらったよ。
あんな女のために
なにも 母さん
警察へ 頭 下げに行く事なんか
ないんだ。 仁!
あんな女を甘やかすような事を…。
仁! お前 自分が
どんな ひどい事したか
分かってんのかい?
私が お前を殴ったのも
どういう理由なのか
それも分かっちゃいないのかい?
あの女は 我々のした事を
逆恨みしてるだけなんですよ。
私は 正当な取り引きしてるんだ。
何が 正当な取り引きだい!
人の弱みに つけ込んで
他人の土地を
だまし取るような事しといて!
母さんまで おかしな事
言わないでもらいたいな!
こっちは ちゃんと 金 払って
買ってやったんだ!
そのために 銀行から
金だって 借りてるんですからね。
よくも そんな
ずうずうしい事が言えるね!
仙子さんのうちはね
代々 菓子屋をやってる老舗で
あの人の お父さんっていうのは
うちの死んだ父さんが
魚屋の御用聞きをしてる時に
ひいきにして下すって
よく 魚を買って下すった。
関係ないだろ そんな昔の話。
終戦後だって
忘れないで お菓子を持って
時々 様子を見に来て下すった。
あんな ありがたい事なかったね。
母さんにとっちゃ 恩人だよ。
仙子さんはね
その人の一人娘なんだよ。
7~8年前に 婿を取って
父さんは すぐ
亡くなってしまったけども…。
その婿っていうのが
もう ひどい遊び人で
とうとう 店を駄目にしてしまって
母さんに 泣きついてきたんだよ。
「もう二度と
酒と賭け事は しないから。
真面目に働くから」って言うから
母さん お金を用立ててあげた。
いや そりゃ その時にね
うちと土地を 担保には取ったよ。
でも それは
ほんの形だけの事で…。
お前が こんな
あこぎな事をするなんて!
向こうが怒るの 当たり前だよ!
そんな事で 我々を恨むのは
お門違いも 甚だしいよ。
悪いのは 亭主じゃないか。
そうだろ? 仁!
母さん…。 そりゃ 母さんには
母さんの思いもあるだろ。
しかしね 人情だ 義理だって
そんなものに溺れてたら
商売なんて できやしないよ!
お母さん 副社長だって
好きでなさった事じゃないんです。
ただ たのくら大事の一念で…。
いいよ!
もう 移転登記も
済んでしまったから
今更 どうしようもないだろ。
あの人には そのかわり
別の土地をね。
母さん…。
それで勘弁してもらうよ。
そんなバカな!
それじゃ
あの人たちを 裸で放り出して
知らん顔してるって言うのかい?
これからは 土地は
1坪だって貴重なんですよ!
店の資金だって いくらあったって
足りゃしない!
お前に 余計な事は言わせないよ。
この店の社長は 私なんだからね!
お前に
たのくらなんか任せてたら
今に たのくらなんか
潰れてしまうよ!
お風呂 お先に…。
うん。
母さん まだ?
あ~ 嫌になっちゃったね!
仁は 年内に 2店 出したいって
言うんだけど…
今 この見積もり表を見て
びっくりしたんだよ。
この店と ありったけの土地を
抵当に入れても とっても
銀行じゃ貸してくれそうにない
お金だよ。 あら…。
もう死ぬまで お金の苦労しなくて
済むと思ったのに
また 借金で苦労しなきゃ
ならないなんてね。
どうして
新しい店を出したがんのかね。
今の店だけでも 十分
もうけがあるっていうのに…。
そりゃ 母さんにしてみれば
ここまでにして もう満足って
お気持ちかもしれないけど
仁ちゃんも辰則さんも
まだ 若いんだし
これからなんですもの。
いや~ そりゃね
店を出せば出すほど もうかるって
言うんなら いいんだけど
借金 借金で 一つ間違えば
元も子も無くしちまうんだからね。
母さんも 年なのかな?
今まで そんな事
心配する方じゃなかったのに…。
まあ 最後は
母さんが お決めになる事です。
気乗りのなさらない事は
おやめになった方が…。
まあね あんな大騒ぎをして
手に入れた土地だから
今更 中止って訳にも
いかないけど…。
それに まあ 条件は
一応 そろってるしね…。
母さん!
まあ いいだろ
やってみて 失敗したってさ。
ただね 希望の事が
思うようにしてやれないんだよね。
母さん いつか 私のために 何か
残しておいて下さったって…。
あ~ 初ちゃんがね
一生 困らないように 株券をね。
それ 希望ちゃんに…。
バカな事 言うんじゃないよ!
あれはね
どんな事があっても駄目だよ!
まあ 何もかも重なって
希望も 運がないけど…。
でも せっかくね 独立するという
チャンスなんだから なんと…。
当てが おありなんですか?
さあ 私も忙しくなるよ!
当分 四国のお遍路さん回りなんて
できっこないね!
♬~
(香子)さあ どうぞ。
(浩太)ああ…。
まあ いつも お変わりなく
何よりでございます。
いや~ おしんさんこそ。
私は ばあさんと
もう 隠居の身ですが
おしんさんは まだまだ現役で…。
いいえ。 私も隠居したいんですが
若い者に任せますと
頼りなくて 何をしでかすか
分かりませんから…。
そういう事を言うと
嫌われますよ 年寄りは…。
そういう お気持ちで
いらっしゃるから
おしんさんは いつまでも
お若くていらっしゃるんですよ。
いいえ。 私も 商売の事は
忘れてしまいたいんですけど…。
まあ お茶でも…。
う~ん… 面白い。
若い人のもんだな。
希望が…。
いい作品が出来ました時に
こちらへ お届けするつもりで
おりましたが なかなか…。
でも 今度 希望が
賞を頂く事ができまして…。
これは 私の好きな
作品ですので
是非 浩太さんに…。
う~ん…。 希望君がね。
そういえば
加代さんも いい絵を描いてた。
加代さんの絵の激しさと
どっか似てる…。
やっぱり
加代さんの息子さんだな。
お気に入って
頂けましたでしょうか?
いや 立派なものです。
よく ここまで…。
やっと 一人前になりました。
おしんさん。
やっと 加代さんとの約束を
果たせましたね。
いいえ。 希望が
窯を持てるまでは まだ…。
実は 私は
そのつもりでおりましたが
今度 店が 急に
支店を出す事になりまして…。
長い間
私が反対しておりましたが
もう 息子が
どうしてもって言いまして…。
これから どうなるか
分かりませんが
一度 走りだしたら
止まる訳には まいりません。
まあ そんな事情で
希望に 窯を持たせてやる事も…。
いや そりゃそうだ。 支店の進出と
かち合ったんじゃね…。
あの… ここに 株券がございます。
これで 希望の独立資金を
ご融資 願えませんでしょうか?
株券を売ればいいのですが
これは 私が 初子のために
長い間 かかって
こしらえたもんですから
どうしても 手放せなくって…。
それに うちの恥を
申し上げるようですが
息子には
どうしても知られたくない
事情もございまして…。
なるほど。 きょうだいで育って
初子さんが いくら 田倉のために
尽くしたとは いっても
まあ いろいろ あるんでしょう。
分かりました。
私が なんとかしましょう。
浩太さん…。
加代さんの息子さんなら
私にだって
まんざら 縁がない訳じゃない。
それに
加代さんとの事 考えると
手助けしてあげるのが
人情ってもんでしょう。
浩太さん…。
窯が出来たら お邪魔したいな。
是非。 お加代様も どんなに
お喜びになるでしょう…。
加代さんの息子さんがね…。
♬~
ただいま。
お帰りなさい。
ごゆっくりだったんですね。
久しぶりに お伺いしたからね。
初ちゃん 希望の事
何もかも うまくいきそうだよ。
じゃあ 並木さんが?
仁には ないしょだよ。
はい。
これで 母さんも やれやれですね。
冗談じゃないわよ!
店だって 希望の事だって
大変なのは これからなんだから。
さあ 御飯 御飯!
おなか すいたでしょ?
やがて たのくらの
2号店 3号店の建設が始まった。
そして 時を同じくして
希望の窯と住まいの工事も
進められる事になった。
それは おしんが
今まで築き上げてきたもの
全てを投じての
新しい賭けであった。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(おしん)あ~ 暑いね!
(辰則)お帰りなさい。
お疲れさまでした。
いかがでした?
まあ 近頃の工事って
簡単なんだね。
あっという間に
鉄骨 組み立てられるんだからね。
(仁)建物は 9月オープンに
十分 間に合うんだ。
肝心なのは 人間と商品でね。
商品の方は 大体 この本店と
同じような規模でと計画してます。
納入業者も ここと同じで
いいでしょ?
同じ方がいいよ。
2店のオープンで 今までの3倍の
商品を仕入れる事になるんだが
同じ所なら
仕入れ値は 今までより
ずっと安くなるはずだ。 母さん
支店が多くなればなるほど
商品が安く売れるというメリットが
生まれてくるんですよ。
いや それが 最大のメリットですよ。
これからは
いかに売るかという事より
いかに いい品物を安く仕入れるか
それが 勝負のポイントになります。
まあ 仕入れの方は
俺と辰則でやるとして
店の責任者を決めんとな。 まあ
従業員だって 今から集めて
オープンまでに
みっちり 教育しないと。
じゃあね
次郎ちゃんと征男ちゃんを
それぞれの店長にしてやったら?
あの人たちは もう
この店の創業以来 ずっと辛抱して
働いてくれてたんだ。
それに 何より この店の商売を
よく分かってくれてるからね。
母さんが そのつもりなら
我々に 異存ありませんよ。
すぐ辞令出して 彼らにも早いとこ
店長の自覚を持たせるんだ。
本店は 今までどおり
私が責任を持つ。 はい!
辰則さんも
裏方の仕事で 大変だろうけど
よろしく お願いしますね。
はあ…。
あ~ 辰則 今やってる店な
閉めた方がいいぞ。 はあ?
あんまり
業績も よくないようだし…。
はあ。 禎が 結構
頑張っては いるんですが…。
あそこ 場所 悪かった。
しかも 3号店のオープンで
あの辺の客は どうしたって
そっちへ取られてしまう。
君も こっちに掛かりきりだし
禎一人じゃ どうしようも
ないだろ。 そうだね。
禎も大変だよ。 もうそろそろ
主婦業に専念した方が…。
じゃあ あそこは
あんたたちの住まいだけにして…。
(仁)店 壊して 住まい広げたら
相当でっかい家になるぞ。
はい!
じゃあ 禎にも 楽をさせますか。
辰則さんにも
スーパー たのくらの専務として
食べていけるように
なってもらわないとね。
(圭)お帰り!
(希望)やあ ただいま!
おばあちゃんが来てるよ!
(百合)圭 「おばあちゃんが
いらしてます」でしょ。
いいよ こんな子どもに。
いや~ いらっしゃい。
お帰り。
お待ちになってたのよ。
すいません。 先生の用で
ちょっと出かけてたもんだから。
私もね 今 帰ろうと思ってたの。
今日は ちょっと 工事の
進み具合を 見に来ただけだから。
私が ご案内してきました。
出先で 和菓子を頂いたんです。
おいしい店のですから
召し上がってって下さい。
じゃあ 熱いお茶 いれましょうか。
おかげさまで 窯も出来て
母さん
ホントに ありがとうございました。
なんと
お礼を言ったらいいのか…。
何度も言うようだけど
私が融通した訳じゃ
ないんだから
私に お礼なんて…。
仕事場の方の事は
私には よく分からないけど
住まいの方
少し狭いんじゃないの?
だって 2間しかないじゃないの。
しかし そんな ぜいたくも…。
だって 狭いわよ これじゃ…。
2間あれば 十分です。
希望さんは ほとんど 仕事場で
家にいるのは
寝る時ぐらいでしょうし
圭と 2人なんですから。
そりゃ 今は
それでいいかもしれないけど
そのうち 赤ちゃんも
できるでしょうし
いっそ 建てるんだったら
うんと 広い方がいいわよ。
その時は また 建て増せば
いい事ですから。 百合ちゃん。
それだけでも ありがたいんです。
今は こんな借家暮らしなのに
新しい自分の家に
住めるんですもの。
欲がないんだね ホントに 百合は…。
人様から お金を お借りして
建てるんです。
ぜいたくは 言ってられません。
百合は 私に返せるかどうか
心配してるんですよ。
バカだね。 いざって時には
母さんが ついてるんだもの
ちゃんと 母さんが始末しますよ。
いや~ これは あくまで
私の借金です。 私の力で
返済するつもりでいます。
しかし
もしもっていう事を考えると
融資して下さった
並木さんっていう方が
どういう人か分からないだけに…。
それは 形の上だけで
ちゃんと 母さんが 責任 持つから
そんな事は 安心して…。
じゃあ やっぱり 母さんが
出して下さったんですか?
もう そんな事
どうだっていいじゃないの!
あんたは 仕事に 精 出して
百合ちゃんと圭の幸せを
考えてやれば いいんだから。
たのくらだって 今 いくら
金があったって 足りない時です。
母さんだって
苦しい事ぐらい 承知してます。
だから 並木さんっていう人に
融資を頼んで下さったんでしょ?
しかし 並木さんっていう人の
素性も分からないし
もし 間に入って下さった
母さんに
迷惑をかけるような事にでも
なったら…。
並木さんって
そんな方じゃないわよ。
しかし…。
並木さんはね…
あんたの亡くなった母さんの
恋人だった人なの。
ホント 言うとね 私も好きだった。
でも お加代様も私も
とうとう 別の人と結婚した。
でも 並木さんとは この40年近く
何かあると お世話になって
母さんにとっちゃ
一番 信頼できる相談相手だった。
今度だって
希望の事を ご相談したら
うちの事情も
よく分かって下すって
喜んで
融資を引き受けて下すった。
「お加代さんの息子さんなら
私にとっても 縁のない人じゃ
ないから」って…。
あんたが焼いたつぼ
お持ちしたら
お加代様の事を
思い出されたのか
それを
じっと見入っておいでだった。
私がね 仁や あんたに
並木さんの事 話さなかったのは
変に誤解されるのが 嫌だったの。
母さんの胸の中に いつまでも
じっと 納めておきたい
大事な大事な思い出なんだもの。
一生 誰にも話すまいと
思ってたんだけど
希望にとっては
特別な お方だからね。
母さん…。
初ちゃんには 話したんだけど
仁と禎には これからも
ないしょにしといてちょうだい。
希望と初ちゃんには
分かってもらえそうだけど
仁と禎には 無理だ。
今更ね 変に誤解されても
並木さんに対して
申し訳が立たないから。
「窯が出来たら
一度 是非 見に行きたい」って。
いいだろ? お連れしても。
♬~
その年の秋 スーパー たのくらの
2号店 3号店が
相次いで オープンした。
一度に 2か所へ
店を出したという事で
たのくらは その底力が評価され
信用も高まって
初日から 客が集まった。
仁と辰則の
ねらいどおりであった。
(一同)乾杯!
無事に
3日間の開店セールも終わった。
まあ 上々の滑り出しだ。
皆さん 御苦労さまでした。
(初子)お疲れさま。
(道子)お疲れさまでした。
私 久しぶりに お店 出て
3日間 立ちづめだったでしょ。
もう 足が つっちゃって…。
(禎)私も。 店 やめてから
楽してたせいかしら
レジ 入ってたら 人いきれで
気持ち悪くなっちゃった。
随分 混んだもんな。
でも 2号店の方って こことは
全然 客層が違うんですね。
ここは サラリーマンの奥さんが多いけど
向こうは 農家の主婦って感じ。
辰則。 駐車場を広く取ったのは
正解だったよな。
俺の思ったとおり
遠くの農村部からも
結構 車で来てくれたよ。
そういう客の買い物は
豪勢なんですよね。
衣料品だって まとめて
5点6点 買っていくんです。
日用雑貨だって 菓子類だって
こんな抱えきれないほど持ってね。
(仁)まあ 2号店 3号店が
この調子で成功したら
続いて また どっかへ 進出を
考えなきゃな。 もう いいだろ。
冗談じゃありませんよ。
スーパー たのくらのチェーン店計画は
今 やっと スタートラインに
着いたばかりですよ。 仁…。
(仁)よそじゃ 10店 20店って
グループの店だってある時代ですよ。
指をくわえて この好景気
見てるって法は ないでしょ。
4号店は 新興住宅地です。
お母さんが持ってらっしゃる
土地のうちの一つに
将来 住宅地として
開発されるという情報が
流れてる所があるんです。
その前に
母さんたちの家も建てなきゃ。
ここじゃ ひどいもん。
うちも頼みますよ!
今に 子どもたち それぞれ
個室が必要になりますからね。
分かってる 分かってる。
(禎)だったら うちも!
店だか住まいだか
分からないようなうち
落ち着かなくって…。
(仁)旦那に頼めばいいじゃないの。
(禎)お願いしますよ。
ホントに みんな
勝手な事ばっかり言って…。
(初子)いいじゃありませんか。
仁ちゃんや辰則さんの かい性で
する事なんですもの。
2号店 3号店も うまくいくか
どうか分からないのに
もう 4号店の事 考えて…。
そんな甘い時代が続くと思ったら
大間違いだよ。
母さん みんなが 一生懸命
働くのも 家族のためなんですよ。
家が建てられるんなら
結構じゃありませんか。
あっ 希望ちゃんの所も もう…。
ああ。 今月の末には 出来るって
言ってたね。
今度 私も お祝いに行かなくちゃ。
百合ちゃんとも
随分 会ってないわ。
行ってやっとくれ。
百合も きっと喜ぶよ。
初ちゃん!
(戸が開く音)
(百合)お母さん! 初子さん!
出来たじゃないの!
おかげさまで!
あの 明日 引っ越しなんです。
落ち着いたら お母さんと
初子さんを お招きしようって
今朝も 希望さんと…。
おめでとう 百合ちゃん。
よかったわね。 よく辛抱して…。
あの どうぞ
お上がりになって下さい!
お母さんの おっしゃるとおり
1部屋 増やさせて頂いて
3部屋もあるんですよ。
木の香りも畳の匂いも 新しくて
こんな すてきな家に
住めるなんて…。
百合ちゃん。
圭も あんなに喜んで…。
お母さん
ホントに ありがとうございました。
いろんな事がありましたけど…。
よかったね。
♬~
百合ちゃん
うれしそうだったじゃない。
ホントに。
ねえ 久しぶりに会えたから。
お料理も おいしかったわ。 今度
母さん あれ 作ってみましょうね。
そうだね。
すぐ 希望の所へ
行ってやってくれ!
初ちゃんも一緒に!
(初子)えっ?
百合が 交通事故で…。
(初子)そんなバカな!
だって さっきまで 私たち…。
今 希望から 連絡あったんだ。
病院は ここだ。
とにかく 圭の面倒だって
見る者がいなきゃ。
容体によっては 俺も すぐ行く!
あ~ タクシーで行った方がいいな。
金だ。 何に要るか
分からないからね。 さあ。
一緒に 夕飯を済ませて
別れたばかりの百合であった。
その百合が 交通事故に…。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(おしん)希望…。
(初子)百合ちゃん!?
(希望)10分ほど前に…。
♬~
百合ちゃん 死んじゃ駄目!
明日は 引っ越しなのよ。
あんなに 楽しみに
してたじゃないの!
しっかりしなさい
百合ちゃん!
(希望)初ちゃん…。
百合ちゃん!
百合ちゃん…。 母さん 百合ちゃん
まだ こんな あったかい!
こんな きれいじゃないの!
死んだなんて嘘よ! 百合ちゃん!
百合ちゃん! 百合ちゃん!
百合ちゃん! 百合ちゃん!
百合ちゃん!
初子!
母さ~ん!
家へ 連れて帰ります。
新しい家へ
寝かせてやりたいんです。
(初子の号泣)
(ふみ)嫌だ 電気がつかないわ。
あっ その電球 切れてるんです。
使ってもいないのに
切れちゃってんのかい?
誰か 大急ぎで うちから
電球 取ってきておくれ!
台所が暗いんじゃ
どうしようも ありゃしない。
あなた 葬儀屋の手配は
どうなってるんですか?
今夜は もう こんな時間だから
お通夜するったって
誰に知らせようもないし
無理ですね。
明日の晩になるんでしょうか?
≪(車が止まる音)
あなた 百合ちゃんですよ!
(栄造)圭ちゃんも 何か
異変を感じていたんだろうね。
「母さん」って泣いてたが
泣き疲れて 眠ってしまった。
申し訳ありません。
百合ちゃんが このうちへ
帰ってくると言うんで
連れてはきたんだが…。
何だったら 圭ちゃん
今夜 うちで預かろうか?
いいえ。 圭がいないと
百合も寂しいでしょう。
百合の事は いつかは
話さなきゃならないのですから。
うん…。
葬儀屋には「明日の朝 来るように」
そう言っといた。
お母さん
びっくりなさったでしょうね。
どうか お力を
お落としにならないように…。
ありがとうございます。
百合ちゃん 明日 また来るからな。
じゃあ 私たちは これで 一旦…。
何かあったら 電話 頂戴ね。
すぐ 飛んでくるから。
ありがとうございます。
希望ちゃん 見て…。
なんて きれいなんだろう。
百合… ほら
お前の家へ帰ってきたんだぞ。
お前の新しい家だ。
圭も いるぞ。
もう どこへも行くな…。
ずっと ずっと この家で
圭と私のそばにいてくれ…。
♬~
ほら 百合 お前が 気にしてた
台所の電気も ついたぞ。
明るいだろ。
お前は この台所で料理するのを
楽しみにしてたな。
百合… 百合!
希望 百合ちゃんを
寝かせてあげなさい。
今日の夕方 私たちに
夕御飯を作ってくれて…。
シメジの炊き込み御飯が
よく出来て…。
白あえも おいしくて…。
「希望は いい奥さんをもらって
幸せだ」って 初ちゃんと…。
私に かい性がないから
苦労ばっかり かけました。
やっと これから
少しは 楽をさせてやれるかと
思っていたのに…。
この家が出来るんだって
そりゃ 喜んで…。
せめて この家で
何日かは暮らさせてやりたかった。
希望…。
今日 母さんと初ちゃんが
帰られてから
急に思い出したように 「この家の
台所の電球が切れてるから
ちょっと 買いに行ってくる」って
言うんです。
「台所は 私のお城で
一番 大事な所だ」って…。
それで 圭を連れて…。
どうして
私が行ってやらなかったのかと
それが悔やまれて…。
希望ちゃん…。
百合の事を考えて
いつまでも
あんな借家住まいじゃ
百合が かわいそうだと思って…。
それが…
それが… みんな 仇になって。
とんでもない!
この家を建ててくれて
一番 喜んだのは 百合なんですよ。
百合は
一番 幸せな時に 死んだんです。
そんな幸せを味わわせてくれて
ありがとうございました 母さん。
(襖が開く音)
あっ 圭…。
(圭)母さん おしっこ…。
あ~ いいよ。 おばあちゃんが
連れてってあげるからね。
母さん!
圭!
母さんは?
母さん おしっこ!
(初子)圭ちゃん 圭ちゃん!
母さん! 母さん!
♬~
母さん。
初ちゃん 悪いけどね
私の足袋 持ってきて。
あら ほら 襟が…。
あ~ ありがとう。 あと これ…。
(辰則)おはようございます。
ああ…。
(禎)母さん
一体 どういう事なの!?
お電話を頂いたんで
取る物も とりあえず…。
朝から騒がせて ごめんなさいね。
いえね 今日は
人が来るかもしれないし
今夜 お通夜なもんだからね
とりあえず 喪服だけ着替えに…。
本当に とんだ事で…。 なんと
お悔やみ申し上げていいか…。
明日は 告別式なんだけど まあ
いろいろ 後始末の事もあるしね
しばらく 私だけでも
向こう 行っててやろうと思って。
店の事 よろしくお願いしますね。
はい。
私も 告別式には伺うつもりですが
今日は 禎だけ…。
はい。
あ~ びっくりした!
夢中で 喪服 引っ張り出して
着たのはいいけど
子どもたちの朝御飯の支度
してやらなきゃいけないし
それで 私 何にも食べる暇
ないんだもの。
牛乳 すいません。
いえ すいません 何にもなくて…。
ちょっと 出かけるよ!
はい。
待って。 仁兄さんと道子さん
もう来るわ。
ここで落ち合って
一緒に行く事にしたから。
母さん 仁兄さんに 何にも
知らせてなかったんだって?
肝心の田倉の長男が
何にも知らないなんて!
あんた 仁に知らせたの?
いろいろ 打ち合わせ
しなきゃいけないし…。
(道子)遅くなりまして…。
子どもたち置いていくんで 後の事
人に頼んだりしてたもんですから。
(仁)母さんも
だいぶ もうろくしたよ。
禎の所へ知らせて
うちの事は 忘れてるんだから。
昨夜から どうなったかって
心配してた…。
本当に この度は 急な事で
ご心痛 お察し申し上げます。
あの 何にも お役に立てないかも
しれませんけど 何か お手伝い…。
挨拶なんかいい。
支度できてんなら 出かけよう。
お前と道子さん
行かなくていいよ。
大丈夫だよ。
店の事は 辰則がいるし
支店にも
それぞれ 責任者がいるんだ。
ホントに 留守の事は
頼んできましたから。
ちゃんと こうやって エプロンも…。
せっかくですけど
遠慮してもらいます!
母さん…。
仁 お前
百合の前に出られた義理か!
百合だって お前なんかに
参ってほしくないだろ!
(初子)母さん!
母さんだって 許してないよ!
お前 自分がした事を考えたら
私が言ってる事は 分かるだろ!
そんな昔の話…。
お前には
何でもない事かもしれないけど
百合は あれから
一度だって うちへ来なかった。
百合は
今でも 深い傷になってるんだよ。
道子さん せっかく来たのに
ごめんなさいね。
禎 その辺で タクシー拾っておくれ。
はい。
辰則さん 留守を頼みますね。
(辰則)はい 分かりました。
思わず 口にしてしまった
おしんの拒絶であった。
…が その言葉が
仁と道子夫婦にとって
どんなに重い意味を
持つ事になるのか
その時 おしんには
考えるゆとりもなかったのである。
≪耐熱コーティング終了。