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天国の禄兄ちゃん、初めて髪切ったよ 豊橋の6歳園児ヘアドネーション 

青ちゃん(右)の髪の毛を切る父の充弘さん=豊川市のアチーブ ヘア デザインで

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 豊橋市の農協職員小野田充弘さん(47)の次男で保育園児の青(あお)ちゃん(6つ)が、誕生日の二十四日、生まれて初めて髪を切った。小児がんを患い一歳二カ月で亡くなった兄禄(ろく)ちゃんの名前にちなみ、六歳になる日まで伸ばし続けてきた。切った髪は、病気と闘う子どもが着用するかつらにするため、実施団体の大阪市のNPO法人に寄付する予定だ。

 少し緊張した様子で、美容室「アチーブ ヘア デザイン」(豊川市)の鏡の前に座った青ちゃん。この日は、一緒に髪の毛を寄付しようと三年近く伸ばしてきた母千鶴さんや、いとこで小学五年の井上結さん(11)たちと来店した。美容師が髪をとかし、ゴムでいくつかの毛束に縛ると、家族が一人ずつ青ちゃんの髪にはさみを入れた。

 おしりの辺りまであった髪を切り終えると、およそ四十センチの長さの毛束が九つできた。青ちゃんは「頭が軽くなった。短い髪も良いね」と笑顔を見せた。

 小野田さんの家族が医療用かつらのために髪を寄付する「ヘアドネーション」を考えたのは、難病で亡くなった長男禄ちゃんの存在が大きかった。闘病中にかつらの着用を医師から勧められたことを思い出し、「全力で生きた禄と同じように、闘病中の子どもたちの励みになれば」(充弘さん)と髪を伸ばし寄付することに決めた。

髪の毛を切り終えて笑顔を見せる青ちゃん(左)と母千鶴さん(中)、いとこの井上さん=豊川市のアチーブ ヘア デザインで

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 自身も髪を切り終えた千鶴さんは「この髪が誰かのためになると思うとうれしいですね」、井上さんも「(髪が長い分)洗ったり、乾かしたりと大変だったけど、青ちゃんたちと一緒だったから頑張れた」とほほ笑んだ。

 一人分の医療用かつらを作るには青ちゃんたちの髪だけでは足りず、もっと多くの寄付が必要だという。充弘さんは「こうした取り組みを知ってもらうことで、ヘアドネーションをやってみようと思う人が少しでも増えてくれたら」と話した。

 (酒井博章)

 <ヘアドネーション> 人毛の寄付を募ってかつらを作り、無償で提供する活動。かつらは、小児がんの治療や外傷などで髪を失った子どもたちに届けられている。2009年に日本で初めて活動を始めたNPO法人「ジャパン・ヘアドネーション・アンド・チャリティー」(大阪市)をはじめ、実施団体は複数ある。団体により基準は多少異なるが、寄付するには長さ31センチ以上の髪が必要という。

 【土平編集委員のコメント】今日紹介したのは、愛知県全域を対象にした県内版の記事です。かつらを作るために髪の毛を寄付する「ヘアドネーション」は、各地の地方版で記事になっており、静かに広がっているとの印象を受けます。それでも、6歳児が生まれて初めて髪を切り、寄付したというケースは記憶にありません。母やいとこも一緒に切って寄付をしたことからも、小野田さん家族にとって、1歳2カ月で亡くなった禄ちゃんの存在が大きかったことが伝わってきました。「頭が軽くなった」と笑顔を見せた青ちゃん。天国にいるお兄ちゃんも、きっと笑っていることでしょう。

 

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