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神の創造し魔法世界

作者:グングニル

8/9
出会い

 アカリの住む部屋を今日中に決めるためにその資金集めをしなくてはならなかったカイキとアカリ。二人がギルド内にある依頼ボードで仕事を探していたその時、突然何者かが後ろの方から大きな声を出して二人に近づいてきた。


 「やっと見つけたー!!!」

 「セレナとガルトか」


 セレナとガルドはカイキと同じ年代のスターダストに所属している魔導士である。カイキとセレナとガルドはそれぞれ別々に活動しているが、顔を合わせると情報交換をする仲である。セレナはコミュニケーション能力の高い活発な女の子だ。超属性のエスパー魔法の使い手で、超能力を使って手を触れずに物体を動かしたり、浮かせたりすることができる。さらにサイコキネシスという特殊なエネルギーを使って痺れ効果のあるエネルギーで攻撃したり、半径10mの間で瞬間移動することもできる。主に遠距離攻撃での戦闘を得意としており、近距離での格闘による戦闘は苦手だ。スターダストでは特にパーティーは組んでおらず、かといってカイキのようにソロで活動しているわけでもない。セレナは仕事に行く際は必ずどこかのパーティーに加わっている。いわば助っ人専門の魔導士なのだ。スターダスト内に同年代の魔導士がカイキとガルドしかおらず、その二人が一匹狼を気取っているものだからやむなくそういうポジションに位置付けている。いずれかは同年代のパーティーを組むことを夢見ている。


 ガルドはカイキと同様にソロで活動している魔導士だ。魔刀と呼ばれる魔力が付与された刀を2本使って戦う。一本は火属性、もう一本は無属性の魔力が付与されており二つの属性を使い分けながら戦うことができる。ガルドもカイキと同様にとある事情を抱えており、それが理由でソロで活動している。パーティーに関して特に悲観的な感覚は持っておらず、むしろ組みたいとは思っているのだが過去のトラウマが原因でそれができずにいる。


 「ねえ、私たち二人と話がしたくってずっと探してたの。ちょっと場所変えて話さない?」


 セレナは三人を連れてスターダスト近くにある喫茶店へと連れて行った。セレナとガルドはカイキがアカリとパーティーを組んだことを受付嬢のクリナから聞いたようだ。ガルドは目的は分からないが、セレナはその話に一枚噛ませてもらおうと二人を探していた。カイキにとって今日は一秒でも無駄にはしたくなかったのだが、アカリは夢にまで見た同年代でお茶をすることにすっかり目を輝かせていた。もはや断る理由がなくなってしまったため、同席することになった。


 「もう、私が誘ったときは散々断ったくせに、突然連れてきた女の子とパーティーを組んだっていうからびっくりしたよ」

 「それに関しちゃ俺も悪いと思ってるよ。旅先でいろいろあってな」

 「この際詳しいことは聞かないであげる。その代わり、私もパーティーに入れなさいよ」


 セレナはずっと同年代とのパーティーを組むことを夢見ていた。しかし先ほども述べたとおり、スターダストにいる同年代はカイキとガルドの二人しかおらず、その二人はソロで活動していたためにその夢は叶わずにいた。そんな時にカイキとアカリがパーティーを組んだと聞けばそれに乗らない手はなかった。さらにアカリはセレナと同じ女の子だ。セレナにとってこれ以上に嬉しいことはなかった。それはアカリも同じようだった。


 「もちろん大歓迎だよ。私もパーティーに女の子を入れたいと思っていたところだし。いいよね、カイキ」


 もちろん断る理由はない。セレナは戦力としては十分だし、超属性の魔法は戦闘以外でもいろいろな場面でも役に立つことができる。それに何よりアカリとすぐに意気投合できそうなところが大きい。パーティーで戦闘を行う上で最も重要なことはメンバー同士の信頼関係だからだ。背中を任せて戦える仲間ほど頼もしい存在はいない。


 「ああ、もちろん」

 「やったー。これからよろしくね、セレナちゃん!」

 「こちらこそよろしくね」


 これで無事に新しいパーティーメンバーを迎えることができたのだが、カイキは先ほどかずっとこちらをニヤニヤしながら見てくるガルドのことが気になって仕方がなかった。そのにやけ顔が何を意味しているのかは分からなかったが、カイキにとって害のあるものだとははっきりと分かった。セレナが無事にパーティーに参加したのを見届けたガルドはとある新聞を取り出した。


 「まさかお前がこんなことやってたとはねー」


 ガルドから手渡されていた新聞にはカイキの写真が大きく写し出されており、その見出しには目立つような字で『まさかの番狂わせ!オーガルト王国 マジックトーナメント優勝者カイキ!』と書いてあった。カイキはあまりの驚きに言葉が出なかった。王国開催のトーナメントとはいえ町内の祭りのような感覚だと思っていたが、まさか全国に発信するマスメディアがいたなんてさすがに予想できなかった。


 「は!?嘘だろ、あの低レベルな大会でここまで目立たされるの!?」

 「ギルド内じゃこの話題で持ちきりだよ。あの目立つことが嫌いなカイキが珍しいって」

 「まじかよ・・・こんな注目度なら参加なんてしなかったのに」


 カイキはテーブルに顔を埋めていた。あまりの恥ずかしさにしばらく顔を上げられそうにもなかった。アカリの魔導士登録時に受付嬢のクリナが言ってたのはこのことだったのかとカイキは思い出していた。人の気も知らずにアカリとセレナは思いっきり笑っているし、ガルドは未だにニヤニヤが止まらない。パーティー結成した直後ではあったが、カイキはパーティー抜けようかなとうっすらと考えていた。


 「お前、まさかこれをからかうためだけに同席したのか?」

 「まさか。俺の本題はお前たちにちょっと頼みがあったからなんだ」


 カイキとセレナは自分の耳を疑った。これまでどんなこととも自分一人でやり遂げようとし、人に頼ることを嫌っていたガルドがこうして正面から頼みごとをしてくるなんて誰も思ってもいなかった。もはやガルドのこの行為は自らのプライドを捨てるようなもの。そこまでして三人に頼みごとをするのは、何かしらの覚悟があってのことだと感じたカイキだった。

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