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神の創造し魔法世界

作者:グングニル

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パーティー結成

 王女であるアカリの家出に肩を持つことになったカイキ。最初は追い返すつもりだったのだが、アカリの覚悟と強さを目の当たりしたカイキは逆に断れない状況に追い込まれてしまった。そして今、カイキとアカリは王国を出て次の街へと続く森の中を進んでいた。


 「これから帰るところって、カイキが所属している”スターダスト”っていうギルドがある街なんだよね」


 ギルドとは通称魔導士ギルドと呼ばれ、名前の通り多くの魔導士が勤める会社のようなところだ。長い歴史を見ても、この世界での問題事は大抵魔法で解決してきた。それを商売として利用とし、設立されたのが魔導士ギルドである。民間人から上級貴族まで様々な身分から寄せられた依頼を魔法で解決することが主な活動内容だ。落とし物の捜索や店の手伝いといった簡単なものから、貴族の護衛や魔物・盗賊の討伐といった魔法を使った戦闘に関するものまで多種多様な依頼が毎日のようにギルドに寄せられる。ギルドに所属する魔導士たちは様々な依頼の中から自分が好きな依頼、自分のレベルに合った依頼を好きに選ぶことが出来、依頼を達成することができればその仕事に見合った報酬を受け取ることができる。


 好きな時に仕事ができ、自分の好みの仕事を選ぶことができる魔導士ギルド。一見誰もが望む天職のような職場のように見えるが、実はそう思っているのはギルドに所属している魔導士ぐらいで外部の人間からしてみればあまりいい印象は持ちにくい。先ほどカイキが言っていたように、ギルドの仕事先で起こった出来事は全て自己責任になる。怪我や病気はもちろんのこと、仕事先で死亡した際にも遺族に対して一切保険は下りない。その為ギルドに所属している魔導士は外部から見れば”命の重さを知らないいかれた連中”と見られることも珍しくはない。それでもギルドに所属している魔導士たちは、それぞれ目的は違えど誰もが誇りを持って活動している。


 「ところでずっと気になっていたんだけど、カイキっていつも一人で行動してるの?」

 「まあね」

 「素人の私が聞くのもアレなんだけど、それって危なくないの?いざとなった時にそれって不便じゃない?」


 アカリの疑問はもっともだった。ギルドに所属する戦闘職専門の魔導士のほとんどはパーティーという二人以上のグループを組んで依頼に臨んでいる。どんなにベテランの魔導士でも必ず一つや二つの欠点は必ず持ち合わせている。その欠点一つで直接死に繋がることも当然起こりえる。だからその欠点を補うために複数の人数でパーティーを組む必要があるのだ。それでも、カイキを含めソロで仕事に挑む魔導士がいることも確かである。その理由として、一匹狼気取りだったり仲間=弱いという決めつけなどが例に挙げられる。


 ではカイキもそれが理由でソロで活動しているのかというと、そうではない。むしろパーティーについて強い憧れをもっている。それでもパーティーを組むことができない理由は、カイキの使う魔法にある。カイキの使う風魔法は、他の魔導士が使う風魔法とは異なりかなり特殊な魔法である。そして、とある規則でカイキが使う特殊な風魔法の正体を他人に知られるわけにはいかず、その為やむを得ずパーティー組むことができずにいるのだ。そんな理由をアカリに正直に言えるはずもなく、信じてついてきてくれたアカリには申し訳ないが別の理由でごまかすことにした。


 「単純にコミュニケーション能力が下手ってだけだよ。俺だって好きで一人で行動しているわけじゃない」

 「そっか、カイキって友達いないんだ」


 アカリのまさかの一言にカイキは思わず足を止めた。確かにカイキ自身が遠回しにそう言ったのだが、まさかこうも土足で踏み込んでくるとは思わなかった。アカリも悪気はないようだが、ここまでデリカシーがないのは王族として大丈夫かと改めて心配になった。しかし事実であるため言い返すこともできず、どう反撃しようかと言葉を選んでいるとアカリが振り返ってとある提案をしてきた。


 「じゃあ、私とパーティーを組まない?」


 カイキのパーティーを組まない理由付けが裏目に出た。思えばアカリはカイキについてくるために王国を出た。ならばカイキとともに行動をしたがっているアカリにとって、先ほどの質問は当然と言えば当然だった。そんな質問に対するカイキの答えは、アカリの意欲をさらに駆り立ててしまった。カイキは頭を悩ませた。今更、友達がいないカイキに手を差し伸ばしてくれているアカリにまた別の理由をつけてごまかすことは心苦しいし、ついていくことを承諾した責任としてアカリを単独行動させるわけにもいかない。少し悩んだ結果、カイキはある決断をした。


 「分かった、パーティーを組もう。その代わり頼みがある」

 「頼み?」

 「戦闘を行う場合、お前が前衛で俺が後衛で戦わせてくれ」


 パーティーを組んで戦闘を行う場合、最も重要になってくるのはパーティーメンバーそれぞれの役割を明確にすることだ。基本的に前衛が近距離攻撃で戦闘の舵を切り、後衛が遠距離攻撃を用いて前衛の援護を行う。カイキとしては本来は自由に動ける前衛をやりたかったが、特殊な風魔法を何度も使えない以上やむを得なかった。


 「私が前衛でいいの?」

 「ああ。それがパーティーを組む条件だ」

 「うん、分かった。よろしくね!」


 アカリは王国で戦術を習っていたということもあって、パーティーでの役割についてはよく知っているようだった。そのうえで、前衛を避けているカイキの消極的な態度にいくつかの疑問を持ちながらも、そこはさすがに何かしらの事情があると勘づいたのか理由を聞こうとはしてこなかった。これにて、互いにややぎこちないところがあるものの、パーティーが結成された。


 それからしばらく歩き、森を抜けると大きな街に出た。その街にある駅から列車に乗り込み、カイキのホームがある街”サカイヤ”へ向かった。アカリはそこで始まる新しい生活に心を躍らせて、そしてカイキは初めて組んだパーティーに不安と期待を同時に抱えながら流れる列車の景色を眺めていた。そして約一時間後、列車はサカイヤの街に到着した。二人は駅を出ると早速魔導士ギルドスターダストへと向かった。アカリは王国とは違った街並みに、まるでおもちゃ屋に入った子供のようにキョロキョロとあたりを見渡しながら歩いていた。アカリにとってこの街で見るものはすべてが珍しく、新鮮なものだった。


 そしてしばらく歩いて、ギルドを目の当たりにしたアカリはさらに目を輝かせた。そんなアカリに対し、カイキはアカリの方を振り返った。


 「ようこそ、魔導士ギルドスターダストへ」

これから新たなキャラクターが出てくる予定です。 お楽しみに

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