作者:グングニル
冒険ファンタジー小説を書きたくて投稿しました。どうか末永くよろしくお願いします
ここは魔法が存在する世界。この世界は6体の神々によって創造されたといわれている。その世界で誕生した人類は神々に与えられた魔法とともに世代を受け継ぎながら共に成長をしている。最初は単なる生活の一部を支えるだけ存在だったが、人類とともに進化を続けてきた魔法は人類にとっていつしか欠かせないものへとなっていった。時代によっては戦争道具に使われるなど歴史の中でいくつかの失敗はあったものの、その失敗を糧にしながら現在では平和へ導く象徴として人類を支えている。
魔法世界が創造されて1500年。原初から更なる発展を遂げた魔法世界に平和な時代が流れる中、とある山奥にある小さな村にある怪奇現象が起こった。何の前触れもなく突然村が暗闇に覆われ、暗闇が消えたのと同時に約40名の村人が1人残らず消えてしまった。普通なら歴史に残るほどの大事件になるはずだったのだが、山奥にある村であったためかその村の存在を知る者は少なく、あまり大きな騒ぎにはならなかった。一応国家機関によって調査はされたが、原因が分からず結局単なる魔力による自然災害として処理されてしまった。その為、この事件を知るのは、その森周辺に住むごく一部の町の人と国家機関の人間だけだった。それから年月が経つと徐々にその事件を知る人々の記憶からも忘れ去られ、10年後にはその事件を覚えている人間は片手で数えれば足りるほどになってしまった。
そんな村の喪失から20年。とある王国にカイキという魔導士が旅の途中に立ち寄っていた。カイキは王国にただ一泊するだけに立ち寄ったつもりだったのだが、少々厄介なことに巻き込まれそうになっていた。
「さあさあ、魔導士最強を決めるバトルトーナメントに参加する魔導士はいないか?参加は自由。腕に覚えのある魔導士はどんどん参加してよー」
この国ではバトル観戦好きの国王によって月に1回バトルトーナメントが開催される。明日はちょうどその開催日らしく、王国の衛兵らしき人物が参加者を募っていた。魔導士と見抜かれた会期も当然参加を促されたのだが、カイキはそういう催しにはあまり興味がなく当然断るつもりだった。しかし、どうやら今回は参加者が思ったよりも集まっていないようで衛兵が土下座までして参加してほしいと頼んできた。あまりの必死さに、もしかしたら参加者を集められなかったらそれ相応の罰が下るんじゃないかと感づいたカイキは、優勝すれば賞金も出るということだし、やむなく参加することにした。衛兵は泣きながらカイキの手を取り、心からの感謝を表した。カイキは王国のブラックな一面を見てしまったような気がした。
明日のことを考えると憂鬱な気分になったカイキだったが、大会参加者には前日の宿泊に豪華な宿が用意されており、カイキの機嫌は少し良くなった。しかし、豪華な宿で一夜を過ごした翌日、カイキのテンションは再びどん底に落ちることになる。
翌日になり、トーナメント参加者は町の中央にあるコロシアムの控室に集められた。今回参加するのは全員で8人。やはりカイキが入ってギリギリ大会が開催できる人数しか集まっていなかったようだ。周りを見渡すといかにもマッチョな力自慢ばかりしかいなかった。少なくとも魔導士同士の戦いができるとそこだけは期待していたカイキにとって、この光景はいろんな意味で地獄で場違い感が半端なかった。カイキが後で国の兵士に聞いた話だが、今回の大会に参加したカイキ以外の7名はこの国に住む力自慢ばかりで毎回彼らの独壇場になるため、最近外からの参加者の集まりが悪くなってきているという。
おそらく彼らは魔法は使わない近距離専門の格闘家なのだろう。魔導士と格闘家や近距離武器を使う魔導士のような近距離専門が戦う場合、どちらが有利と聞かれると多くの人は魔導士と答えがちだが実際にはどちらともいえない。単純な話、お互いの距離が遠ければ魔導士が有利で距離が近ければ近距離専門が有利ということになる。人が生活レベルで魔法を使えるようになるのはそれほど難しくはないのだが、戦い専門の魔導士となれば話は変わる。攻撃魔法を使えるようになるには、体内にある魔力を高めなくてはならないのだが思うように魔力を操られるようになるためには最低でも2~3年はかかる。その修業期間はどうしても肉体の修業はおろそかになりがちで、魔導士の多くは近距離の戦法がどうしても苦手になりがちになる。どれだけ強力な魔法が使えても相手に間を詰められた瞬間に何もできなくなってしまうケースも決して珍しくない。
この大会の国外からの参加者はおそらくほとんどが魔導士。近距離専門の国内の参加者にとって国外からの参加者はまさにカモである。そりゃ参加者も段々と減っていくはずだ。何せこの大会の常連組全員が、対魔導士専門の連中なのだから。しかし、カイキにとってその情報は悲報ではなく、むしろ朗報だった。
この大会の裏事情をいろいろと聞いているうちに、いつの間にか時間が過ぎ、大会開催を告げる花火が打ち上げられた。それと同時に会場からは大きな歓声が聞こえてきた。あまり目立つことが好きじゃないカイキにとってこの歓声の凄さは、あまりいい気分ではなかったが、やるからには優勝を目指すと決めていた。歓声がやむと次は国王とカイキと同じ年頃の王女が登場し、再び大きな歓声に会場が包まれた。国王はよほどこの大会が楽しみだったのか満面の笑顔で歓声に応えていたが、王女の方はどことなく作り笑いが見て取れる。毎回マッチョな戦いばかり見せられてはつまんなくもなるだろうから無理もない。その後国王からのスピーチが行われたが、あまりにも長かったため、つまらなかったということ以外はカイキの記憶には残らなかった。
国王のスピーチがようやく終わり、いよいよトーナメント一回戦が始まる。カイキは第一試合出場で対戦相手は前回の優勝者らしい。これは間違いなく、前回の優勝者を上位に行かせるための踏み台として利用されたようだ。前回の優勝者が勝ち上がった方が大会としては盛り上がるのは分かるが、それを外からの参加者で利用しようとするなんて、そりゃ参加者の数もどんどん減っていくはずだった。しかしカイキに焦りの色は見えなかった。むしろ余裕そうな表情をしていると、対戦相手の大男の方からカイキに近づいてきた。
「随分と余裕そうだな、せいぜい頑張ってくれよ。じゃないと圧勝したって観客は盛り上がらないからな」
明らかな上から目線でカイキに圧をかけてきた。どうやらその男も主催者側の狙いが分かっているらしく、初戦は勝ち確定と確信し完全に油断している。その挑発が更にカイキの闘志をたぎらせた。負け=死という構図が当たり前のこの世界。今回の勝負が命を懸けたものではないにしても、カイキ自身が掲げた野望のためにも負けることは決してあってはならないのだ。だがそれ以上に、運営の思い通りになってたまるかというカイキの闘争心の方が明らかに勝っていた。
そして数分後、ようやくトーナメント第一回戦が始まった。
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