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【社説】

メルケル氏後継 寛容と協調守る候補を

 ドイツのメルケル首相の後継候補が白紙となり、選び直しになった。米英が孤立主義に走る今だからこそ、ドイツには、寛容と協調主義で、欧州をまとめていけるリーダーが必要だ。

 発端は、ドイツ東部テューリンゲン州の州首相選びだった。昨年十月の州議会選で過半数獲得政党がなく混乱していたが、メルケル首相与党の保守、キリスト教民主同盟(CDU)が、排外右派政党、ドイツのための選択肢(AfD)とともに推した候補が選ばれた。

 AfDは幹部らがナチスの犯罪を矮小(わいしょう)化するなど極右色が強く、既成政党は距離を置いてきた。今回、州レベルとはいえ、AfD支持による指導者誕生に「(ヒトラー登場を許した)ワイマール共和国の再来か」との警戒感が強まり、新州首相は辞任を表明した。

 共闘したCDUへの批判も高まり、メルケル氏後継の女性党首クランプカレンバウアー氏は年内で党首を辞任し、来年秋の総選挙で首相候補となることを断念した。

 同氏は二〇一八年十二月の党首選で選ばれメルケル氏後継となっていた。メルケル氏は首相も今期限りでの引退を表明している。

 後継候補にはメルケル氏に近いリベラル系、強硬な保守系などが挙がるが、いずれも男性だ。

 ドイツでは現在、CDUなど保守と、中道左派の社会民主党の二大勢力が大連立を組むが、いずれも退潮が目立つ。

 メルケル氏の寛容な難民政策への反発も根強く、排外主義が台頭。AfDは連邦議会(下院)第三党へと躍進している。

 今月十九日にも西部ヘッセン州のバーが銃撃され、移民系住民ら九人が死亡したばかり。人種差別的な動機とみられている。

 目を外に向ければ、トランプ米大統領は米国第一主義を進め外交でも暴走、欧州連合(EU)を離脱した英国は早くも、移民選別制度導入を決めた。

 EU内部でも、強権姿勢を強める東欧諸国と、ドイツなどとのあつれきは強まっている。

 試練にさらされてはいるが、自由、寛容、協調主義はドイツとEUを支えてきた根本理念だ。メルケル氏後継選びでは、これらの価値観を引き続き守るリーダーかを見極めてほしい。

 極右色が強いAfDが、政治的実権を握ったらどんな政策を実施するかは、未知数だ。既成政党の数合わせのため、安易に手を組むべきではない。

 

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