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【社説】

テレワーク 「肺炎」にも活用したい

 新型肺炎の拡大に伴いテレワークを導入する企業が増えている。時差出勤との組み合わせで感染防止策として期待できる。ただ労働時間の管理など課題も多く、制度への理解を深める必要もある。

 会社に出勤せず主に自宅で仕事をこなすテレワークは、一九七〇年代に米国で始まった。現在ではパソコンを中心とした情報通信技術の急速な発展により、働き方を変える手段として大きな注目を集めている。

 テレワークは子育てとの両立や居住地に左右されない、通勤時間を削減できるといった利点がある。無駄な人間関係をめぐる摩擦も減り、ストレス軽減につながるとの指摘もある。一方、会社にとってもオフィスの規模縮小による賃貸料カットなど、コストを抑制する効果が期待できる。

 新型肺炎対策にあたる厚生労働省はすでに経団連や日本商工会議所に活用を要請した。NTTグループなど複数の大手企業が導入し、中小にも広がりつつある。各経営者が一石二鳥型の有効策として導入したことは十分理解できる。さらに農林水産省など官公庁も前向きな姿勢だ。元々、東京五輪時の出勤対策として検討されてきたが、新型肺炎を念頭に官民が機敏に対応した形といえる。

 対面での仕事をせざるを得ない職種など活用できないケースもあるが、今後、導入可能な企業は活用を進めてもいいのではないか。

 ただテレワークには課題もあることを指摘しておきたい。導入した場合、労働時間の管理が極めて難しい。管理業務を行う上司がそばにいないためだ。

 労働時間が確定できないと賃金に影響する。従業員が会社や上司に気を使って働いた時間を少なく申告する姿は想像に難くない。とりわけ立場の弱い非正規労働者でこうしたケースがひんぱんに起きる恐れはあるだろう。

 導入前に会社側が正規、非正規を問わず公平なルールを決め、従業員も納得した上で実施に踏み切るべきだ。

 過度なテレワークが働く仲間同士の関係を希薄にして生産性を落とす可能性も考えられる。仕事上の相談などはなるべく対面が好ましい。顔を合わせる時間を一定程度設けるといった工夫も必要だろう。

 さらに新型肺炎終息後、導入で何が起きたかを検証することも大切だ。国の法整備と併せて、各企業や官公庁には積極的な情報開示を求めたい。

 

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