銚子電鉄の電車内で猫と触れ合うイベントとして専門学校生が企画し、学校側が主催する形で5日に実施が予定されていた「ぬくねこ電車」。ところが「猫の負担」などを巡って会員制交流サイト(SNS)で批判が噴出。主催者側と同電鉄が協議した結果、代替イベントとして駅周辺の散策やしょうゆ工場見学を楽しむ「はじめての銚子電鉄~写真におさめる銚子旅~」を開催する形となった。インターネット上で議論を巻き起こしたこのイベントについて、改めて見直したい。(銚子海匝支局長・田村理)
同電鉄によると、「ぬくねこ電車」に代わり開催された「はじめての銚子電鉄」では、外川駅や犬吠駅の周辺を散策したほか、市内のしょうゆ工場を見学。停車中の電車内でキャベツを使った鍋が提供されたという。
ぬくねこ電車のイベントが発表された際、SNSでは「猫の負担」を懸念するような声も多く集まった。実は、猫の負担を考慮し主催者側も一定の対策を予定していたとみられる。
当初、学生は「BGMを使って電車の音に関する負担を少なくしたい」といった方針を説明。学校側も「協力予定の猫カフェに(音や振動の)大丈夫な猫をお願いしていた」としていた。
◆批判噴出
イベントは茨城県の第一種動物取扱業者(展示・販売業)である猫カフェが協力予定だった。ネット上では、業者が登録していないとされる「貸出し」を行うなどして動物愛護管理法に抵触するのではないかといった疑惑も指摘された。
猫カフェの所在地を管轄する茨城県動物指導センターの担当者は「事業者による立ち会いの下、24時間以内に触れ合いを行う予定だったと聞いている。茨城県外であっても当該事業者は『展示』が可能で、銚子電鉄のイベントとして開催自体に法律の違反はないものと考える」との見方を示した。
一方、主催者側がイベントを告知する際、業者の登録番号などを示さなかったとして、動物取扱業実施の「広告」の規制を守っていないとする批判もあった。同センターは「一般論として仮に展示イベントが実際に行われた場合、広告の不備があれば問題になる」とした上で「個別事案については答えられない」とした。
◆支援表明の声
銚子電鉄は猫を使ったイベントの中止をネット上で告知。この際、「動物のストレスに思いが至らず、取り扱いに関する専門知識がないまま、安易に話を進めてしまった」といった謝罪文を掲載した。同電鉄によると、対応を支持する愛猫家により、厳しい経営が続く同電鉄への支援を表明する書き込みも確認されたという。
主催者側も特設サイトで「企画内容が一部変更になる」などとして来場予定者に謝罪する「イベント内容変更のお知らせとお詫(わ)び」を掲載した。
◆配慮に限界
猫が列車に乗車するイベントはこれまでも、三陸鉄道など国内の複数の路線で実施されている。ただ、たとえ法的に問題のないイベントだとしても、猫などの動物を活用した場合、対策を講じても「負担」を完全になくすことは難しい。学生のアイデアを生かした企画が結果として波紋を呼んだ今回の騒動は、動物を使ったイベントの難しさを浮き彫りにした。
【ぬくねこ電車】専門学校「日本工学院」の学生が企画し、同校ミュージックカレッジが主催予定だったイベント。電車内で鍋を提供し、自由時間をはさんで猫との触れ合いを計画していた。猫の負担を懸念する声が高まるなど批判が集まった一方、批判者に対する反発も広がり、インターネットで議論を巻き起こした。