• 議事録

第142回J.I.フォーラム 『敵を知り己を知れば百戦危うからず』  2009/05/28(木)開催
ゲスト 安里繁信(社団法人日本青年会議所第58代会頭)
橘田佳音利(株式会社フラジュテリー代表取締役)
菅原智美(株式会社NATULUCK代表取締役)
出張勝也(株式会社オデッセイコミュニケションズ代表取締役社長)
深田稔(深中メッキ株式会社代表取締役)
水澤佳寿子(株式会社Fantasia Entertainment代表取締役社長)

第142回 J.C・J.I.フォーラム 2009.5.28
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」JCの全国ネットワークを活用して、「経済危機」の本当の姿を知る。そしてその乗り越え方を大いに語ろう。

西田  
みなさまこんばんは 構想日本の西田でございます。JC・JIフォーラムをはじめたいと思います 第142回 「敵を知り己を知れば百戦危うからずや」ということでJC・JIフォーラムいよいよスタートいたします。今日は、日本青年会議所のアンケート発表をさせていただきます。その後、今日の素晴らしいゲストのディスカッションで経営者が具体的にどういうことを思いどういう工夫をしてがんばっているのか、後半に楽しめます。まずは日本青年会議所のアンケート等を含めまして、早山さまからご挨拶とご説明がありますので、では、早山様に任せますので宜しくお願いします。

JC早山  
みなさん、こんばんは。社団法人日本青年会議所 政策発信会議議長の早山と申します。加藤代表が30分ほど遅刻ということで、パネルディスカッション前にですね、少しお時間をいただきまして、今の経済危機の現状、そういったもののご説明をさせていただきたいと思います。まずJIフォーラムということで、構想日本さんにはわれわれ社団法人日本青年会議所の政策アドバイザーとして常日頃からいろいろなご助言をいただいておるというそんな仲でございます。年に一度くらいJI・JCフォーラムという形で、JIフォーラムの中のパネルディスカッションに近年参加させて頂いております。今日は「敵を知り己を知れば百戦危うからずや」ということで、この敵とはもちろん経済危機ということです。われわれは全国に4万名会員がおりまして、緊急アンケートをとりまして経済危機の実態というのが中小企業の経営にとってどんな影響があるのかと問いましたので、ぜひ皆様にご静聴いただければと思います。初めて青年会議所という名前をお聞きの方もいらっしゃると思いますので、青年会議所という団体はどんな団体なのかというご説明、そしてその後に今回多岐に渡るアンケートを会員に向けて取りましたのでその結果を皆様にお知らせをしたいと思います。またその後のパネルディスカッションも含めまして長丁場になると思いますが、ぜひ最後までお付き合いを宜しくお願いいたします。それでは発表の方、清水委員長宜しくお願いします。
 
JC清水  
失礼致します。青年会議所の広報を担当させていただいております清水と申します。宜しくお願いいたします。青年会議所はということで少しお話をさせていただきたいと思います。青年会議所以外の方につきましてはこういった資料を用意させていただいております。JCの歩みという資料がございますが、そちらの方をご覧いただきたいと思います。映像のほうでも同じものをながしておりますので、ぜひご参照して頂ければなと思います。まず、青年会議所でございますが、1915年にアメリカのセントルイスで設立されました。日本では1949年に東京青年会議所ということで、日本で始めて産声をあげたということです。1951年に日本青年会議所ということで、東京青年会議所とは別に、日本全国の青年会議所を組織的に運営しようということで日本青年会議所が設立をされて現在に至っております。東京JCができてから60年、日本JCができてから58年目ということでございます。続いて次のページでございますが、今現在全世界に122カ国に青年会議所がございます。次の3ページ目でございますが日本国内では10地区47ブロック709の地区で約4万人いるということでございますが、日本を10個の地区に上から分けているということです。北海道、東北、一番南は沖縄ということでございますが、10地区に分けて、47都道府県に分けて、さらに各地区に分けて709箇所青年会議所があるということでございます。青年会議所は上の目的ということで、明るい社会の実現ということを理想とした団体でございます。国内の青年会議所のOBということで非常に有名な方々を輩出しております。昨日も党首討論会がございましたが、麻生自民党総裁、民主党の代表であります鳩山代表、小泉元総理、中曽根元総理など非常に有名な方々を輩出させていただいております。経済界におきましても元経済同友会幹事であります、ウシオ電機会長の牛尾治朗さんも輩出させていただいております。世界各国においても様々な方々を輩出させていただいております。例えば、ジョンFケネディ元大統領、ビルクリントン元大統領、フランスのシラク大統領、マイクロソフト創業者のビルゲイツ氏などです。今回、JIフォーラムに先立ちまして、JCの方でアンケートを取らせていただきました。アンケートのシステムを少々申し上げますが、これはJCの中でアンケートを行うというシステムでして、現在約2万名、青年会議所のメンバーは4万人いるのですが、その内2万名の会員の登録がありまして そのメンバーの携帯やPCにアンケートを送信することで瞬時に回答を得ることができるというシステムでございます。過去のアンケートとしましては、 北朝鮮のミサイルの発射というのが数ヶ月ほど前にあったと思うのですが、「ミサイルの発射によって仮にあなたが被害を受けたら、あなたは国に何を望みますか」というものや、「マスコミの世論調査をあなたは信用していますか」であったり、高速道路の建設、「その地域に高速道路はいるのか」など、そういうアンケートを通じて世論喚起につなげていきたいと思っております。以上でございます。
 
JC藤井  
続いてアンケートの結果について青年会議所、藤井が発表させていただきます。今回このフォーラムを開催するに際し、緊急のJCCSアンケートを実施しました。実施期間は5/23から昨日5/27までで、約3千名の回答を得ることができました。お手元の資料に沿ってご説明させていただきたいと思います。まず一つ目の設問、「あなたが勤務する企業の業種を教えてください」ということで、企業分布についてですがサービス業、建設業が非常に多く、二つあわせると約半数の54%を占める分布です。二つ目、あなたが勤務する企業の常時雇用する社員数について伺いました。こちらは21名から50名、そこから下の部分が82%、約8割が従業員数50名以下の企業さんであるということでございます。続きまして3つめ、勤務する企業の資本金について。資本金が2千万円未満が71%おりまして、5千万円未満まで含めますと87%。いわゆる中小零細企業が87%であるという結果を得ました。設問4つめ。今回回答していただいた企業の景気・業績状況について。こちらは54%の方々が「緩やかに悪化している」もしくは「著しく悪化している」と過半数が回答しました。過去5年間の業績が悪化しているという結果が得られました。設問5でございますが、取引金融機関との関係はどうなっていますかという設問ですが、大方の方は特に変化はないとのことですが、17%の方々は「金融機関との取引が悪化している」「微妙に悪化し始めている」との回答です。6番目の設問ですが、取引先の金融機関に期待すること、こちらは「建設的な経営相談」「審査の緩和」ですね。これは保障だとか担保だとかそういったものの審査を緩和してほしいというものです。こちらが半数以上の56%を占める状況になっています。設問7ですが、企業経営において政治に求めるものは何ですかということですが、こちらは税制支援をお願いしたいという回答がありまして、続いて、税金の無駄遣いの洗い流し、こちらが突出して多いという結果を得ました。そして最後の設問ですが、今の政治に満足しているかというものですが残念ながらほとんどの方々が「満足していない」という回答でした。今日はこちらのアンケートに基づいてフォーラムが進められますので、こちらを考慮に入れていただいてこの後お付き合いいただきたいと思います。以上でございます。
 
西田  
ではパネルディスカッションの前にゲストの方々の自己紹介を承りたいと思いますので50音順でお願いいたします。よろしいでしょうか、安里さんの方から。
 
安里  
只今ご紹介に預かりました、社団法人日本青年会議所第58代会頭を務めております 沖縄出身の安里繁信と申します。私の経営者の特技と申しますと、企業の再生であります。これまで中小零細企業の、実績ベースで言いますと約30社近くの再生をして今日まで生業を立てて参りました。元はトラックの運転手からはじめまして、その泥臭い職業の中から如何に生きた会社を作っていくか、「魚は必ず頭から腐るぞ、理屈から入るな」そんな自分なりの経営哲学を持ってひとつひとつ形作って今日までやってまいりました。今日は多くのパネラーの方々と経営ということに対して、どうやってこの不況を乗り越えるかと そんなテーマに対して議論を交わせることを大変楽しみにしております。限られた機会、時間でございますが、皆様どうぞ宜しくお願いいたします。
 
橘田  
皆様こんばんは。私、株式会社フラジュテリーの橘田佳音利と申します。女性に特化した人材雇用のコンサルティングの会社でございます。このフラジュテリーと舌を噛みそうな名前でございますが、英語の「fragrance・かぐわしい」とフランス語の「ビジュテリー・宝石」という言葉から作りました造語でございます。磨かれた玉のようなかぐわしい存在でありたいと、人材を送り出したいという意味であります。仕事は年齢ではありません、その人その人の経験・能力・前向きな努力であるはずです。ですが、どうしても年齢によって切られてしまう現状があります。そこのところをぜひ私どもがお手伝いしたいということで女性の再就職のお手伝いをしております。ここに参りまして一体どういう話ができるか疑問でありますが、わたくしどもの女性の再就職の分野で何かお話できましたらと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。
 
菅原  
こんばんは、ナチュラックの菅原と申します。今、女性経営者の支援と貸会議室の提供をやっております。女性経営者が活躍する世の中を作りたいということで事業をやっております。簡単に経歴をお話しますと、熊本出身、東京に何かビッグになりたいという気持ちで出て参りました。始め全日空エンタープライズに入社致しまして、その後リクルートと営業の経験を積みまして、途中14年前に携帯会社に入りまして、まだ携帯が普及する前にですね、リクルート営業マンもポケットベルを使っていた時代、わずか5名の会社に入りまして、そこから携帯が世の中に普及すると共に、会社の業績も毎年2倍2倍と売り上げを伸ばしていきまして、勤めて10年経った時に、会社が100人以上の、売り上げも40億を超える会社になりました。そこから、起業したいという思いから、辞職をしようとすると社長から「君がやめると言うなら、君が社長をやってくれ」と、ドコモショップを運営している会社だったのですけど、代表を3年務めて参りました。代表をしていた際、いろいろなセミナー・勉強会に参加した際、女性の経営者があまりにも少ないという現実を目の当たりにしまして、今日もほとんど男性の方ですね。世の中女性が半分いるのに女性の経営者があまりにも少ないと思いまして、もっと女性の経営者が増えれば日本はもっと良くなるのではないかという思いからナチュラックという会社を起業いたして今に至っております。携帯会社は創業社長に引き継ぎまして、私はやりたいことをやるとわがままを申しまして、今の会社が今年で2年目になります。宜しくお願い致します。
 
出張  
オデッセイコミュニケーションズの出張と申します。うちの会社はですね、マイクロソフトのパソコンの検定試験をやっております。97年からやっておりまして、累計で200万人の方に受けて頂いています。宣伝で恐縮ですが来週の月曜6/1の日経新聞に一面広告を出します。企業の方々に無料のキャンペーンを実施しますので、是非ご利用ください。北海道から沖縄まで資格試験を展開しております。新日本紀行と名付けて、北海道から九州まで色々と営業の旅に出ておりまして、自分で会社をやりだしまして色々と周り始めて、地方都市でお話を伺うと今過渡期に来ているんじゃないかなと思います。100年に一度の不況と言われていますが、僕は2007年まで続いた世界同時好況こそが100年に一度の好況。今の状況はそれと比較して不況なだけであって、100年に一度の不況という捉え方自体が間違っているんじゃないのかなという気がします。みなさん色々な考え方があると思うのですが、意見交換させて頂ければ有難いなと思います。宜しく願い致します。
 
深田  
東京の墨田区で電子部品のメッキをやっております、深中メッキ工業の深田と申します。今日は皆さんに元気を与えるために参りました。私がこの舞台にいる自体が場違いということで、それだけでもみなさんに元気を与えられるのではないかと思っています。プロフィールにも書かせていただきましたが、明治製菓という会社に入りましたが、家庭の事情で、今の従業員が13名の小さいメッキ工場を継ぐことになりました。能力のない人間はどうしたらいいかということを自分なりに昔から考えておりまして、能力のない人間は、人より考える・工夫する・そして諦めないということを心掛けて仕事をしております。その結果、世界で初めてリチウム電池の蓋のメッキの開発に成功しまして、コピー機のある部品に関しては世界100%のシェアを持っておりますし、それからオーディオビジュアルに関しましては、テレビのある部品では約4割のシェアを持っております。今日はその辺のお話もたくさんできたらなと思います。宜しくお願いします。

水澤  
ファンタジアエンターテイメントの水澤と申します。一番左側の方は沖縄からですけど、私は北海道から参りました。札幌青年会議所に以前おりまして、そのうち4年間は日本青年会議所にも出向という形でお世話になりました。青年会議所の活動に関しては良く存じているつもりです。もともと23歳の時に作った会社を2005年に売却をしました。株式を一括100%売却するという形で第三者にお譲りをした後、一年間地元のコンサドーレ札幌という現在J2のチームで、コンサドーレというチームも会社としては、創業10年累積赤字が23億円、債務超過が2億円、ここを何とか立て直してくれないかというオファーを受けまして、ちょうど一年、3月の株主総会から翌年の株主総会までお手伝いさせていただきました。そのときの成果としては経常利益を単年度で4千万出し、債務超過を2千万まで圧縮することができました。その時、スポーツというのは多くのチームが赤字を抱えていますけども、マネージメントをしっかりすれば何とか収益を出すことができるということを実感すると共に、それ以上にスポーツの持つ力というものに魅了されました。スポーツがあるということで街づくり・人づくりができるのだということに共感しまして、何とかスポーツを地域に根差したものにする方法はないかと考えていたところ、2007年から財団法人バスケット協会が実業団1部リーグをJリーグのようにプロ化するという動きがありました。北海道は神奈川県に次ぐバスケットボールの競技人口を持つところですが、実業団チームがなかったのですね。そこでまったくの新規からチームを立ち上げて、今2年目が終わったところでございます。まったくそのスポーツは企業がチームや選手を支えてきていたのですけど、私がチャレンジさせていただいたのは親企業を持たないベンチャーチームを作るということであります。種も無いところから種を作り、目を出させ、若葉を息吹かせるような形で、その一年後にはトップリーグに参戦するという無茶なことをやらせていただきました。ですから戦績は一年目最下位、二年目はブービーということでしたけども、観客動員は2年連続日本一です。スポーツを支えるという新しい動きを作るために今頑張っているところです。私の自己紹介は以上です。

加藤  
JCと構想日本が大体毎年一回位共催でこのフォーラムをしております。今、景気が非常に悪い。JCは、皆さんご承知の通り、全国に4万人の会員がいて、それぞれ事業をやっておられる。その人たちがボランティアで、それぞれ全国で活動しているわけですね。日本JCというのは、さらにそれと並行して、国レベルで提言をしている組織です。そのJCの全国ネットワークを活用して全国のメンバーに今の経済がどうなっているのか、企業経営がどういう状況なのかということについてアンケートで発表していただいたのが冒頭に発表していただいたそうです。
今日は安里さん以外に贅沢にも5人のゲストに来ていただきました。皆さんそれぞれいろんな分野で事業を、それを事業と一言で言っていいかどうか分かりませんけれど、やっておられる方々ですから、今こういう時にこそ何が必要で何をしなければいけないかということが調子の良い時よりもシャープに見えてくると思うのですね。ですから、皆さんの体験に基づいた、なるべく具体的なお話をしていただけますとありがたいです。学者とか評論家というのは、ここにいらしたら申し訳ないですけども、そこからエッセンスを出してくるから抽象的になってわかりにくいのですね。それからエッセンスを出してくるならまだいいのですけど、聞いただけをまとめた本当のエッセンスでないものをそれらしく出してきて、ますますわかりにくい。そういう人がテレビとかそういう場所で割合多いのですけども、今日はそういうことではなくて、まさに実体験に基づいた非常に具体的なお話を聞けるのだろうなあと思っています。会場にもJCの方、非常に大勢居ると思いますし、いろいろご意見頂くなり、或いは、やり取りをしながら進めていければなと思います。それでは宜しくお願い致します。
一通り自己紹介をして頂いたわけですけども、まずは安里さんトップバッターでどうですか?今日は日本JCの会頭というよりも、沖縄で色んな事業をやってこられた安里さんとして、もちろんそれをJCがやっていることやアピールしたいことと合わせる形で良いですけども、お願い致します。あと、私はあまりどうぞと言いませんけれども、どんどん話をしていただければと思います。

安里  
はい、ご指名ありがとうございます。まずはトップバッターということでわが国の中小零細企業の実態を述べさせていただきます。ちょうど3年前にアンケート取ったデータを見て愕然としたわけです。この国の中小零細企業の経営者が今、何に一番悩んでいるかと言いますと、全体の7割が後継者の問題で悩んでいるんですね。そのうちの2割が後継者が実際存在しないという、残り5割がですね、後継者らしい者はおるんだが、こいつに事業を任せて良いんだろうかという悩みです。それでなおかつ自分たちの事業の領域自体に発展性がないということで悩んでおられます。それに加えて経営者も70歳、80歳、そろそろ引退したい。けれども金融機関が個人補償抜いてくれない。それはもちろん経営責任ですから。そういう現実と未来との狭間でもがいているというのが中小企業の実態とわたしは受け止めているのですね。そういう実態を踏まえて、中小企業の経営者の育成、リーダーシップの育成をやっていこうというのがわれわれの団体ということなのですね。柔軟性が如何に必要であるか、自分に足りないものは何なのかなど、業界の理屈を超えた人間としての強さみたいなものをね、植えつけていく、自信を持たせていくかということを我々は常日頃させてもらっているのですよ。その中でそれぞれの業界・団体というのは自分の田んぼに水を引くというかそればっかり考えているのですよ。そうではなくて、我々は地域から恩恵を受けているのですよ。それを前提で入らなければ、その地域で商いをさせていただくには、その地域にできることを、やらなければいけないことを考えていこうということです。世の中の動きに関心を持っていこうということなのですよ。それに対して、それぞれできる範囲で、それぞれの歩幅でコミットしていこうじゃないかということをさせていただいている団体なのですよ。こういう受け皿団体というのは基本的に少なくてですね、それぞれが利己主義というか、それぞれでがんばっていきなさいと。もうコミュニティも全て崩壊している社会だから今一度企業文化とかコミュニティの大切さだとか、この経済危機に際して今一度考えてみることがいいと思います。今まで外需ということでね、それで今我々内需と言っても主体性を持っているかというところから踏み込んだ中で、今一度経済の理屈、その中で自分がかくあるべきか、わが社はどうあるべきかと今日は掘り下げて議論をさせていただければありがたいなと思います。


加藤  
有難うございます。私も非常に急いでこう泥縄的でありますが、後の五人の方がやっていることを、あるいはそれぞれおっしゃっているキーワード的なものをさっとだけ言わせていただきました。たぶん今安里さんがおっしゃったことと重なる部分がいっぱいあったなと思うのですが、まずは後継者という話が出たものですから、深田さんはそういう意味ではまさに後継者というか、そういうお立場で始めたということで、深田さん次にお願いします。

深田  
今、後継者はどうやって学ばねばならないかとか、どうあるべきかとお話があったのでちょうどお話したいと思います。墨田区はですね、プラザ合意の5年前位から工場数が激減し始めました。そのとき墨田区は何をやったかといいますと、大きな工場を全部外に出しちゃったんですね。つまりマンションとかいっぱい建ててある一定敷地の工場を区外に出してしまったのですが、結局どうなったかというと、墨田区というのはものづくりの街ですから、小さい工場・大きい工場がなくなると税収がどんどん減っていくんですね。最近は新タワーが云々であたらしいマンションが出来てきていますけど、それに気付いた墨田区は、では何で工場がどんどん減っていくのかと調べますと、実はそれはやはり後継者問題でした。会社が倒産してしまうとかそういう話ではなくて、会頭がおっしゃったように後継者がいないという理由でどんどん工場がなくなっていってしまうということでした。それで、後継者を育てるにはどうしたらいいかということで、墨田区は2002年から墨田区ビジネススクールを立ち上げまして、そのときの協議会というのを墨田区と我々民間が作りまして、会長を私がやらせていただきました。そのときの講師の選任に際し、東京JCの面々にご協力いただきまして、今全国的に行政のお手本となるビジネススクールを立ち上げました。その時に何に主眼を置いたかといいますと、行政の人は、区内の成功している社長の話を聞こうという、そういう会議を組んだのですが、例えば松下村塾は本当は半年くらいしか存在していなかった。また具体的な勉強はほとんど何もしていなかった。では何が良かったというと、非常に志の高い人間たちが議論をすることで、その結果明治維新の重要人物を輩出したということなんですね。やはり手法ではなくて意図なんですね。経営者になるためには何をすればいいかとうことで塾を進めたところ、例えば人通りの少ない通りで営業するガソリンスタンドの経営者が一年間墨田塾で学んだところ、「あそこのガソリンスタンドは営業マンを一人雇ったらしいよ。どんどん客を取られている」と言われたんですね。しかし実は違って、そこの専務が一生懸命営業してお客さんを獲得したということなんですね。ある板金屋さんは5年間続いた会社を止めようとかと思っていた時にフロンティア墨田塾に入って学んだ後、だんだん会社を修正して今は第二工場を墨田区で探しているということです。さらに、プラスチック成型の経営者はこのままではビジネスを中国に取られると、浅草に串焼き屋さんを作ってですね、これが串焼き屋の東京ランキングで1位になったということです。話すと一時間くらいになりますので、この辺でやめておきますが、後継者というのはこういうちょっとしたきっかけで、自分の足りないところを学べばどんどん上にいくというもので、墨田塾というのはそういうきっかけを与えるものであります。話が反れたかもしれませんが、そういうことをやっております。

加藤  
その場合の後継者というのは必ずしも自分の子供だけではなく、それは色々含めてということなんですね。今「意図」というのが、松下村塾の話でも出ましたけれども、橘田さん、「思い」が大事だと私はどこかで拝見したんですけど、そこは何か通じるところがありますか?

橘田  
そうですね。私の自己紹介でも述べさせていただきましたが、仕事は年齢ではない、その人その人の経験・能力と前向きな努力であると先程お話したのですが、どうも女性に関しては年齢らしいのです。改正雇用対策法では、年齢・性別を言ってはいけないということになっておりますが、現状は変わっていなく、どうも女性は年齢で切られてしまうのですね。ということで、私どもは地域にというよりも女性の転職・再就職支援を行っているのですけれども、その時に私どもの経験を「思い」として伝えるということは重要だなと思っております。私の経験はどういうものかと申しますと、私は29歳で別居、30歳で離婚したのですが、その時に息子が2人おりました。息子は2歳と0歳11ヶ月だったのですね。一応働いてはいたのですが、その時、女に不動産は貸せないと言われ差別を感じたのですね。長男が小学校1年生の時に、女性の担任の先生に母子家庭差別を受けました。母子家庭の子供は非行に走る、だから母子家庭は駄目なんだと。今じゃありえない話ですが、差別を受けました。その時から、働く女性はもっと認められるべきだという思いが募ってまいりました。私は一女性として、働く女性を応援していきたい、そういう気持ちが強くなりました。女性を応援すべく、人材ビジネスの業界で経験を積みたいと思うようになったのですね。私は、既に31歳の時に独立しており、40歳を過ぎて再び転職活動をした時、今度は年齢差別にあいました。履歴書に書いてある年齢で全て切られてしまっていたんですね。会ってもらうことが出来なければ、自分をアピールすることすら出来ない。それで、相当落ち込んだわけです。落ち込みから這い上がったとき、誰も女性をサポート・ケアして応援してくれないのなら、私がやろうという強い「思い」でこの仕事を始めました。「思い」が大事ということですが、はっきり言ってとっても辛い仕事です。何が辛いかというと、稼げない。私どもはパイオニアです、未だに唯一のパイオニアです。女性のケアをしている会社はございますが、年齢にとらわれず、特にミドルエイジをケアしている会社は唯一であります。ですから、「思い」がなければ、この商売、商売になっているかわからないですけれども、やっていけないなと思います。ただ、女性を輩出するにあたって、何が大切かということをたくさんの企業様に行って、本心を聞いてまいりました。その時にミドルエイジは使いづらいと言われ、ではそこをどうしたらいいかと考えました。これは男も女も老いも若きもみんな一緒なんですね。モチベーションをあげること、そしてそれをキープすること、そこから入るべきだということで、私どもは研修というものを柱としてやっております。「思い」がなければこの仕事はやってられないなと思います。

加藤  
多分、「思い」というのは皆さん同じだと思うのですね。どなたか「思い」じゃない、あるいは自分の「思い」はこういうものだということがございましたらお願いします。「思い」じゃなくてもいいですが。ただ、意地の悪い言い方をしますと、いくら「思い」があっても、「思い」が空回りしている人も結構世の中にいますよね。その「思い」をどうやって、実際につなげていくのか大切ですよね。「思い」がなければ始まらないし、それをどうやって、橘田さんもその「思い」がエネルギーになってつながっていったと思うんですよ。そこも多分皆さん同じでしょうし、私もそこを構想日本と引き比べて考えますと、やはり同じなんですよね。どうやってそれを動かしていくのか。何をやるにも「思い」が必要で、JCも「思い」で溢れているんですけど、時々その「思い」が空回りしたり、ね?そうでもないかも分からないですけど。多分その辺は誰にとっても大事で、関心があるところです。

菅原  
今、「思い」という話がでまして、安里さんにお伺いしたいのですけれでも、後継者のことで悩んでいるというのは、息子なりが後継者に適していないというものなのか、後継者がいないというものなのか、そこのところどうなのでしょうか?

安里  
はい、後継者と一括りにすると定義づけがかなり難しいものがありますが、その悩みを色々分析してみますとね、その後継者の下では従業員がついてこないとか、その人の人間性であったり、生い立ちからくる鼻につく発言であったり、かと言って自分側からいうと体制を批判してしまう、この考え方は古い、新しくしようと言う。しかし実績がないだろうと言われ従業員がついてこないんですね。そんな狭間で後継者は後継者で悩んでいるのですよ。ただ創業者は経験でものを考えるので、それで行き詰っている。そういうこともこの統計の細目の中に謳われていました。全国色々なところを周って、年間で何万人の人間と会って、話をしているんですけれども、そういうことを説きながら歩いているんですよ。さっき、「思い」の話がありましたけれども、僕はロマンとソロバンのバランスの両方がないと駄目だと思っていて、企業の経営もそうじゃないですか、バランスをうまくとっていかないといけない。暴走族が気合で走ると言っても、実際ガソリン入れなければ走れないじゃないですか。だからそのロジックをマネージメントに生かしていくかを日々考えながら活動しているんです。お答えになりましたか?

菅原  
有難うございます。私がですね、前職で代表をやっていた会社がですね、一平社員として中途で入ったのですけれども、そこから役員にならせていただいて、そこから後継者がいないということで社長を継いだわけです。代表が変わる時というのは企業にとってチャンスだと思っていて、私は従業員からどうなるんだろうと期待というところと、やる気・思いはすごくあったので、いろいろ新しい施策をしてみたりとかしました。会社の売り上げをどうしたいとかいうことよりも、従業員はほとんどの時間を会社で過ごしているので、その時間を有意義に過ごしてもらって、どう会社を成長させられるか考えて、いろいろ会社を変えていったんですね。そしたら、業績もすごくあがってきましたし、社員の定着率もすごく良くなっていったんですね。ここ最近ですごく思うのは、会社を作りたい、起業したいっていう人がすごくたくさん集まってきて、特に女性が多いんですけどね、「思い」はすごくあるのに、知識とかチャンスとかお金がないっていうことで、「思い」だけっていう人がすごく多いです。そういう中で、企業では逆に後継者がいないとか、そういうところが何かマッチして、「思い」がある人が次の代表とかやっていけるようになればすごくいいのになと思うんですが、先ほどおっしゃったように、創業者のやり方を変えるということで、なかなかできなくて、うまく会社が伸びないのかなって思います。創業社長に次の方に任せる勇気があれば、会社はすごく伸びるんじゃないのかなと思います。

安里  
そうですね・・といっても僕はコーディネーターじゃないんですけど、出張さんに先ほどのマクロ経済の話をしていただければと思います。多分関心が高いはずですから。

出張  
僕は「思い」だけでは会社は長続きしないと思っています。最初に会社を立ち上げたときには色々なものが見えてこないと思うんですね。「思い」がなぜ必要か、あるいは情熱がなぜ必要かというと、成功した方っていうのは、最初分からないことを手探りで探っていったとおもうんですけど、「思い」がないとその維持が出来ないというところがあると思うんです。とかくこういう場で精神論になりがちなんですけど、僕は「思い」だけでは長続きしないし、社員もついてこないと思います。やってる本人、経営者もだんだん辛くなってくる。「思い」は大切ですけれど、やっぱり経営というのは合理的な活動なんじゃないのかなと思います。その「思い」を長く継続させていくことが出来ると、それぞれの業界の合理性であるとか、成功のパターンとかいうものが見えてくる。それなくして、精神論だけではやっていけないんじゃないかというのが僕の感想です。

安里  
(出張さんに向かって)先ほど、2000年代の話されたじゃないですか。それを総括するとこうだ、なぜならば・・というもの。それをお願いします。

出張  
僕の会社は公開していない会社なものですから、四半期ごとにどれだけ儲かっただとか、そういうプレッシャーがまったくないんですね。正直に申し上げて、2000年頃のIT企業のように公開すれば100億円儲かるというのなら、それはいいなと思ってるんですけど、それだけ貰えるなら、四半期ごとのプレッシャーにも耐えていけるなと思います。今の状況で公開企業になってどれくらいメリットあるのかなと思っています。さっき申し上げたことですが、皆さん不況不況、100年に1度の不況とおっしゃるんですけども、うちの場合は四半期ごとのプレッシャーがないのでこんな暢気なことを言えるのかもしれないんですけど、常に右上がりで勝ち続けていくってことは、企業もできないんじゃないのかなと思います。僕は目標が低いのかもしれないですが、どうやって潰さないようにしようかなと考えています。今は非公開の会社ということで、経営者としては自由度の高い日々を送っています。ぼくの場合には資格試験やっていますけど、お客さんに喜んで頂く、人材育成にどれだけ貢献できるのかっていうのがあっての話なのですが、やっぱり会社の奴隷になりたくないなというのがあって、まあ僕は筆頭株主ですけど、お金の奴隷にはなりたかないというのがあって、借り入れも銀行からありません。なので銀行には好き勝手言っています。そういう状況で社員の人たちと自由度の高い経営続けていくって言うのが、僕の中ではかなりプライオリティが高いです。100年に一度の不況という話がありますけど、2000年からつい最近までの世界同時好況が例外だったんじゃないかなと思います。今まで冷戦が終わった後、平和の配当金をずっと貰っていて、それのほうが歴史的に見た時に例外的な期間であって、そこと比べて厳しいといっても間違えているんじゃないかと思います。日本よりアメリカがひどいと思いますが、もう麻薬づけ状況になっている。固定費を抑えて、銀行に小突かれないように、自由度を保ちながら、お客さんにサービスしながらサバイブしていく、今それができればいいんじゃないかなと思います。

安里  
それに対して、なぜこの不況が起こったのか、それぞれの持論をお願いします。多分こういうマクロ的なところから入っていかないと、精神論で終わってしまう気がするから。

水澤  
その質問にも答えていこうと思うんですけど、まず私は大きく言うと二つ会社を作っていて、小さいのも入れると4つ起業をしているんですね。よく起業して5年経つと半分会社がないといわれていますが、おかげさまで、私が作った会社は今4つとも残っています。今4つ目が一番苦労していますけれども、よく起業するポイントを聞かれます。それをお話して、それから景気の話に入っていきたいと思います。私はやはりはじめに思いありきだと思います。例えば「これからシルバーがいい」とか「環境ビジネスがいい」と言って入っていく人が多いですね。でも私はそこに思いがないと続かないし耐えられないと思うんですね。だからその事業がどうしてもやりたいというのではないと、人に反対されても、寝食忘れて自分が取り組める仕事なんだと思えないと、私は起業は止めたほうがいいと思います。しかし、先ほどのお話のとおり、思いだけではやっていけない。加えて、それを世の中が必要としているかという視点が必要だと思います。ある女性の方から、「よくパンを作るのがうまいと皆に言われるのでお店を出してみようかと思う」という方には、私は、「ではお金をもらってみたら」と提案します。「世の中の人がお金を払ってもほしいと思うパンだったら成功するんじゃないですか」と。それから事業は独りじゃ出来ないんですね。三つ目に、それを一緒にやる仲間、従業員にやりがいを提供できるかということが大切です。4つ目は収支が合うか。自分もやりたい、世の中の人も必要としている、仲間にやりがいも提供できる、でも収支が合わないという仕事はいっぱいあるんですよね。そういう仕事はやっちゃいけない。迷惑がかかる。最近もうひとつ思っているのは、知恵が必要。経営資源にはハンディキャップがあります。大企業がやる仕事を中小企業の我々がやる場合、大きなハンディキャップがあります。人・モノ・金・情報、私はここに時間という公平な資源があると思っていますが、時間以外の4つは不公平です。それを埋めるのが知恵だと思うんです。それと、私自身は事業をやっている人間で、経済評論家ではありませんから、景気には捉われないように敢えてしています。もちろん経営をやる以上、景気という天候を読むことは重要です。経営が船だとしたら景気という天候・風を読むことは大事です。嵐なのか、雪なのか、雨なのか。しかし経営者であればこの風がどこから吹いてくるのか考える必要はないと思うんですよ。そういうことは経済評論家に任せておいて、そういうことは自分が風を読むための、あくまでコンパスに過ぎないんですよ。なので、この議論は私には分からないし、考えたこともないけれど、この風がどのくらいの強さで吹いてきて、どれくらい続いていくのかということは常日頃考えています。

出張  
100%同意です。なんで100年に一度の不況って言わないほうがいいのかというと、そこで思考停止に陥るからです。それで言い訳になりがちだと思うんです。そういうことを言ってもしょうがないんじゃないのかなと思います。水澤さんの意見に100%、120%同意です。我々中小企業やっててマクロ経済の話してても仕方ないと思います。ただ、今日本全体が100年に1度の不況と言ってますけど、僕は本当にそうなのかなと思ってます。

安里  
ただ、物事の流れを整理していく上で、ある程度本質を抑えていかないといけないと思うんですね。経営者として景気に捉われないというのは分かります、ただなぜこの不況が起こったのかという本質を押さえていかないと、次に進めないと。次の風への対応能力というのも問われていると思うのですよ。反省して、次にどういうことが起きようとも、我々はこうあるべきという整理整頓をしていく時期に来ているのかなと思います。なぜこの話をするのかというと、2000年代に入ってからわが国の不動産が証券化された。地上権の設定から、向こうさんの物差しで権利というものがバリューアップして、実態経済ではない架空経済が蔓延していたんですね。というのは共通理解として持っていると思うんですよ。それを考えた時に、僕はバブルよりももっと怖かったんですよ。何が怖かったかというと、さら地が10ヶ月後には10倍20倍の価格で転売されている、それもネット上で。登記も恐ろしい状況で、金融機関もそれを支援している。中小企業が一番それに被害を受けてる。トヨタとそれ以外の企業が本業・実業でどれだけ利益を上げてきたかということ、為替差益でどれだけ利益をあげていたかとか、そういうのを考え直すべきだと思うんですよ。下請け企業としてどう付き合っていくか。この100年に一度の大恐慌を総括しないと次に進めないんじゃないのかなと思うんですよ。そのことについて何かありますか?

加藤  
コーディネーターと役割を変えて。今日ここに来ていただいている方にそういう総括をしていただくのが適切かどうかというところもありますが、少しそういう話をしても良いのかなとも思います。もちろん色んな要因がある。私は金融からスタートしてこういう状況になり、そして最大の原因は金融の中に見つけられると思います。前回のフォーラムでそういう議論も少し出ましたが、もともと金融とは何だったのか。もともとお金が余っている人がいる、足りない人がいる。隣同士なら誰が足りないか、余っているか分かる。しかし大勢いると分からない。だから余っている人から足りない人にお金を回していく、スタートは極めて単純な話なんですね。余っている人と、足りない人は顔を知らないかもしれない。しかし、つなぐ人は両方の顔を知っているわけです。これが私は金融のスタートだと思うのですね。顔が見えるこの世界。一方でマーケットというのは顔の見えない世界なのですね。大勢の人から集めて、マーケット経由で。株などはそうですよね、非公開であれば自分で持つか、あるいはそれを知っている人にもってもらうか。しかしマーケットというのは顔が見えない、顔を見えなくする仕組みですね。マーケットか、顔が見えるかという非常に大きい違いがあります。マーケットで、顔など関係なくそこで大勢集めて、一緒に値段を決めることが一番効率的だということが経済学の中で正当化され、それが極限化されたのが今の金融システムです。非常に簡単に言えばですけど。その中で色々なことが起こった。証券化ということ、上等なものに聞こえますが違う見方をすると、これは貸したものを次の瞬間に売っぱらうということ。顔が見える間柄であれば、例えば私が安里さんにお金を貸して10年経ったら返ってくるとする。その時、安里さんの経営のほうは大丈夫かなと心配しなければならない。もし不安ならば私はそこで安里さんをサポートするわけですよ。しっかりしてよと、もっと金がいるなら貸しますよと。歴史においても、日本の金融機関もそういうことをやってきたわけです。それは顔が見えるからなんです。顔が見える間柄で、安里さんちょっと危ないなと思っていたら、もともと貸さないんですよ。そこを見込んで貸したわけですから、10年しっかりサポートすることがセットなのです。セキュリタイゼーションというのは逆に言えば、例えばこのあたりでビルを建てるので100億円必要で、銀行が100億円貸す。100億円を貸して、例えば10年間、毎年それを回収しながら利息を取るなんてことをやっている銀行は今はほとんどないです。100億円昨日貸したら今日はその100億円を小分けにして全部売っているわけです。単純化して言えば、相手がサブプライムであろうが、立派なビルであろうが、金融機関は同じことをやっているわけです。ですから、売っぱらってしまったら、自分の責任はもうそこにはないわけなんです。また売ったその100億円でまた貸して、また売っぱらう。これは借り逃げならぬ、貸し逃げみたいな話が実際に起こっていたのです。そうやって貸す中で、良いところもあれば、悪いところもある。悪いところというのは、証券化して100億円を100個に分散すれば1億円ですから、リスクは100分の1になる、しかし100分の1になってもリスクは減るわけではないんですよね。それを世界中の金融機関がやって、それを今度はファンドを作る会社がいろんなところでミンチになったものを集めてきて、また新しい肉団子を作って、その中には半分腐りかけの肉もあれば、とてもいい肉もある。その肉団子を、貸したリスクを分散したと思っていた銀行が食べていたんですね。その肉団子の中には、銀行が解消したと思っていたリスクがぐるっと回って入っていた。もっとひどいリスクが他所から入ってきたものもある。というのが今回の話だったのですね。ですから、話を元に戻すとですね、いろんな面でお客・従業員・取引先と付き合うということが希薄になって、その最たるものが金融だったのですね。金融は世界中でそれをやって、しかも、ものを動かさずパソコン上で瞬時に取引できることから、それがものすごいスピードで進んだ。それが集中的に出てきたということですね。もちろん、セキュリタイゼーションとか金融工学というものをご破算にすることはできないし、全て否定する必要もない。リスク分散という手立ても必要だ。しかし、やはり顔が見える金融という原点に返って、貸したものは自分がその責任をとって自分が最後まで付き合うということも半分はないといけないですよね。大企業、グローバルに展開する企業は目まぐるしくリスクも大きいマーケットの中でやっていく。しかし、中小企業であれば、今はあまり機能していないかもしれないけど、信用金庫と付き合って、その地域の中で顔が見える商売をもう一度やり直すというのが大事なんじゃないのかなと思います。安里さんが言ったように、そこを総括してやり方を考えないと良くないよなと思います。

安里  
はい。それも金融工学の中にあって、今僕らが一番考えていかなければならないのは中小零細企業として、自分の取引先さんがなぜ今成長しているのかという動向をしっかり把握しておかないといけないのかなと思います。今、名古屋城などというのは結局トヨタ城だったんですよね。トヨタの城下町としてトヨタの成長と共に、地域が盛り上がっていったんですよ。結果、今そこが止まって総崩れ現象です。なぜそこが伸びているかという、本質をもう一回考えていかないと怖いということなんですよ。

出張  
でも本質はそう簡単には分からないと思います。右上がりで伸びている会社が何で伸びているか、銀行の審査部でもまともな仕事最近やってないですよ。取引先が何で伸びているのか、確かに分かるときもあると思いますけど、なかなか知るのは難しいんじゃないのかなと思います。今になって2000年からの数年間がこういう時代だったと、その本質が分かる気がしますが、その最中にいる際にはなかなか分からないんじゃないのかなと思います。ぼくは水澤さんにすごく賛成なんですけど、少なくとも我々がマクロを話していても、それにあまりに捉われていてもいけないかなと思います。新しく事業を始める人間に必要なのはどちらかというとアニマルスピリットという気がします。マクロで分析とか、答えが分かっているのは、ほとんど終わっちゃっているケースだと思うんですね。ハーバードビジネススクールがケーススタディ書いても、それはもうビジネスとして終わっている話であって、その前の段階の所にビジネスチャンスがあると思うんですよ。そこのところはやはり、アニマルスピリットなんじゃないのかなと思います。

安里  
僕もアニマルスピリットは大好きなんだけど、言いたいことは、これまで会社を維持してきて、つぶれた会社を全部調べていったら、要因というのは、バブルで崩壊したという流れというのは、自分の一番のクライアントの売り上げが全体の何割占めて、そこが壊れたらという、リスク管理の話をしているわけですよ。絶対この会社は大丈夫だという考えだけで、何も考えずにその流れに流されていっては恐ろしいことになると思います。バブル期の後に残るのは、リスク管理をちゃんとやっているとこだけなんですよね。

出張  
それはおっしゃるとおりだと思いますよ。

加藤  
出張さんがおっしゃったように、マクロの話というのは個々の事業活動なり、モノを買う側の全ての総体ですよね。例えば金融で言えば、ひとりひとりの顔が見える金融をやって顔が見える取引をやっていれば、ああいう金融恐慌は起こらなかった。その代わり、今のレベルの、世界レベルでの経済成長というのもないわけです。ドバイもないわけだし、上海も違う街の形になっているわけですよ。同じことが言えて、金融と実際のモノを作ったり売ったりする経済は表裏一体ですから、世界の企業が自分の周りを大事にしてモノを作ったり売ったりしていれば、これも今のような世界の経済成長はなかった。その代わり、例えば環境だってこんなに悪くなかったかもしれない。我々全員が牧歌的な生活をしていて、良かったなあと思っているかもしれない。今、安里さんがおっしゃっている、反省をしなければならないというのは、非常にグローバルに、マクロに見れば、経済システム全体の話であります。どんどん成長する中でひとりだけのんびりというのは、なかなかやりにくいですよね。そういうものの相互作用なわけですよ。人間というのは欲望の塊ですから、進み出したら止まらないというところはありますよね。それをもし考えるとすれば、環境とか金融とか非常に大きい枠のところで、企業活動・人間活動そのものに何か箍をはめるようなことをすれば、変わってくるのかなと思います。環境とか金融の面から、痛みを感じて、何とかしなければいけないなと思って、そういう意味で全体的な曲がり角になっているとは思います。そういう中で、皆さんそれぞれが自分の活動を、今年来年のでこぼこではなくて、やっておられる。そういうわけで、もっと個々のお話を伺ったほうが良いのかなと私は思います。

出張  
僕の会社の話になりますが、僕は仕事で全国色々回りました。今日も京都に行って帰ってきたんですけど、マクロ的なことで言うと、日本のマーケットの特性かなと思っているのが、非常にコモディティ化が進んでいるなと思いました。どういう意味かと言いますと、色んなところに行ってもJRの駅前はほとんど似たような顔つきになってきているんですよ。これはマーケットの多様性がすごく無いのじゃないかなと思います。マーケットの多様性が無いというのはニッチビジネスがなかなか難しいのかなという印象を持ちました。ニッチビジネスが難しいというのは、中小企業とか新しい会社が育ちにくい風土になってきているのかなと思います。まあそれはマクロの話なので、その中のミクロでどうやって商売のネタをマメに探していかなければならないですよね。あと私の会社が日経新聞に広告出すと言ったんですけど、実は去年の10月から3月末まで初めてTVコマーシャルやりました。エドはるみさんを使って報道2001という番組でTVコマーシャルをやったんですけど、私は不景気になってありがたいなあて思っています。それはどういうことかというと、メディアの広告がすごく安くなっているんですね。今までTVコマーシャルはうちの会社の規模で出来なかったんです。それが電通さんみたいなところともお取引頂くし、営業の方もお越しいただけるし、それはすごくチャンスなんじゃないかなと思います。来週月曜に広告出しますが、広告代理店が「これが日経の定価です」と来たんですが、「あんたのとこ、どうせ自社広告ばっかり出しているんだし、空気出すよりいいでしょ」と言って値段を安くしてもらいました。うちの会社は借入金がないので恵まれていると思いますけど、今は逆にチャンスなんじゃないのかなと思います。小さい会社やこれから出ようという会社は逆にこれをチャンスに出来るんじゃないのかなと思います。100年に1度なんてどうでもいいんじゃないのかなというのが僕の意見です。

深田  
私も100年に一度の不況というのを聞くのは非常に嫌いで、景気の悪い時は色々あったんですけど、企業家や後継者いろいろ立場はあると思うんですけど、父親から受け継いだ後継者というのは自分のやりたいことも出来ませんし、こう借入金の額が年商と比べて多い会社はなかなか思い切ったことができないとかそういうこともありますが、景気が悪い時期こそ、それをちょっと考えるべきだと思います。うちでは負の遺産が多くてなかなか新しい機械が買えないと、それから従業員も雇用できないということで、自分が今の会社に入った時、非常に困りました。バブルが崩壊した時に前の会社に入ったんです。例えば、良い機械がないと良いモノはできないのかなって、これは特にものづくりの人に言いたいんですけど、例えば専門家がいないとメッキ工場でいいものができないかというとそういうわけじゃないんですよね。私が入った状況の中で何を学んだかといいますと、今あるものを使いこなす、今ある機械を使いこなす、今ある従業員を使いこなす、最後に自分自身を使いこなす。この3つを徹底的にやりました。そうすると技術力も上がっていって、従業員もついてきた。現在のような感じになったんですけど、そこにはただ頑張るとか気づくとか精神論的なことばかりではなくて、工夫することも必要なんじゃないのかなと思います。うちの会社というのはノーベル賞貰うような、わっと驚くような技術は無いんですね。だけど、手品の種のような技術を二重三重に重ねることによって、外から絶対に分からないようなそんな技術を構築しているんです。なんでそういうことを申したかと言いますと、私はもともと文系で、もちろん理系の勉強もしましたけれども、そこまでの能力はないわけで、しかし、そこまでいかなくても、世の中に提供できる高い技術のモノていっぱいあるんですね。そういう発想の元々というのは、大学の時で、どこの大学でも履修さえすればAが貰える科目ってどこの大学にも1個くらいありますよね。自分はどうしても授業出ずにA取りたかったので、その授業、生物学Bというのですけれど、40人の枠に450人集まりまして抽選になりました。投票箱に名前と学籍番号を書いた紙を入れてそれを先生が引くというのですね。そのとき私が何をやったかといいますと、私は紙をくちゃくちゃに丸めて、それを取りやすいようにまた広げて抽選箱に入れたところ、見事先生に引いてもらって40人のひとりになった。私の頭のレベルっていうのはそこまでなんですよ。だけど、皆さん笑われますけれども、そこまで考えておやりになるかというと、ほとんどの方がそこまでやらないと思います。うちの会社の技術というのはレベル的にはそこまでなんです。そういうことを二重三重にやることだけでも、世の中に通用する技術というのはあるんですよ。うちの会社も御多分に洩れず、売り上げが1月半分に落ちました。徐々に上がってはきていますけども、やっと今の半分の売り上げでも利益が出るようになってきたというのは、そういう積み重ね、そして私の言ってきた、あるものを使いこなす、従業員を使いこなす、そして自分自身を使いこなす、その3つが浸透してきたからかなと思います。ものづくりじゃない人にはなかなか共通しないのかなと思いますが、うちの場合はそんなところです。あと最後に、安里さんが同時不況のことをおっしゃいましたが忘れてはいけないのが、戦後50年二千何年かまでは毎年80万人から100万人くらい増えていたんですね。そしてそれが止まったと。つまり戦後というのは政令都市が毎年1個ずつ世の中に出来ていたということで、単純に考えても消費体が減っていますから、景気がそんなに良くなるはずがない。だからそういった市場をぱらぱらと見るのも大切なのかなと思いました。以上です。

橘田  
先ほど出張さんがこういう時代だからこそチャンスと言われたことについてまず話したいと思いますが、「思い」の話に少しもどりますが、先ほど「思い」だけじゃだめといわれましたが、まさにそう思っています。水澤さんがおっしゃった「思い」があって、世の中に必要であり、そして仲間があってと言われました。どうも私はここにいる中で、女性の中でも右脳が強い方なので、多分異色なんですよね。その右脳の観点から考えたことをお話します。私は社会が必要としているということが大切だと思って仕事をしております。さきほど、こういう時代だからこそチャンスという話がありましたが、私どもはミドルエイジ女性が働けるべきということでやっていまして、景気が良いときも、はっきり言って景気は良くない、しかし景気が悪い時も変わらないんですね。こういう景気の悪い時だから新しく人を雇用しようとする企業が減りましたよね。その中で、すこしだけ雇用する人材はスキルも然る事ながら人間性も大事だという企業が多いんですね。こういう時代だからこそ、私どもは逆にチャンスで、メンタリティに特化した研修をずっと続けて、会社でも少ないながらも役に立っているという実績が上がっているものですから、反対に不況だからこそ、私どものメンタルに着目した仕事は悪くはないのかなと思います。不況がチャンスというのはこの点だと思います。

加藤  
この辺で少し質問をしてもらおうかなと思います。さきほど出張さん、「合理性」とおっしゃいました。「思い」もそうだけど、「合理性」ということも勿論大事。私は何が「合理的」かということを、その時にその状況の中で見極めるということが、これが大事なんじゃないかなと思います。現在の建築では最低基準まで鉄筋を減らすとコストが安くなって、合理性を追求したことになる。法隆寺とか薬師寺の塔があります。薬師寺の西塔は有名な西岡常一という大工の棟梁が作ったわけですが、その人の弟子から聞いた話なのですが、法隆寺とか薬師寺というのは、今風に言えば必要な木材の量の2倍を使っている。これは今野考え方で言えばとても非合理的で無駄なことをやっているわけなんですね。だけど、もし必要な量を使って100年持つとする、倍を使ったら1000年持つとする。1000年単位で合理性を考えたら、2倍使って10倍ですから5倍合理的だってことなんですね。だから私は、これはすごく考えないといけないことで、10年単位でビジネスを考えるのか、今年儲けなきゃならないのか、究極を言えばコンビニのように毎日儲けなきゃいけないのかということですよね。これはさっきの安里さんの話にも通じるわけですけれども、あまりにも今日のことに終始し過ぎていたから、金融から不動産から全てから、そういう仕組みをやっぱり考えなきゃいけないのかなと思います。

出張  
目先の金儲けのこと言って僕は「合理性」と言っているわけではないです。僕も会社始めるまでは、バンカーズトラストという先ほど加藤さんも言われた、セキュリタイゼーションとかデリバティブとかすごくやっていたところに勤めていました。それで金融の世界に7年か8年いたんですけど、長続きしませんでした。長続きしなかった理由は、カルチャー的に僕はどうも合わなかった。目的を何にしているのか、そしてそれに対して合理的であるのかというようなことはすごく大切かなと思っています。僕は会社上場したいとか思ってないのですが、それはやっぱり四半期ごとに背中を叩かれていくのは大変だろうなとすごく思います。お金というとすごく難しい話で、今ウォールストリートでは給与体系を見直そうという動きも出ている。これはすごく本質的なことで難しいと思います。20年前に私がバンカーズトラストにいたときでも、その段階でもウォールストリートで働いていた人の給料はすごく良かったと思います。ゴールドマンサックス証券の、今日本でもすごく大きくなっていますけども、一人当たりの年収が60万ドルですよ。ひとりあたり平均したら7000万円くらいの年収ですよ。これが本当にいいのかな、もう少し考えたほうがいいんじゃないのかなって思います。ちょっとあまりにも独り勝ちしすぎているんじゃないのかなと思います。彼らのやっていること自体は、非常に合理的というか、効率的なことをやっていると思いますけど、目的のことに関して言えばクエッションマークをつけずにはいられないですね。何のためにビジネスやっているのかとか、何のために会社やってるのかというところをもう一回本質的に考えた方がいいんじゃないのかなと思います。僕がさっき合理的にやらなければいけない、思いだけではいけないと言ったのは、さっきどなたかもそろばんも必要と言われましたけど、僕はもうひとつ、「合理的」というものに美しさみたいなものを加えたいんですね。例えばソニーやユニクロのロゴの変遷を見ると、初期の頃ってお金も無いから優秀なデザイナーに頼めないというのもあって、結構ダサいんですよ。ところが、企業が大きくなるにつれてロゴが洗練されていきます。僕が言う「合理的」というのは、手抜きをしましょうとか、銭儲けを簡単にしましょうという意味で「合理的」と言っているわけじゃないですよ。その中には何かのビジネスモデルが、さっきの水澤さんの話ではないけれど、世の中のニーズにマッチしている。そしてその中で洗練され、研ぎ澄まされていき、それがお金にも変わっていって、ロゴひとつ取っていっても非常に美しいものになっていく。企業というものが、みにくいアヒルの子から白鳥に成長していくように、そこにある種の美しさと合理性というのがあるのではないかなと僕は思うのです。それを単純に「思い」だけではなくて、計算というか数字の裏付けのあるところで、車の両輪としてうまくいっている。もし「思い」が必要であるなら、さっきの水澤さんの話にもう一回返りますけど、僕もゼロから始めている人間なんで、企業が最初一人雇うのだって大変です。そのとき簡単には給料だって払えないですよ。そのときなんで人が来てくれるのかっていうと、やっぱりこちら側の「思い」であるとか、ビジョンであるとか、僕はビジョンがすごく大切だと思っているんですけど、「思い」とかビジョンというのは最初は空手形みたいなものだと思っています。その手形をきっちりと落としていくというプロセスをやっていかないと何年かの内にみんな離れていきますよ。社員自身も。それじゃあ食っていけない。自分が食っていけないだけならまだしも、社員の人たちも食っていけないんだったら、それこそJCの皆さんが苦労されている後継者の問題というのは経営権であるとか、オーナーシップの問題に関わってきます。株誰が持っているの、自分のところでアップサイドなり株を持ってることにより、メリットを詰まるところ誰が持ってるのか、それがうまくいったときにどう分割するのかという、それは「思い」じゃなくて、やっぱり経済的な活動なんじゃないのかなって思います。大きくなっていけばなっていくほど、そのプロセスの中で「思い」だけではやっていけなくて、きっちりとした合理的なルールであったり、富をどうやって分配していくのかというルール作りがないとそれは長続きしないんじゃないのかなと思います。「合理的」という言葉が、もし誤解されてたらと。僕は全然目先の金儲けをしようというわけで言ったわけじゃないので、ご理解ください。

加藤  
質問なりいかがでしょうか? 手を挙げてくださればマイクをお渡ししますので。

会場A(東京財団研究員 加藤さん)  
ちょっと具体的な質問になって申し分けないのだけれども、中小企業の一般的な心得とかあると思うのですけど、最近銀行の融資はどういう風に変わったか、それで困っておられるのかということを伺えればと思うのですけれども。

加藤  
何かそういう実体験がお有りの方、いらっしゃいますか?

深田  
先ほども申し上げましたけど、うちはやっと三分の一くらい負債が減りました。いまだ借金経営をしておりませんので、銀行さんとのお付き合いを密にしないと生きていけないという現実がありますが、ただこの不景気になって、うちの場合はより銀行さんの支援が非常に深くなった気がします。数字的には一時的に落ちましたが、なぜ落ちたか、それと今後はどうなるか、どうしたいか、今どうなっているかを事細かく、がんばります、良くなります、景気がどうのこうのということよりも具体的な数字を並べて、実際に銀行さんに言って、しょっちゅう良いときばかりいって、悪いときばかりお金貸してくれと言ってもなかなか信用してもらえないのですけれども、うちの場合は良い時も悪い時も自分の事業計画、試算表、全部提出しているので、逆に一時的に悪くなってもですね、ああここで良くなるんだな、こういうのがあるよ、政策金融公庫さんだと借り換えで15年に延ばして金利を下げてくれるよとかですね。色んな方策を教えて頂いたり、支援を頂いているので、全般的に良くはないですけれども、よく付き合うにはそういうこともした方がよろしいんじゃないかなと思います。

会場A
その主な銀行というのは大銀行ですか、それとも地方銀行ですか?

深田  
もちろん大銀行ではありませんで、地銀、信用金庫ですね。

加藤  
今の話と先ほどの出張さんの合理性の話でちょっと思い出したことがあるのですが、例えば銀行が企業にお金を貸すときには色々な資料を見るわけですね。それは例えば一般的な雑誌などに載る企業の評価でも、時価総額とかROEとか、或いは昔からの財務諸表でも、色々な数字があります。それで、その数字をどう見るかというところで、銀行から見ると、ここに貸して良いかどうかというある種の基準・合理性なんですね。先ほどの安里さんのマクロの仕組みをどう考えるかが大事だという、そのマクロとひとりひとりの生活なり事業なり個々の動きをつなぐのが「社会の仕組み」であって、その仕組みを考えて世の中に提言してというのが構想日本の役割だと私は思っているんです。そういうことでいくとですね、今の金融機関が見る指標そのものが、今日・明日ということに捉われ過ぎていて、それはゴールドマンサックスの最近の活動から見ると合理的、或いはそこに合うようにゴールドマンサックスは合理的な動きをしてきたのかもしれない。もっと長い、我々の幸せだとか、もっと毎日楽しみながらやりましょうとかいうことからすると、私は全く合理的でない指標がいっぱいあると思います。マクロを考えるということは、現状をとりあえずどうなるかと予測することではなくて、そういうことが、まあ1000年とは言わないですけれど、もうちょっとやはり一年ではなくて、10年、30年位の単位で、企業活動とか我々のことも考えないといけないんじゃないかと思います。そうすると指標自体にも違う合理性が見えてくるんじゃないか、それがマクロについて考え直すということだと私は思います。

安里  
年末に政府が特別に動いてですね、大号令でつなぎの資金を出すというキャンペーンを打ったんですよ。案外食いついてないんですよ。この先売り上げ伸びる見込みがないということが、返す当てがないのに借りるリスクのほうが大きいということで、なかなかこう借りに行かなかったというケースがですね、僕らの仲間内でアンケートを取っただけでも、それを活用したのは全体の4割くらいです。思ったよりそこに反応しなかったのは、僕はびっくりした気持ちだったんですけど、メガバンクさんも含めて、色々な制度の中で借りてくれとか、景気が悪い時でもちゃんとやってるところにはアプローチするんですよ。それで動かないところは、返す当てがない、出来るだけスリム化という、二極にこう分かれているのかなと気がしています。お答えになりましたでしょうか?

加藤  
もうお一人くらいいかがでしょうか? お二人手が見えましたので、お二人一緒にまず質問だけ伺います。

会場B  
安里さんが言われたマクロ的な事と、他の方々が言われた非常に個別的・具体的な事と、中小企業の場合は特定の大企業の下請けとして、この大きな荒波に揉まれて出口が見えないという中小企業がたくさんあると思うのです。幸いここにおられる社長様は非常に不特定多数の顧客を自分で確保されていたり、大企業の下請け的な部品メーカーであっても世界的なオンリーワン企業であって、非常に輝かしい会社ばかりにお見受けします。そういう輝かしい会社の方々から見まして、大企業の下請けで沈没しそうな企業に何かアドバイスがあれば有難いです。

会場C(越谷青年会議所 菊池さん)  
先ほど深田さんが人口減少のことを言われたかと思うのですが、人口減少というのが中小企業にとって非常に大きなファクターになるのかなという気がしておりまして、越谷市ですと人口が32万人で、まだ毎年2000人位増えているのですが、北側の町は実際に人口が減少している。そういった中で、人口の減少共に段々と販路が乏しくなっていくという気がしておりまして、そのあたりのご見解どなた様かお願いいたします。


出張  
僕のやっているところも人口減と少子化の影響を受けています。でもトータルのマーケットを見たとき、うちは中小企業だからそう思うのかもしれないですけれども、全体のまだ何%なのかと思うのです。100回位皆さん聞かれた例えかと思うのですけど、アフリカに靴を売りに行って、ここには靴履いてない奴たくさんいるというのと、ここでは誰も靴履いてないから、売れないよなというのありますよね。自分のやっている商売見たときに、たしかにマクロ的に見て人口は減っているんだけれども、その中でまだ5%か10%じゃないというのがうちの状況なんです。うちの社員の人なんかも、マクロ的に見たらうちの商売これからきついですよねと言うんですけど、中小企業で100年後の日本のこと心配する余裕があるなら、3年後きっちり商売できるようにお前考えろよと言いたいんですよ。評論家に、霞ヶ関の偉い人に100年後の姿なんて任せておいて、我々は商売を5年くらい先のとこくらいまで考えて、その時はその時でまた次の商売考えましょうと、だからあまり先のこと心配していてもしょうがないんじゃないのかなというのが僕の意見です。

菅原  
人口減少というお話ありましたけど、こういう景気の中でもすごく今伸びている会社が私の周りにもありまして、本当に世の中に必要とされているもの、例えばコスト削減の商品であったりとか、本当にお客さまの視点に立って提供している会社はすごく伸びていると思うんですよね。逆に安易に儲かっている会社がこの景気が悪くなってなくなっていく。不動産で言えば、右から左に移しただけで、何千万の利益が上がるとか。あと、銀座のクラブで1500店舗あるのが、一ヶ月で500店舗閉まったみたいな話とか聞いたりしたんですけど、安易に儲かっているものが世の中でなくなっているようなイメージがあって。人口減少につながるような事例で、最近あった事例なのですけど、呉服屋さんで二代目の社長が引き継いで、呉服は人口の減っているのもそうですし、着物着る人がどんどん減ってきていますから、どんどん赤字になっている中で二代目の社長が引き継いだんですね。そこで目をつけたのが中国の市場ということで、中国に進出しまして、中国は日本の10倍のお金持ちがいるということで、海外に出た途端に一着300万、400万の着物が売れて、どんどん伸びていってもう三店舗くらいのお店を展開しているというお話とか。あと、似ているんですけど、米屋さんでやっぱり二代目の社長が引き継いで、1キロ2500円の米を中国に持っていったら、1キロ1万円で飛ぶように売れて、進出した初年度で20億の売り上げを上げたという話をですね。そういう風に、ちょっと視野を広げてみたり、サービスの中身をもう一度考え直してみると、人口の減少と関係の無いところでチャンスがあるんではないかなと最近感じたところです。



加藤 
私も今の話を伺っていて一つ思い出したのですけれど、ずっと前にフォーラムに来てもらった人なんですが、広島県の熊野町というのは、今は合併したかどうか知りませんが、毛筆の産地なんです。そこの会社のいくつかが、同じ技術で同じ材料を使って化粧刷毛を作りました。今やここは世界の高級化粧刷毛のトップブランドです。今の、同じことなんですよね、人間が減っているかどうかはともかくとして、毛筆を使う人というのは急激に減り続けているわけです。そういう意味では、毛筆を使う人口というのは高齢化どころではなくて、ものすごい勢いで減っているわけですけれども、しかしこれもさっきの深田さんのメッキの話につながると思うのですけど、これも新しい技術を発見したんじゃないんですよね。同じ材料で同じ技術で刷毛にしたらですね、商売がわっと変わったわけですよね。モノというのはそこを考えて考えて考え抜くということなのかなと思います。

水澤  
私自身は、マクロなことを考えてないと言いながらも、人口が減っていくとか経済の波を見てないわけではないのです。だから、ヨーロッパでかつて栄えたものがアメリカに渡って日本に来て、今度は中国なのかインドなのかドバイなのか、いろんなところに流れている中でもう一回日本に戻ってくる。その時多分私は生きてないんですよ。だからそういう状況の中で風を読んで、どういう方向に行こうか、出張さんがアニマルスピリット・感性という話をされましたけど、企業というのは、特に中小企業というのは環境能力がないといけないと思っているんですね。だから私自身は今のスポーツビジネスを、製造業みたいなものと思って経営しています。が、下請けの工場をやっているわけではありません。そこで、もし私が二代目で下請けの工場を任されたらどうするのかなと今考えたのですが、できるだけそこの仕事を7割くらいに抑えつつ、3割別の仕事を選んでいくのか。もしくは、私だったら株を買ってもらいます。それで、うちがこけたらお宅も損しますよという条件を作っておきます。その代わり、100%お宅に言われたとおりの納品をしますという風に選択をするのかどっちかだと私自身は思っています。今の技術を生かして今の仕事を7割やって他の3割を延ばしていく方法を考えるか。大企業だと舵を取るのは難しいですけど、小さい企業であれば舵を変えるのは、もちろん発想を変えなければなりませんし、風を読まなければなりませんけど、もし自分だったらそうする。それができないのだったら、株を持ってもらえませんかと、51%でも良いですと。経営責任も持ってくださいと。そういう形でやって、資金は手元に、現金はキャッシュで持っておいて、自分は身軽になるという方法を多分とるんじゃないかなという風に思いました。それから、少子化というのはスポーツビジネス、お客様を呼ぶビジネスなので、非常に大きく影響すると思っています。今北海道は530万人の人口がいて、商圏ということで言いますと札幌商圏は250万人ここに集まっていますので、ほぼ半数が札幌に集中しています。すぐそばの旭川は5年経つと20%くらい人が減っているんじゃないかと思っていますが、この530万人が500万人になるのはあっという間なので、私どもはどう考えているかというと、社名にファンタアジアと入れています。ファンタステッィクなアジアということで造語なんですけど、今アジアというのはバスケットボールが一大人気になっていて、中国のオリンピックでも実はバスケットボールが最高に人気があったんですね。そういう意味では、バスケットボールはルールが一緒ですので、言葉が要らない観光ソフトにしてしまって、人を行ったり来たりさせようと、アウトバウンドとインバウンドにも貢献するんじゃないかという観点で、当然少子化という波についても判断をし、そこも風だと思っていて、読んで事業をやっていくというようなことをやらせて頂いています。

安里  
さっきのマクロ経済の話なんですけど、なぜこれを僕が考えたいかと言いますと、今日まで色々な会社を再生させてきて、全部取り込んでリスク背負って、延べでもう、僕が入った頃から600倍なんですよ。こんな短期間でこれだけ成長させてきた所以というものは、数々の失敗を見てきたからです。僕らが成功者から学ぶことって案外無いのですよ。大方半分以上は運とかタイミングとかいうものがそこにあると思うんですけど、失敗者には色んな意味で共通点があるんですよね。マクロ経済考えるというのは、自分のとこがなぜ伸びているのかという要因を押さえておかないといけない。そしてその要因が果たして永遠に不滅なのかという、例えばダイエーが誰が潰れるかと思ったか、ダイエーが潰れたのはどうして潰れたのかという、そういう僕らはもう一回歴史を学んで、自分の取引先が仮に潰れたときにわが社は残るかというリスク管理を常にやっていかないとだめなのですよ。B to Cのビジネスだったら市場の中でどうあるべきかと考えていけばいいのだけれど、B to Bの世界で、町工場でやっているところなんかだと、自分の取引先のウエイトが全体の9割を占めてしまったら、これは危機なんですよね。僕もこれまでずっと商売をやってきた中で、意識するのはまず一取引先の売り上げが10%超えたら、全体の嵩上げをするか、或いはそこの売り上げをそこ一旦止めるかというところまで、ちゃんとこう理に詰めてやっていかないと一箇所がこけたら共倒れだと、親会社がこけたら子会社も全部共倒れだとそういう構図だけはどうしても作らないように、僕らは最悪潰れることを前提にマネージメントというものをやっていかないと、リスクがしっかり手中に収められたということにならないと思うんですよ。だからその日その日も大事、だけど3年先にその市場が存在しなかったということを前提に、じゃあ果たしてそれ以外に何をすべきかということもね、片方では考えていくということもね、常に僕は考えてこれまでやってきたんです。それで、さっきの志の話にまたちょっと触れるんだけど、自分の好きなことを商売にすると案外上手くいかないケースが多いんです。僕はトラック好きなんですよ。トラック好きで、トラックに金をつぎ込んでいったとき、バンパーは大きくなって電球の数は増えるんだけども、これはトラックマニアの世界ではうけるんですよ。だけどそれで売り上げ伸びるかというと伸びないんですよ。ゴルフ好きが同じようにゴルフ場を経営するにあたって、都度都度変化を与えていきたい、こだわりを持ち始めると、マーケットいわゆるユーザーはただ良い気持ちで回れれば良いわけですよ。バンカーが一個増えたとか増えてないとかどうでも良いんです。そういう思い込み・こだわりを持ってしまうと、案外商いって上手く行かないんですよね。映画のプロデューサーも案外映画好きでない方がやったりすると上手く行くというじゃないですか。なんかそんなロジックを僕らは片方で持っておかないといけないなと、これまでのわが国の、ここ何十年かの歴史の中でも大いに学ぶことがあるんじゃないのかなと思いますね。

深田  
短く言いますけど、ご質問の2番目で最初の下請けという話をしたいと思うのですけど、うちの場合はもろに大手電器メーカー・自動車メーカーさんの下請けなんですね。何をしてきたかといいますと、先ほどの話につながって、やはりこう鼻薬をちょっと入れるようなそういう提案型をしています。具体的にどういうことをしているかというと、今みたいにISOの14000ができるずっと前から、あまりうるさくない頃からですね、メッキの皮膜に入っている有害物質をちょっと減らしてみようかなと漠然と思ったんですね。なぜかというと、その物質が少しでもあると色が変わってしまうということに気付いて、それを取るために10年以上前から必死になってやりました。そうしてきまして今、あるメッキのある物質が1000ppm以下なら良いよというふうに認められていますけど、うちはもう10年以上前から徹底的に取り組んだので、常に50ppm以下なんですね。そうすると他の同業者はもう太刀打ちできないわけですよ。あそこのメッキは50ppm以下だからお宅もしなさいと言っても、絶対出来ません。ですから国内で売れてるTVの1位と2位の会社の部品は全部うちに来ている。だから価格的にも優位に立てているんです。ですから、ただ来たものをやるというだけではなく、そういう提案型をやるという、うちはこういうものがありますよと直接上のユーザーさんに言うのは難しいと思うんですけど、中間商社さんにアピールする必要があるんじゃないかなと思います。

加藤  
そろそろ時間がきましたけれども、最後にこれだけ言っておこうということがありましたら、どうぞ。先ほどからマクロの議論をしないといけないということでしたけど、構想日本というのはビジネスではないですけど、マクロの話、マクロにも色々ありますが、マクロの話だけをしているわけです。私はそこで、それが年金であっても、医療でもあっても、教育であっても、こういう金融の話であっても、それを考えれば考えるほど、ミクロの個々のことを知らないと何も言えないのです。常にそこに行くんですね。テレビに出てきている学者や評論家というのは、私は気楽なもんだと思います。景気がどうなるとか、今はひどい、まだ良くならない、一年後はどうだとか、それはマクロの議論でもなんでもないのだと思います。起こっていることを、ああだこうだ言っているだけです。私はマクロのことをやろうと思ったら、全体の一個一個を、全部を潰すことはできないですけども、中心にあるのは何かというのは大事だと思います。さっきから安里さんが、マクロは大事だと言っていますけど、ここに安里さん含めてJCの皆さんの思いがやっぱりこもっているんですよね。俺たちはやっぱり世の中のことを考えないといけない、次の世代を担うのだからと。それはすごく大事なことで、そしてそれと同時にマクロを考えようと思ったら足元で何がということも全てのスタートだということ。青年会議所というのは一生懸命やっている割には世の中であまり評価されていない。私はもっと評価されてしかるべきだと思います。最初に発表して頂いた、JCメンバーの生の声、こういうミクロのものを含めてマクロのことを考えて頂く。そこがJCにとっての一番の強みだし、大事なところじゃないのかなと思っています。今日はそんなところで終えたいと思います。JCが7月の25・26日の土日、毎年恒例のサマコンを横浜で行います。JC以外の方は参加無料です。ぜひご参加ください。

戻る
S