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小池さん 小包です。・(アンリ)あっ は~い。
(アンリ)あっ は~い ありがとうございます。失礼します。
(喜美子)うち 今まで ず~っと家族を背負うてきたんです。
ほやから 今 誰も背負わんでええいうのは初めてで…。
ほんまに一人になったんやなあ…。
それが こたえてんのやろか…それで 寂しい思うてしまうんやろか…。
聞いてます?聞いてるよぉ。
プレゼントですか? 誰から?
アハハハハッ。何?
何や これ… いや~ アハハハハッ。いや~ ええっ?
う~ん おいしい。
フフフッ。何で こんな おいしいの?
う~ん… 丁寧に作ったからです。
ああ… 丁寧かあ…。
せやな 丁寧は大事やな。大事です。
あの それって…。あ… さっきの話な。
はい?今まで家族を背負ってきたいう。
ああ ほんまに聞いてたんですね。聞いてたわ。
これで ほんまに一人になったって。うん。
ちゃうで。 家族はな 離れてても家族や。
川原ちゃんは 一人やない。別れたハチさんかて 武志君の父親や。
みんな 家族や。
うちにも娘がいてな。そうなんですか。うんうん。
離れて暮らしてるけど 孫もいるで。へえ~。
お誕生日のプレゼントやいうて送ってきてくれた。
お誕生日お祝い。
うちな あんまり そういうこと気にせえへんからびっくりしたんよ。 不意打ちや。どういうことですか。
見てみるか?
ええですか?うん。
着せてみたろ 手ぇ出して。うん はい。
あっ! あ~ 還暦ぃ?
還暦のお祝いですか。ほな 小池ちゃん 60?
そうや 60や。え~っ 似合ってる。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
(アンリ)人てな 人生一回しか生きられへんやん。はい。
どんなことしたって どんな金持ちでも人生 一人一回だけや。
一回だけしかないもんもっと大事にしたいやん。
豊かにしたいやん。
人生を豊かにするものって何や? 芸術や。ほやから うちは ここに来たんや。
うちな 川原ちゃんの作品 触れることで残りの人生もっともっと豊かにしたろ思たんや。
うちの作品で…。
うん。 川原ちゃんの作品はなうちの人生を豊かにしてくれてるんやで。
そんなふうに考えたことなかったです…。
ほな 何 考えて作ってんの?
穴窯で焼いた作品は一個として 同じもんが出来へんのです。
せやからうまく焼き上がるように 「頑張りぃ」…。
うまいこと焼けたら 「ありがとう」。そう言うてきました。
夢中でやってきました。
それで 10年か…。十何年…そういう心で そういう気持ちを作品に。
そうかあ…。
「頑張りぃ」「ありがとう」か…。
これ 花瓶の図柄です。えっ 見して 見して。
わあ~! すてきやん すばらしいやん。楽しみやなあ。 うわ~。
ほな 早速 作陶します。
完成したら終わりやな。何がです?
一緒に住むの そこまでや。
あっ うち 準備もあるしいっぺん神戸 帰ってくるわ。
準備って…。パリ行くねん。
パッ…!フランスのパリや。美術館 巡ってこよう思てな。
え~ すごいな。もっともっと人生を豊かにする旅やでえ。
アハハッ すごい。
一緒に行くか?
えっ。
(武志)次世代展…。
(掛井)研究生に勧めてるんや。皆 腕試しに応募する言うてるわ。
(武志)俺には 試すような腕まだないです。
作りたいもん作ったらええんや。ここ来てから 何も作ってないやん。
信楽来て 手ぇ止まってしもうてるやろ。
親は親 子は子ぉ言うたけど…いざとなるとそう簡単に割り切れへんか うん?
そんなことない思てます。
失礼します。
(戸が開く音)はい いらっしゃ…。
(学)何やねん…。(大輔)座れや。 座れや。
(大輔)座れ…!(学)分かったって。
おっす。おっす…。
(大輔)こっち向けや。何や 大輔 学校の先生みたいやな。
って もう学校の先生か。 ハハッ。
お~い おもろないボケツッコミ一人ですんなや。
怖いな もう。
ほれ はい。 で? 何があったんや。
平和的解決しようや。何で怒ってんの。
何で俺にだけ秘密にしてんねん。
気ぃ遣われて惨めやんけ。
何で言うてくれんかった彼女いること。
えっ 彼女!?
ほやけど すごいな。 急に 来てくれ言うて来てくれるもんなんやな。
そら お前 彼女やしな。
彼女いうのは 急に 来てくれ言うたら来てくれるもんなんか。
えっ 武志もしかして 大学ん時 そういうの…。
いや… お… おらんことないよ 別に俺かて人並みぐらい… 大輔こそ。
ボール…。
(真奈)あ…。あっ…。
(真奈)こんにちは。あ… こんにちは。
研究所で働いてる…ごめんなさい お名前…?
あっ 言うてませんでしたね 石井です。
あっ 石井さん。石井真奈さん?
はい。知ってんの?
いや 中学ん時の。俺らが1年の時 3年のテニス部の部長や!フッ 副部長です。副部長や。
おう… ほんで 何で ここに?
急に呼び出されて。
えっ。 え~ ってことは学と つきおうてるいう…。
アハハハハ… 違います。うちやのうて 後輩です。
(芽ぐみ)お待たせ~。 あっ 先輩!あ~。
武志。 大輔。 ようやっと会えたなあ。
芽ぐみ!?おう 半年前からな。
隠さんと はよ言え言うてたんやけどな。
うちが間を取り持ったんです。テニス部の石井先輩。
ちょ… ちょっと待っ…ちょ… ちょっと整理させてな。
ちょっと待って… 芽ぐみやんな?
芽ぐみや。(武志)熊谷芽ぐみ?
熊谷芽ぐみや。
回想 (芽ぐみ)食べ終わったらなあ武志 いじめてええ?
ここと ここ…?おう。おう。
おう…。
狭っ! 信楽て…。いや 怖っ!なあ… こんな…。
信楽… めっちゃ怖いやん 信楽。ちょっと やめろや…。
次世代展?うん。 掛井先生にな 勧められてん。
応募するん?う~ん…。
お母ちゃんむか~し応募したことあったわ。
そうなん?うん。
まあ 箸にも棒にも引っ掛からんかったけどな。
うそやん。ほんまや。
お母ちゃん 最初から すごかったやん。
何や 最初から すごいて。才能あったしなあ。
見てきたようなこと…。
言うてたもん。誰が。
いつ言うてた?
たぬきそば食うた時 お父ちゃんが…。
うん。
なあ 次世代展 ほんまに落選したん。
したでえ。 何やったかな… う~ん「春の何たら」いう題名付けてな 応募した。
あかんかった。そっから応募してないなあ。
何で?何で… う~ん…金賞取ろう思たこともあったけど…穴窯に気持ち持ってかれたからかなあ…。
お母ちゃん ほんま穴窯のこと以外頭 回らへんな。
よっぽど楽しいんやな。楽しいでえ。
自然のまま焼き上げることの面白さたるや。
ごめんな。えっ?
いや… 穴窯継いでやれんで。
また そんなこと。もう何とも思てへんがな。
もう そっち行って待っとき。うん。
小池さんは?ああ神戸戻るいうて何や 準備する言うてたな。
う~まっ! なに この肉。
ええ肉やろ。うん。改めてお礼言うときや。
信作叔父さんにもな顔 出せんで すいませんでした言うときぃ?
珍しく来てたんやし。 お父ちゃんもな。
ごほっ!(むせ返り)
何や 芝居くさっ。(せきこみ)
えっ ほんまなん?ちょっ 待って…。えっ ほんまに むせてんの?
うわっ…。あっつい!大丈夫か?
(せきこみ)
信作叔父さんが連れてきたんや。何で!?
武志来る思たんちゃう。 知らんけど。
何で そんなこと 今 言うん?えっ。
いやいや 何で さっき帰ってきた時すぐ言わへんの。
その日でもええ いや その夜でもええその次の日の朝でもええ。
何で そんなこと 今 言うん!
あ… お母ちゃんお父ちゃんと会うたんや。
会うて 飯? 肉? 一緒に食うたんや。
一緒に…? うん みんなで。
な… そういうこと できるんか?
できるいうか… うん… でき…うん まあ で… できた。
いや できるんかい 2人~!
もう! 平気で会えるんやったらそう言うてくれや。
平気…。俺が どんだけ!
どんだけ 気ぃ遣うてたことか!もう~!
そんなさ… 2人で会えるんやったらそんな 言うてくれれば 俺だって…。
気付いてあげられませんでした。
恐らく ずっとお父ちゃんに会いたかったのでしょう。
♪~
ごめん。
うん?
気付いてやれんで ごめん。
あ…ううん。
♪~
うまっ!
いっぱい入れといてや。うん。