トゲチョウチョウウオ
全長 20㎝
チョウチョウウオといえば、キンチャクダイ類とならんで海水魚界の王道を行く魚たちである。 世界中で100種類以上が知られ、ヒラヒラと舞い踊る姿は世界中のダイバーやアクアリストたちを楽しませてくれている。 それほど有名であるにもかかわらず、中には水深100m以深に住むものや、未だに生きている姿を人目にさらしたことがないスーパーレアなものまでいる奥の深い魚たちだ。 水納島でチョウチョウウオといえば、真っ先に思い浮かぶのが、写真のトゲチョウチョウウオだろう。 個体数の上では他のチョウチョウウオの方が多いかもしれないけれど、リーフの中、海水浴場でもフツーに観られるし……
白い砂地の上でも、いかにも南国の海、という雰囲気を演出してくれる。
砂地の根に立ち寄ることもあり、サンゴや付着生物をツンツンしている。
いつでもどこでも仲良く2人でいる姿に出会えるトゲチョウチョウウオ。 珍種を追い求めるベテランダイバーのみなさんにはとうに相手にされなくなっているものの、そうでない方にはいつもそのトロピカル光線をいかんなく発射し、見る者を南国ムードで包み込んでくれる。 ただしドロップオフなどの環境ではなかなか見られないので、やはりこのチョウチョウウオは砂地の代表選手と言っても差し支えない。 チョウチョウウオ類はたいていペアで生活しており、このトゲチョウチョウウオもいつも仲良く2人で散歩している。 しかし繁殖期なのだろうか、やたらとトゲチョウが集まっていることがときどきある。
仲良く群れているわけではなく、トゲチョウだけになにやらトゲトゲしく、3組のカップルが何かを巡ってケンカをしているような雰囲気に見える。 互いの縄張りのモンダイなのだろうか。 夏から秋口になると、彼らのチビチビの姿が観られるようになる。
色彩的にはオトナと大して違わないものの、背ビレの先端が丸いままで、眼状斑も割合的に大きめだから、やっぱりカワイイ。 もっとも、幼魚時代はインリーフで過ごすようで、桟橋脇でチラリホラリと見ることができるのに対し、通常のファンダイビングをするようなポイントでは出会う機会はほとんどない。 幼魚ならむしろ、秋の伊豆あたりのほうがダイビング中に出会う機会が多いことだろう。 ※(2019年12月) 水納島の通常のボートダイビングではなかなか出会えないトゲチョウのチビながら、上の写真くらいのチビなら秋以降のインリーフではよく出会える。 なにしろインリーフのサンゴ群落は、チョウチョウウオ類のチビターレにとってパラダイスなのだ。
肝心のトゲチョウの顔が切れちゃったけど…。 ただし秋以降に出会えるのは3~5cmくらいに育ったチビで、夏の初め頃チビチビが出始める頃に観られ始める激チビにはなかなか会えない。 ところがこの冬(2019年12月)ついに、人生最小級のトゲチョウチビターレに出会うことができた。
額(?)のラインの丸みが、このチビチビが1cmほどであることを物語る。 さすがにこれくらい小さいと、カメラを向けるとサンゴの枝間からなかなか出て来てはくれないけれど、顔を出してくれるまで、ジッと待っている甲斐があるあどけなさ。 夏とは違って低い水温で寒さが身に染みても、こんなチビターレに出会えれば心はホカホカになるのだった。 |