船内は“外国”の「ダイヤモンド・プリンセス」~日本政府の対応が難しい理由
日本政府がコントロールできる状況ではない。
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月11日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。新型肺炎の死者1,000人超という中国政府発表について解説した。
新型肺炎、中国の死者1,000人を超える
中国政府の発表によると、新型コロナウイルスによる肺炎での死者は前日に比べて108人増え、1,016人に達したことがわかった。亡くなった人の数が前日と比べて100人以上増えたのは初めてで、感染者も4万2638人に上っている。依然として事態の悪化に歯止めがかかっていない。
森田耕次解説委員)11日午後入ってきた情報で、湖北省武漢市から日本政府のチャーター機で帰国した日本人男性2人が新たに新型コロナウイルスに感染しているのを確認したと厚生労働省が発表しました。この2人は帰国直後の検査では陰性でしたが、その後発症し、再検査で陽性と判定されました。2人の男性のうち、40代の男性はチャーター機の第2便で帰国し、お子さんと一緒だったためにその後自宅で待機していたということです。もう1人は50代の男性で、第1便で帰国し、千葉県のホテルに滞在していました。
野村)いろいろな方がいろいろなルートから感染されているので、それをしっかりと確認していって、どこに感染の可能性があるのかをしっかりと見極めなければいけません。他方、この状況になるとかなりの確率で国内でも感染する可能性があるということも前提に、いろいろな対応策も考えなければいけない時期にきているのだと思います。
外国船籍「ダイヤモンド・プリンセス」は日本政府がコントロールできない
森田)「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染ですが、厚生労働省は10日、65人の感染が新たに確認されたことを発表して、これでクルーズ船では検査したのべ439人のうち135人の感染が判明したということで、なかなか感染の拡大が止まらない事態になっています。船のなかで待機しているおよそ3,600人の健康状態については厚生労働省が経過観察していまして、終わるのは19日以降になる見通しです。国内で感染が広がらないように、下船の際に全員の検査をすることも検討しているということです。
野村)勘違いされている方がいるのですが、基本的には検疫法という法律があって、しっかりと検疫をしないと船から上陸させることはできないというルールになっていて、しかもあの船は日本の船ではありませんので、船内は外国なのですよ。ですから、日本政府がコントロールできる状況ではないので、日本のやり方が後手に回っているというご意見がありますが、なかに入って掃除をしたりということが日本政府にできるわけではないのです。日本政府がいまやっているのは検疫で、その検疫が終わっていないので留め置いていたという状況なのです。
森田)薬が足りないから持って行くということは可能なのでしょうけれども。
野村)それは人道的な配慮からいろいろなお手伝いをすることができますし、もちろん外国船籍の船であっても寄港地で食料提供などはできますから、そういう形での対応策はしていますが、あの船のなかの人たちをどうするかというのは法律に基づいて、検疫が終わるか終わらないかというところで判断しているのです。
第1便の帰国者、12日にも帰宅可能か
森田)千葉県勝浦市のホテル三日月に滞在しているおよそ170人の再検査が11日に始まり、この検査結果が12日にも出る見通しということで、陰性が確認できれば帰宅が可能ということですから、一部の希望者は12日中か13日中にはホテルを出ることができるのではないかという見通しになっています。
野村)こちらに対しても、地元の方々の応援メッセージなどが海岸に描かれるなどして、みんながご苦労されている方に心を寄せていますので、無事に戻る方々に対しては、検査が終わっているのだということを理解して対応して欲しいです。
中国政府は地方政府の責任に問題を矮小化すべきでない
森田)一方で、中国本土の死者が1000人を超えました。1016人で、感染者が4万2638人ということで、1016人の死者のうち湖北省の死者が974人ということです。中国政府によりますと、湖北省の衛生健康委員会の幹部2人が免職になったということで、どうも感染拡大の責任を取らされたということです。
野村)武漢の医療体制や医療対応に問題があったことは間違いないと思うのです。いちばん最初に武漢で発症している人がいたにも関わらず、大規模な宴会をやってしまったということがあって、それが感染を拡大させたという見立てがあるのです。ただ、ここで注意しなければいけないのは、本当に武漢だけの責任なのかということです。結局はとかげの尻尾切りになっている可能性があります。中国全体の衛生策として、国の政策に問題があったのではないかということを議論しなければいけないのですが、なんとなく地方政府の初動対応が問題だったということに集約されてしまっているということが問題を矮小化しています。武漢だけの問題に留めようということが、武漢だけを封じ込めて人を出させないようにすることになっているので、中国の対応は全体的に考え直していただかないといけない点があると思います。とにかく症例がたくさんあるわけですから、そこでいったい何が起こっているのか。それが世界中で蔓延しつつあるこの病気に対してみんなが立ち向かっていく貴重な情報なわけです。それをきちんと発信していって欲しいと思います。
Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.