新型コロナウィルスは、リンクの追いきれない感染が国内で確認され新たなフェーズを迎えた。たとえ感染しても死亡者を出さないように治療体制を整える国内体制の強化が一層重要になる。但し、水際対策は失敗したのでもはや水際対策は意味はないという意見があるが、それは違うと思う。専門家によれば、ウィルスは「かかるべき人」がかかるまで感染が続くそうだ。かかるべき人が全部感染してしまうとウィルスは増殖すべき場所がなくなり段々弱体化していく。この「かかるべき人」の範囲を狭める上で水際対策は引き続き意味をもつ。同じく、不要不急の移動や集会を自粛することによる接触の機会を減らすことや危険な状況の隔離も意味を持つ。が、私は、医療の専門家ではないので、医学的見地からの新型コロナウィルス対策は専門家に譲る。

 

私が訴えたいのは、レピュテーション・コスト(評判が地に落ちることによるコスト)である。今、日本の新型コロナ対策に対する世界からの評価は極めて厳しい状況にあると自覚する必要がある。私は、関係者は実に献身的努力をしているし、日本の医療水準は高いので、他国に比べて日本の状態がそこまで危険かといえば必ずしもそうではないと思う。(たとえば、カンボジアで感染者1名というのはとても信じられない。多分検査をしていないだけなのではないか。)しかし、実際はどうあれ、「日本政府の対応は後手で緩く、きちんと事態の統制ができていない」と世界に認識されている。日本の「評判」(reputation)が落ちているのだ。その結果、日本自体が中国同様、世界からの拒否対象国となりつつある。

 

中国全土を入国拒否対象にしていないこともあるが、何と言っても一番の原因は、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の感染拡大だ。国内感染はまだ73人、死亡者1名に抑えられている(他2名の死亡者は正確にはクルーズ船感染者である)のに、600人を超える感染者がクルーズ船で発生したこと、検査は2回して陰性を確認した人だけではあるものの、そのまま下船させたことにより、日本の印象は格段に悪くなっている。今や、欧州では日本人は中国人同様警戒対象だ。日本開催の会議やイベントは海外からキャンセル。観光客も激減している。日本を入国拒否対象にする国もある。

 

英国船籍で米国企業が運営しているクルーズ船の感染拡大の責任を全部日本がしょい込んでしまっている。もともと日本に寄港する前に感染は始まっていたわけであり、日本が全部の結果を負うような恰好になっているのは不本意でもある。

 

本来なら、寄港拒否しても良かったはずだが、日本人が多いから受け入れた。その判断をした時点では、船内での隔離が可能だという前提でそのような判断をしたものだと思うので仕方ないとも思う。

しかし、外国人については、最初から、外国人の国籍国が早く迎えにきてくれということを日本政府から呼びかけるべきであった。何も、ただの寄港地である日本が外国人の健康についてまで責任を負う必要はない。そのような発信を行うことにより、「日本が負うべき責任じゃないのよ。この船は英国船籍で米国企業のクルーズなんだから。」ということで日本とクルーズ船を切り離すことができたと思うし、実際に対象者を減らして日本側の負担を減らすことができる上、船内で閉じ込められて不満を漏らす外国人がいなくなれば、NYTやイズベチヤが本クルーズについて書くニュース・ソースも減ったはずだ。ということで党内の対策会議で私はこの点については訴えてきたが、結局、米国はじめ各国は、今や、危険な船から自国民を救助にいくといった格好になってしまい、関係者がこれだけ献身的な努力をしているにも関わらず、日本政府のハンドリングがいかにもお粗末であったかのような印象を与えてしまっている。本当に残念だ。

 

船内での隔離が相当困難であることが判明した時点で後付けで批判するのは簡単なことであり、その時その時は一生懸命諸般の事情を総合的に判断して行動を決断したと思う。が、宣伝戦が一貫して下手すぎるというか、そもそもそのような意識が欠如していたように思う。クルーズ船に対しても、国内においても然るべき措置を取っていることについて、英語で発信するべきだ。たとえば、日本寄港以降に感染拡大したわけでなく、もともと日本寄港前に感染していた方々が発症しているのであり、日本の隔離により拡大は抑えられていると示せる証拠があるなら、それは日本語だけでなく英語でも発信するべきだ。ただ、紙を巻くだけでなく、英語で「専門家が」会見を行うべきだ(通訳を使えばいい。)。

 

2.日本を「緩い国」と認識させる理由となっているもう一つが水際対策の不徹底である。

米国や豪州やロシアやシンガポールなどが軒並み中国全土を入国拒否対象とする中、世界で2番目の感染者数がありながら未だに入国拒否対象は湖北省と浙江省に限定されているのは理解できない。対中配慮とビジネスに対する配慮かもしれないが、短期的には損失を減らせたと思っても、「日本は対策がなっていないので安全ではない」と思われることのコストは、結局、観光客が来なくなるにとどまらず、ひいてはオリパラ開催が危ぶまれることにつながる。そうなれば、経済的損失も日本の国際的評価も数か月の我慢とは比べ物にならないマグニチュードになってしまうだろう。

 

3.いかにして日本に対するパーセプションを変えるか。

日本は東京オリパラ開催国である。オリパラ前に、日本政府は新型コロナに果断に適切に対処しており事態はアンダーコントロールだと「世界が」認識するようにイメージが転換させなければならない。そうでないと、本当に、東京オリパラの開催が危ぶまれるだろう。

 

それでは、日本に対する評価をいかにして変えるか。

 

中国全土入国拒否だが、人道的な理由(家族の交流)とかビジネス上どうしても必要な場合などは例外的に許可するといった体制を組めばいい。そして、発表自体は、基本「中国全土を入国拒否対象」として対外発信することだ。だいぶ印象も変わるだろう。

 

エアロゾル感染については、一番言いにくい中国保健当局が可能性があるといっているのだから、エアロゾル感染することを前提に考えるべきだ。そうすると、やはり集会などについては、できるだけ自粛するべきだということになるだろう。

 

加藤大臣は、先ほど、「感染拡大を防ぐためには、今が重要な時期」と正しい指摘をし、「開催の必要性を改めて検討してもらう」ように要請した。が、「一律の自粛要請を行うものではない。」とわざわざ言う必要があったのだろうか。マスコミは「一律の自主規制を行うものではない」という部分だけ強調して報道している。これでは、また、日本は本当に危機意識がないな、と誤解されないか心配だ。むしろ、「基本的には〇〇人規模以上の集会は自粛してもらいたい。しかし、どうしても開催する場合は以下以下と言った諸点に気を付けてもらいたい」ぐらいネガポジ入れ替えた発表の仕方にすれば良かったように思う。結局、突き詰めれば同じないようなのだけれど。

 

 今回の新型肺炎が日本経済に与える影響が本当に心配だ。終息までどれぐらいかかるかわからないが、テレワーク、遠隔診療、面談のオンライン化、ビデオ会議システムなどあらゆる手段を用いて、不要な接触を減らすことは必要だ。中国では、マスク不着用では店にも入れないが、日本はそうではない(むろん中国の危険度と日本とは全然違うとはいえ)。この1,2か月これ以上ないぐらい厳しい措置を取るべきだ。一定規模の集会とか他地域の人を集める集会とか、一定の要件は加えても良いが、一定規模集会の一律自粛は早く決めた方がいいと思う。

そうでないと日本に対して向けられている世界の見方は変わらないかもしれない。日本が「緩い国」「危機に対して適切なコントロールが取れない国」と思われるリスクは何も感染症に限らないと思う。テロだってサイバーだって安全保障だって根幹は同じことだ、最悪の事態を想定して果断な措置を取れるかどうかということなのだから。

 

危機意識がないこと以上に、「危機意識がないと見られること」がリスクなのだ。

 米国がドローンによりイランの革命防衛隊の英雄ソレイマニ司令官を殺害した。これが金正恩委員長に与える影響について。金正恩委員長が合理的リアリストであるという前提に立てば、トランプ政権を舐めてはいけないという教訓と同時に核放棄は絶対にできないという教訓を得たのであり、今後の米朝協議については、プラスマイナス両面あるが、相対的にはマイナスが多いのではないか。

 何より、トランプ大統領は予測不可能だ(トランプ大統領自身の論理の中では間違いなく一貫しているとは思うが)と捉えた可能性が高いと思うので、そこで命を懸けたディールはできないと判断するのが自然だと思う。なので、北朝鮮は今後は年頭の発表どおり、トランプ政権の方針に余り左右されることなく逃げ切り作戦(時間稼ぎをして最終的にパキスタンのごとく核兵器国としての現状を認めさせる)を主としていくことになるように思う。無論、朝鮮民族はオポチュニストであり、米国が北朝鮮の希望する方向で応じるなら米朝協議を進めて得たい果実をえるよう努力するだろうが、選挙を控えたトランプ政権がリスクを取る可能性も高くないので状況は双方にとっての時間稼ぎになるような気がする。

 

1.米国というかトランプ大統領を舐めると怖いことになるとは思い知らされた。イランとの軍事衝突を死ぬほど避けようとしていたトランプ大統領が最もリスクの高い選択肢を選んだという意味では、トランプ大統領という人物の予測不可能性についても思いを致したことだろう(トランプ大統領自身としては筋は一貫しているとは思うが)。したがって、もともとどう考えていたかわからないが、米国が決定的に重要だと思っている米国の権益を簡単に犯すことはないだろう。具体的にいえば、ICBM能力は既に開発済である可能性があるが、しかし、これを大っぴらに公表するような実験はしないのではないか。米国に北朝鮮というか金正恩攻撃の名分を与えるに過ぎず、ブラフとして使うには危険すぎることになるからだ。そもそもが、米国と正面から戦うような能力は北朝鮮は持ちようがないのだから、そんなリスクを取ることは有害無益だ。

 

2.金正恩は、益々核放棄しない意思を固めたに違いない。イランは、曲がりなりにも、米国ときちんと合意し、その核合意をIAEAの査察も入れて遵守してきた。しかし、米国から政権が変わったら合意を破棄され、しかも攻撃された。これは、①米国と合意をしても破られる可能性がある、②やすやす攻撃されたのは、いざとなれば米国を脅かすことができる核能力がなかったからである、と解するのが自然である。

年明けから目まぐるしい米イラン軍事対立。ソレイマニ司令官殺害直後に書きかけたら、其の後いろいろ起き、時間をおいて書き足したのでわれながら読みづらい。でも、これを書かないと次に行けないのでとりあえず書きます。ご容赦下さい。

 

3日 米国がソレイマニ司令官殺害。イランにおける反米デモ集会勃発。

7日 イランが弾道ミサイルにより米アサド基地攻撃(米国人の犠牲者はなし)

8日 イラン革命防衛隊によりウクライナ民間航空機誤爆

11日 イラン政府が誤爆を認める。(それまで発生から3日間、責任を否定)

 

8日のウクライナ民間航空機誤爆とその後イラン政府が3日間否定した後に一転して誤爆を認めたことで諸外国からのイランに対する同情が減り、国内の対米批判で一致していたイラン国内世論も若干流れが変わり今や反体制運動にも一部流れている。とはいえ、いずれにせよ、中東情勢が米イランの対立を軸により危険かつ流動的になっていることは間違いない。

 

日本にとっては、①中国に精力を注いでもらいたい米国が中東に足を取られること自体が極めてマイナスであり、また、②中東に石油を9割も依存している日本としては中東情勢の緊迫化はエネルギー安全保障の観点からもマイナスである。また、③対イラン政策についての米欧の分断、エネルギーを中東にもはや依存しない純エネルギー輸出国の米国が中東から撤退する方向が加速する、④結果的に、ロシアと中国がその空白を埋めることになるのではないかとの懸念も増している。⑤イランが結果的に核兵器保有に進めばサウジ他の中東諸国も核保有に向かい中東の核ドミノが起きるのではないかという点も懸念される。

 

176名もの乗客乗員全員が犠牲になった民間機撃墜は、イラン革命防衛隊によるミサイル誤射によるものだった。イランによりイラン人が、ついでカナダ人、ウクライナ人が犠牲になった。イランと米国の軍事的対立が深まる中で、結局、エスカレーションと偶発衝突の犠牲になったのは無辜の民間人だ。しかもイランによる誤射で亡くなったのは米国人ではなく、イラン人とその他の第三国の人々だ。犠牲者の無念やご家族の気持ちを考えると余りの悲惨さと不条理に声も出ない。犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表します。

 

いかなる理由にせよ、民間人が巻き込まれることは許されない。イランが非難されるべきは当然であり、被害者に対する全ての責任を取るべきである。しかし、米国がスレイマニ司令官を殺害しなければ今回の事態は起きなかったのだから、事態のエスカレーションには米国にも責任がある。そもそもは米国がイランの核合意を廃棄したところから事は始まっている。無論、米国にも言い分はあり、イランがヒズボラなどの親イラン勢力を用いて中東における影響力を拡大し、反米活動を行っていたということだろうが、それでも、ソレイマニ司令官殺害という手法はプラスが少なくマイナスが甚大な愚策だったと思う。  

 

トランプ大統領は、イランに対し「米国の権益を犯すことは許さない。米国を舐めるな」と警告したかったのだろう。力の空白や隙を見せればイランがそこに進出してくるから。また、トランプ大統領は、イランに対する軍事オペレーションを数十分前に撤回したり、ボルトン補佐官を解任したりとイランに対して軍事的緊張を高めることを徹底的に避けてきたので、来る大統領選挙を睨み、「弱腰と思われる」懸念を払拭したかったのかもしれない。その目的は達成されたが、米国の中東政策はより難しくなった。イランはより強固な反米になり、イラクも反米に。大体、ソレイマニ司令官殺害がどういう状況を招くか、それでもやる価値があるか、十分、専門家や担当者と協議した上で決定したのだろうか。疑問だ。

 

トランプ大統領は、もともと中東に人員や予算を割くことに反対してきた人だ。これだけ面倒な状況になったら、おそらくタイミングを見て、中東から米軍引き上げようとするに違いない(特に陸上部隊は)。

 

トランプ大統領自身が言っているように、米国にとって中東はかつてのような重要性はない。シェールガス開発により、米国は今や純エネルギー輸出国であり、中東に石油を依存する必要性は薄れている。米国が中東に持つ権益は、せいぜいイスラエル(と多少のサウジ)に対する配慮ぐらいのものだろう。あとは、超大国として中東という世界の重要地域に対する発言力影響力をどう考えるかということであるが、「アメリカ・ファースト」というのは形を変えた「孤立主義」であり、アメリカ・ファーストを標榜するトランプ大統領としては大して気にするところではないのではないか。

 

いずれにせよ、イランも米もこれ以上の事態のエスカレーションを避けるべきであり、日本はじめ関係各国は両国に対し自制を求めるようあらゆる努力をすべきだ。米イランの軍事衝突はそれ自体が多大な人的犠牲を伴う危険で悲惨なものとなるだけでなく中東諸国の核ドミノを招くことは必至だから。米国とイランの双方との信頼関係を持つ日本としても果たすべき役割はある。安倍総理の中東訪問にも期待したい。

 

トランプ政権の政策については、毀誉褒貶あれ、中国の脅威に正面から向き合うことにしたことについては高く評価している。が、対イラン政策については核合意破棄からして全く賛同できない。

 

端的にいえば、米国のイラン核合意破棄は、よりイランを核開発に近づけただけだ。イランは今や300キロの制限も守らず、20%の濃縮を行うと宣言している。そして、ソレイマニ司令官殺害という愚策によって、中東はイランだけでなくイラクも反米的になり、より米国や米国民に対するイランの脅威は増したと言わざるを得ない状況になった。国際社会にとっても、中東全体の不安定化や核ドミノにつながりかねないリスクが生じたという意味でマイナスが多い。そして、本来、中国に割くべき米国のエネルギーが中東に取られてしまうことも米国にとっても日本にとっても恐らく世界にとっても多大なマイナスである。

 

この世界は完全ではない。

 

2015年にイランと英米仏独中ロとの間で結ばれた、いわゆる「イラン核合意」は、イランが濃縮度3.67%超のウランを少なくとも15年間製造せず、貯蔵量も300キロ以下とするなど核関連活動を制限する引き換えに欧米が経済制裁を解除することを決めたものだ。

核兵器製造に用いるためには90%の濃縮が必要であり、イランが核合意を遵守している限り核兵器製造はできない。イランはIAEAの査察も受け入れながら核合意は遵守してきた(少なくとも違反したとIAEAによって認められたといった事実はない)。

しかし、トランプ政権は、「この合意はイランの核武装の道を完全にふさぐものではなく、核兵器製造の時間稼ぎをするだけのbad dealだ」と批判し、予告通り離脱し、制裁を再開した。

 

完全な世界はないのだから、時間稼ぎでも数十年に及ぶのなら一定の評価はすべきではなかったか。だいたい、イランが一体どれほどの米国の脅威だというのだろう。

英独仏が核兵器への復帰を求めている。米国もイランも今更核合意に戻ることはできないかもしれない。しかし、名前や体裁は適当に変えても良いが、「核合意」的なもの以外に着地点はないように思う。でも、米国は再交渉も面倒になったらただ単に中東から手を引くだけかもしれない。

 

イランは制裁により経済が疲弊しているところにきて、ウクライナ機誤爆とその隠蔽により国内体制が揺らいでいる。そのイランが対外的により強硬な方針に出て国内の不満を反らそうとするのか、または、対外的負担を避けて国際社会との融和の道を選ぶのかはわからない。米国はイランの体制崩壊実現まで達成したいと思っているのか。そこまでの関心はトランプ政権にはないように思う。それに、イランは意外と民主的な国だ。イランの体制はイラン国民の大半がどう思うかにかかっているのであり、外からいくらプレッシャーをかけてもそう変わるものではない(きっかけになることはあっても)。トランプ大統領自身は、中東なんてそもそも大して関心がないのではないか。直近ではイランとの軍事的緊張が高まる中、トランプ大統領の本来の意図に反して増派すら必要となるかもしれないが、しかし、長期的にいえば、超面倒な状況を自ら作り出したことにより、米国は中東からどんどん手を引いていくことになると思う。日本もいい加減中東依存度を減らすことに真剣になるべきだ。これから世界は益々流動化していく。自己の生存のためには、不安定な地域や国への依存度はできるだけ減らし、リスク分散をしてくことが重要である。それは中東のみならず朝鮮半島しかり、中国しかりである。そして、日本にとって相対的に信頼できる国地域との連携を主にしたエコシステムを作ることである。