日本原子力発電が、原子力規制委員会の審査にかかわる敦賀原発敷地内の地質データを都合よく書き換えていた。再稼働を急ぐあまりの「禁じ手」か。審査の根幹を揺るがす背信行為と言っていい。
日本原電は、日本の原子力事業草創期の担い手として、沖縄を除く九電力と政府系の電源開発(Jパワー)が出資して設立され、一九六六年、国内初の商業用原発である茨城県東海村の東海原発の操業を開始した。原発専門の電力卸売会社である。
現在保有している原発は、東海村の東海第二と福井県敦賀市の敦賀1、2号機の計三基。しかし、東海第二は3・11の津波による被災原発である上に、首都圏の人口集積地に近く、再稼働の住民同意を取り付けるのは困難な状況だ。
敦賀1号機は、老朽化による廃炉が決まっており、2号機は原子力規制委員会による再稼働に向けた審査の過程で、原発直下に大地震の原因となる活断層が走る恐れを指摘されている。活断層と断定されれば、廃炉が決まる。
原電は、過去に提出した資料を書き換えて、審査会にこっそり諮り直していた。
例えば2号機敷地内のボーリング調査のデータについて、地層が固まっていない状態を示す「未固結」を、固まった状態を示す「固結」に書き換えていた。「顕微鏡で分析し直した結果」という。
このように断層の活動性につながる地質の軟らかさを否定するような記述の書き換えは、少なくとも十数カ所に上るという。
審査会では、規制委側が「触ってみて『未固結(軟らかい)』としたものが、顕微鏡で見たら『固結(硬い)』となるんですか」と詰め寄る場面もあった。
原発に関する膨大かつ複雑なデータは、ほぼ電力事業者側の独占物だ。規制委にしろ、司法にしろ、電力会社が提出する資料を基に安全性を判断するしかない。
敦賀原発の審査資料に関しては、これまでにも千カ所以上の不備が指摘されている。
電力事業者のデータを信頼できないということは、原発そのものを信頼してはいけないということで、審査を軽視するということは、安全を、ひいては人命を軽視するということだ。
福島の大事故を経てもなお、自ら被災してもなお、命を軽んじるような事業者に、原発を動かす資格があるはずもない。
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