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【社説】

新型肺炎対策 政府の緊張感が足りぬ

 国民の命や健康を守る意識が欠けていた。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を三閣僚が公務以外の理由で欠席した。国内では新たな死者も出た。緊張感を持ち、対策を進めるべきだ。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスによる肺炎の集団感染で、乗客の八十七歳の男性と八十四歳の女性が死亡した。いずれも持病があり、検査で感染が確認され、医療機関に搬送されていた。乗船者の死亡は初めてだ。

 政府はまず感染拡大を防止する検査、検疫体制の強化と、感染者の重症化を避ける医療体制の充実に全力を挙げるべきだ。クルーズ船での感染防止策が適切だったか否かも検証すべきは当然である。

 国民の命と健康を守ることは、政府が最優先で取り組むべき課題だ。しかし、政府が新型コロナウイルス対策に本気で取り組んでいないのでは、と疑われても仕方がないことも明らかになった。

 十六日、首相官邸で開かれた全閣僚が出席する新型コロナウイルス感染症対策本部の会合に、三閣僚が公務以外の理由で欠席していたのだ。

 森雅子法相は福島県での書道展に、萩生田光一文部科学相は東京都内での消防団関係者の叙勲祝賀会に、小泉進次郎環境相は神奈川県横須賀市での後援会の新年会にそれぞれ出席していた。いずれも地元選挙区での政治活動で、対策本部の会合には副大臣や政務官を代理出席させていた。

 この会合で安倍晋三首相は、診療体制の整った全国の医療機関について、現状の七百二十六カ所を八百カ所に拡大すると表明し、加藤勝信厚生労働相ら関係閣僚らに「国民の命と健康を守るため、引き続き打つべき手を先手先手で打ってもらいたい」と指示した。

 代理で出席させたため、危機管理上は問題ないとの判断だったのだろうが、国民が懸念する新型コロナウイルス対策よりも、自分の選挙区での政治活動を優先させたことは、感染拡大を深刻に受け止めていないと指摘されても仕方がない。首相は私用と分かっていながら欠席を容認したのか。

 日本政府の感染症対策には、海外からも厳しい視線が注がれている。閣僚の緊張感の欠如は、日本の新型コロナウイルス対策全体の信頼性をも損ねる。

 感染者や死者をこれ以上、増やさないためにも、首相や閣僚はこれまで以上の緊張感と使命を持って、対応に当たらねばならない。

 

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