フエヤッコダイ

全長 10cm

 チョウチョウウオの仲間はどれもこれもトロピカル光線を出しまくる。なかでもこのフエヤッコダイのそれはスーパーストロング級だ。

 海中でこの魚が泳いでいるのを目にするだけで、なんだか心ウキウキするようなシアワセなムードに誰もが包まれていく。

 その独特のフォルムもさることながら、2、3匹で楽しげにサンゴの周りをヒラヒラと泳ぐ様子が、多くの人々が常日頃思い浮かべるトロピカルシーンに見事に合致するのだろう。

 沖縄であればどこで潜っていても当たり前に観られるこのフエヤッコダイだから、もちろん水納島にもたくさんいる。

 その長い吻はサンゴの枝間の小動物を食べるためらしく、サンゴからサンゴへヒラヒラと舞うように渡りながら、ツンツンとエサを探している。

 その姿はまさに菜の花畑のチョウチョウのようだ。

 …なのになぜ、ヤッコでタイなの?

 ところで、本種の産卵を一度だけ目にしたことがある。

 日没後の、すでに海中は真っ暗になっている時間帯でのことで、根のそばにいたペアが寄り添うように上昇しはじめたので、ライトを当てて観ていると、パッと白い花を咲かせた。

 6月のことで、そういえばその頃には、よくお腹ががパンパンに膨れあがっているフエヤッコダイを目にする。

 恥ずかしながらチョウチョウウオ類では、ワタシが産卵シーンを観たことがある唯一の魚なのだった。