アメリカ人のベンがパスタ(ベイクト・ズィティ)を作ってくれた夜の話の続きです。電話でイタリア人とスウェーデン人の友達二人を呼び出したので賑やかになりました。
「冬一郎、言っとくがこれはイタリア料理ではないからな」
思った通り、イタリア人のマリさんが念を押してきました。僕らはアメリカ人のベンの作った高カロリーのアメリカ料理「ベイクト•ズィティ」を囲んで、真夜中だというのにガツガツ食べていました。
「ええ、マリさん。これはアメリカンイタリアン、ですよね」と僕は言いました。マリさんは熱をこめて、
「そうだ!頭のいかれたアメリカ人どもめ、スパゲティにミートボール入れたりだの、瓶詰めソースを使ったりだの…」
「文句があるなら、わざわざ食いに来るな、このイタ公」
スウェーデン人のミカさんが割って入りました。彼はとても優しい人なのに、マリさんに対しては毎回なぜか大変辛辣です。マリさんは全く怯まず、
「あとな、冬一郎、このヴァイキング(北欧の海賊)の大男もお前に料理を教えてるらしいが、パスタだけは習うなよ!」とやり返しました。「見ろ!スウェーデン人ってのは、ほっとくとパスタにケチャップかけて、何もかも台無しにしやがるんだ!」
「ほっとけ」
ミカさんはケチャップをズィティの上にことさら盛大にかけて食べ始めました。マリさんはこれに対して「信じがたい悪」だの「パスタへの犯罪」だのと叫んで大げさに嘆きました。この2人、僕が見るたびに喧嘩してるんだけど、仲悪いんだろうか。僕は心配になって、こっそりベンに聞きました。
「この2人さ…仲悪いのか?僕らにはあんなに優しいミカさんが、マリさんにはいつも怒ってるんだけど」
「仲悪い?ははは、まさか」ベンは全く意に介さず笑いました。「2人とも、とーっても仲良しだよ。言いたいこと何でも言って罵りあえるのは、親友の証拠さ」
…ならいいけど、本当かなあ。僕はあまり納得しませんでしたが、黙ってることにしました。
実言うと、ミカさんとマリさんの喧嘩って、お互いの故郷のステレオタイプをなじりあうような内容が多くて、聞いてる分にはちょっと楽しいのです。
スウェーデンの人は本当にみんなパスタにケチャップかけるのかな。それともミカさんが変わってるだけかな。どっちにしろ僕はミカさんが好きだけど。
この夜の話、続きます。とても長い夜だった。
ズィティシリーズその1↓
アメリカンパスタレシピシリーズ↓
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