個人事業主が、アルバイトをし、副収入として給与やボーナスを受けているときは、毎月の給与から所得税を天引きされて支給されます。
確定申告では、事業収入と給与収入その他の収入を合算し、それぞれの収入から経費等を差し引き、最終的に課税すべき所得金額が決まります。
それでは、個人事業主はアルバイトの給与をもらっていても、年末調整を行わず確定申告だけすればいいのでしょうか? それは、アルバイトの収入の種類と収入額によって異なります。
個人事業主がアルバイトをした場合の確定申告について、留意点を示します。
個人事業主がアルバイトで得た給与は確定申告が必要?
個人事業主は、アルバイトで得た給与も含めて、最終的に確定申告で全ての収入と経費を精算します。
給与所得者の源泉徴収は義務付けられているため、アルバイト先があらかじめ所得税等を給与などから天引きして、代わりに所得税を払います。これを所得税の源泉徴収と呼びます。
そして、1年間で源泉徴収された税額と納めるべき税額の差額を年末に清算します。
これが年末調整です。
源泉徴収税額は、下記の「給与所得の源泉徴収税額表」に従い、毎月源泉徴収します。
給与が主な収入で扶養家族がいる場合は“甲欄”、それ以外の副収入の場合は税額の高い“乙欄”の税額が適用されます。
“甲欄”の適用を受ける場合は、あらかじめ扶養控除等申告書を提出し、年末調整することが要件になります。
※給与所得の源泉徴収税額表(一部略) 参考:国税庁
複数のアルバイトと個人事業主を掛け持ちした時の確定申告の仕方
年末調整を行うのは主たる勤務先1社に限られます。複数の会社でアルバイトをする場合は、最も収入が多いアルバイト先の1社で年末調整を行います。
アルバイトの中でも、給与ではなく原稿料や講演料などの名目で受け取る収入は、個人事業主の事業収入に入れます。
これらの収入を得るために使った交通費や調査資料費などの経費も、個人事業の事業経費に入れます。
では、例を挙げて示します。
(事例)青色申告 扶養家族なし 40歳以下の場合
(個人事業のほか、3社でアルバイトをしている。アルバイト先のC社で社会保険に加入、社会保険料290,000円とする)
主事業
事業収入 300万円
経費 150万円
アルバイト先のA社
A社 原稿料 50万円
経費 20万円
源泉所得税(※1) 5万1,050円
原稿料や講演料が個人事業主へ支払われる場合は、下記の源泉税率表に基づき、あらかじめ源泉所得税を差し引かれます。
(※1) 原稿料・講演料の源泉所得税率
アルバイト先のB社
B社 給与 60万円
源泉所得税 0円
アルバイトの年収が103万円以下の時は課税所得が0となるため、毎月の給与から所得税を源泉徴収しない場合があります。
乙欄の計算で約3%の源泉所得税を差し引く会社もあります。
アルバイト先のC社
C社 給与 240万円
源泉所得税 4万6,920円(甲欄)
15万2,400円(乙欄)
(社会保険料控除後の給与月額 17万6,000円 として試算)
<年末調整>
所得税額の計算=課税所得(年間給与 - 給与所得控除 - 所得控除)x所得税率
{240万円 - (240万円 x 30% + 18万円) - (29万円 + 38万円)} x 5% = 4万1,500円
年末調整は、アルバイト先のC社でします。
年間給与全額に税金がかかるわけではなく、非課税扱いの費用を差し引いた(控除)金額が課税所得となります。
1.給与所得控除:サラリーマンの必要経費として一定額(給与所得控除)を差し引きます。
240万円 x 30% + 18万円 = 90万円 (※2)は、給与所得控除として税金がかかりません。
給与所得控除後の金額は、240万円 - 90万円 = 150万円となります。
2.所得控除:社会保険料29万円と基礎控除38万円の合計67万円が非課税です。
課税対象額は、83万円(150万円 - 67万円)となります。
3.源泉徴収額:税率5%で4万1,500円(100円未満切り捨て)(※3)、(※4)となります。
年末調整では、支払い済みの源泉所得税4万6,920円(甲欄)または15万2,400円(乙欄)の差額が12月給与で戻ってきます。
(※2) 給与所得控除の計算
(※3) 源泉徴収額の計算
(※4) 所得税の計算
<確定申告まとめ>
確定申告では、年間の収入と費用から課税所得を出し、所得税を計算します。
今回は、見出し“複数のアルバイトと個人事業主を掛け持ちした時の確定申告の仕方”にて記載した税額を参考に計算しています。
求めた税額は、確定申告書 Bのそれぞれの欄に記入してください。
<確定申告書B第一表>
「1事業収入」 :「①事業収入」+「②アルバイトA社原稿料」 = 350万円
「2給与」 :「③アルバイトB社給与」+「④アルバイトC社給与」 = 300万円
「3事業所得」 :「1 事業収入」 - 事業経費(「①経費」+「②経費」 = 170万円) - 青色申告控除65万 = 115万円
「4給与所得」 :「2給与」 - 給与所得控除 108万円 = 192万円
<確定申告書B第二表>
「11源泉徴収税額」 :所得の内訳の「11源泉徴収税額欄」に記載する
所得の内訳について、所得の種類、支払者、収入金額、源泉徴収額を記載します。(※5)
(※5) 所得の内訳
<所得税の計算>
収入合計 :「1事業収入」 + 「2給与」 = 650万円
5源泉税 :9万7,970円
6所得合計 :「3事業所得」+「4給与所得」 = 307万円
7所得控除合計:67万円
8課税所得 :240万円
9所得税額 :14万2,500円(240万円 x 10% - 9万7,500円)
10納税額 :「9所得税額」 –「5源泉税」 = 4万4,500円(100円以下切捨)
年末調整と源泉税で、11の源泉徴収税額 9万7,970円を既に支払っているので、確定申告で納付する所得税は、4万4,500円になります。
なお、試算では省略しましたが、所得税に加えて所得税の2.1%を復興特別所得税として支払います。
確定申告書B 第一表
確定申告書B 第二表
※図表の出典:全て国税庁の書式をもとに著者作成
まとめ
個人事業主は、最終的に確定申告で前年度の収入と経費を確定し、所得税額を計算します。
上の事例で、「扶養控除等申請」をせずに毎月税率の高い乙欄で源泉徴収し、年末調整しなかった場合は、源泉所得税の合計が20万円超となります。
その場合は、確定申告後に「9 所得税」との差額約6万円が払い戻しされます。
これを還付税金と言います。
最終的に、年末調整してもしなくても、確定申告後に算出される所得税額は変わりません。
年末調整や源泉徴収で支払い済みの税額を差し引き、納税または(還付される)税額が決まります。
しかし、源泉徴収と年末調整は、雇用主の義務なので、年末調整をする・しないを勝手に決めることはできませんので注意が必要です。
経営コンサルタント 奥野美代子
独立後は、中小企業診断士とFPのノウハウを生かし、経営者の法人と個人の財務コンサルティングやリスクマネジメント、事業計画策定、マーケティング支援など幅広い支援を行っています。