仕事で注意しなければいけないこと。それは「うまくいったときにどうするか」だ。
うまくいっている人たちは謙虚だったが、だからうまくいっている、もっといえば、うまくいき続けている。
実際には、ふんぞり返る人がいなかったわけではない。しかし、やはり長続きはしない人が多かった。世の中の人たちは、極めてよく見ている。うまくいっているときほど、周囲は注目しているのだと気づかないといけない。
印象的なインタビューがあった。もう20年ほど前になるが、とんねるずの石橋貴明さんに取材する機会を得たのである。
私が学生時代に見ていた人気番組で司会を務めていたこともあり、取材が入ったときにはさすがにドキドキした。まだ有名タレントへの取材はそれほどしていない時期でもあった。
石橋さんはどちらかといえばヒール役で、「ちょっと怖い人なのではないか」と思っていた。しかし、目の前に現れたのは、丁寧な挨拶をする紳士だった。
今でも覚えているが、取材場所となったホテルのスイートルームで石橋さんはソファに腰掛けると、私の名刺をローテーブルの上にちゃんと置いた。そして私が質問をすると、ときどき私の名前を口にしながら応えてくれたのである。
「上阪さん、今のは、いい質問ですね」
「名前を呼ばれて心地良くない思いをする人はまずいない」という話を老齢の経営者から聞いたことがあった。その名前を、テレビの中で見ていた人が何度も呼んでくれるのである。