乃木坂46の白石麻衣が3月25日リリースのニューシングル活動期間をもってグループから卒業することが発表され、今月初旬には彼女が同シングル表題曲でセンターポジションを務めることも明らかになった。
白石は乃木坂46を8年超にわたって牽引してきた中心メンバーであるのみならず、現在の女性アイドルシーンのなかで、最も広く世間に開かれた人物の一人といえるだろう。
白石の足跡が重要なのは、今日の女性アイドルグループにおける個人のキャリアの重ね方として、ひとつの理想的なモデルケースを提示しているためだ。
2010年代、多人数グループに属しながら芸能キャリアを模索するための回路を整備したのは、何よりもAKB48であった。この点についていえば、近年の女性アイドルシーンの中心に立つ乃木坂46もまた、かつてAKB48が舗装した道の上に現れた後発グループである。
ただしまた、特に2010年代の後半にかけて、白石らを中心とした乃木坂46がかつてなく広く受容されてゆくなかで生じたのは、単に外形的に類似したグループ間におけるトレンドの推移ということではなく、いくばくかの価値観の変容を含むプロセスでもあった。
そしてその変容はまた、きわめてポピュラーな存在でありつつ、なお根深い旧弊を抱え込んだアイドルというジャンルを今日、どのように捉えていけるのかという問いを呼び起こすものでもある。
あらためて概観すれば2010年代女性アイドルシーンは、主たる活動の場をそれまでのテレビメディアから、ライブや対面型イベント等の「現場」や、時間・場所を問わず各メンバーがアウトプットする場所としての「SNS」へとシフトさせてきた。
そうした転換を先導したのは、主として多人数グループである。なかでもAKB48やその姉妹グループは、これら「現場」やSNSを駆使して群像劇を展開しつつ、他方でテレビや雑誌、広告など従来型のマスメディアに頻繁に登場することで、社会を取り巻く巨大な存在になった。