神戸大学医学研究科感染症内科の岩田健太郎教授がダイヤモンド・プリンセスに検査のために入船したが厚労省のトップにより一日で追い出されてしまった。船内で起こっていたありえないことを 感染症の専門家として動画内で語っている。
文字起こしは下に載せておく。
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岩田健太郎です。
神戸大学病院感染症内科教授をしていますけれども、今からお話しする内容は神戸大学など所属する機関とは一切関係なく私個人の見解です。
予め申し上げておきます。
今日2月18日にダイアモンドプリンセスに入ったんですけど、1日で追い出されてしまいました。
何故そういうことが起きたのかについて、簡単にお話ししようと思います。
もともとその、ダイアモンドプリンセスはすごくCOVID-19の感染症がどんどん増えていくということで、感染対策はすごくうまくいってないんじゃないかという懸念がありました。環境感染学会が入り、FETP(Field EpidemiologyTrainingProgram 実地疫学専門家養成コース)が入ったんですけど、あっという間に出て行ってしまって中がどうなっているかよくわからないという状態でした。
中の方からいくつかメッセージをいただいて「怖い」と、感染が広がっていくんじゃないかという事で私に助けを求めてきたので、いろんな筋を通じて何とか入れないかと打診してたんです。
そうしたら昨日2月17日に厚労省で働いている某氏から電話がきて、入ってもいいよとやり方を考えましょうということでした。
最初、環境感染学会の人として入るという話だったんですけれども、環境感染学会はもう中に人を入れないという決まりを作ったので、岩田一人を例外にできないということでお断りをされた。
結局DMAT(Disaster Medical Assistance Team 災害派遣医療チーム)、災害対策のDMATのメンバーとして入ってはどうかというご提案を厚労省の方からいただいたので、わかりましたということで18日朝に新神戸から新横浜に向かったんです。
そうしたら途中で電話がかかってきて、誰とは言えないけど非常に反対している人がいると、入ってもらっては困るということでDMATのメンバーで入るという話は立ち消えになりそうなりました。
すごく困ったんですけど、何とか方法を考えるということで、しばらく新横浜で待っていたらもう1回電話がかかってきて、DMATの職員の下で感染対策の専門家ではなく、DMATの一員としてDMATの仕事をただやるだけだったら入れてあげるという非常に奇妙な電話をいただきました。
なぜそういう結論が出たのかわからないですけど、とにかく言うことを聞いてDMATの中で仕事をしてだんだん顔が割れてきたら感染のこともできるかもしれないから、それでやってもらえないかと非常に奇妙な依頼を受けたんです。
他に入る方法はないものですから、分かりましたと言って現場に行きました。そしてダイアモンドプリンセスに入ったわけです。
入ってご挨拶をして、最初はこの人の下につけと言われた方にずっと従っているのかなと思ったら、DMATのチーフのドクターと話をしました。
すると、お前にDMATの仕事は何も期待していないどうせ専門じゃないし、お前は感染の仕事だろうと、感染の仕事やるべきだというふうに助言をいただきました。 これDMATのトップの方です、現場のトップの方。
そうなんですかと、私は兎に角言うことを聞くと約束していましたので、感染のことをやれと言われた以上やりましょうということで、現場の案内をしていただきながら色んな問題点というものを確認していったわけです。
それはもうひどいものでした。
もうこの仕事20年以上やってですね、アフリカのエボラとか中国のSARSとか色んな感染症と立ち向かってきました。もちろん身の危険を感じることは多々あったんですけど、自分が感染症にかかる恐怖っていうのはそんなに感じたことはない。
どうしてかというと、僕はプロなので自分がエボラにかからない、SARSにかからない方法っていうのは知ってるわけです。 或いは他の人をエボラにしないSARSにしない方法とか、その施設の中でどういうふうにすれば感染がさらに広がらないかという事も熟知しているからです。
それが分かっているからど真ん中に居ても怖くない、アフリカに居ても中国に居ても怖くなかったわけですが、ダイアモンドプリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはもうCOVID-19に感染してもしょうがないんじゃないかと本気で思いました。
レッドゾーンとグリーンゾーンというんですけど、ウイルスが全くない安全なゾーンとウイルスがいるかもしれない危ないゾーンというのをきちっと分けて、レッドゾーンでは完全にPPE(個人用防護具)という防護服をつけグリーンゾーンでは何もしなくていいと、こういうふうにきちっと区別することによってウィルスから身を守るというのは我々の世界の鉄則なんです。
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ところが、グリーンをレッドもぐちゃぐちゃになっててどこが危なくてどこが危なくないのか全く区別がつかない。どこにウイルスが、ウイルスって目に見えないですから完全なそういう区分けをすることで初めて自分の身を守るんですけど、もうどこの手摺りとどこの絨毯どこにウイルスがいるのかさっぱり分からない状態でいろんな人がアドホックに PPEをつけてみたり手袋をはめてみたりマスクを付けてみたりつけなかったりするわけです。
で、クルーの方もN95をつけてみたりつけなかったり、あるいはその熱のある方がですね自分の部屋から出て歩いて行って医務室に行ったりするっていうのが通常で行われているということです。
私が聞いた限りではDMATの職員それから厚労省の方、検疫家の方がPCR陽性になったという話は聞いてたんですけどそれはもうむべなるかなと思いました。中の方に聞いたら「いやー我々もこれ自分たちも感染するなと思ってますよ」という風に言われてびっくりしたわけです。どうしてかというと我々がこういう感染症のミッションにでるときは必ず自分たち医療従事者の身を守るっていうのが大前提で、自分たちの感性のリスクをほったらかしにして患者さんとかですね一般の方々に立ち向かうのは御法度これもルール違反なわけです。
環境感染学会やFETP(国立感染症研究所の実地疫学専門家)が入って数日で出て行ったっていう話を聞いたときにどうしてだろうと思ったんですけど、中の方は「自分たちに感染するの怖かったんじゃない」という風に仰っていた人もいたんですが、それは気持ちはよく分かります。なぜならは感染症のプロだったらあんな環境に行ったら、ものすごく怖くてしかたないからです。で僕も怖かったです。
これはもう感染、今これ某ちょっと言えない部屋にいますけど、自分自身も隔離して診療も休んで家族とも会わずにいないとやばいんじゃないかと、個人的にはすごく思っています。今私がこうCOVID-19、ウイルスの感染を起こしても全く不思議ではない。
その PPE とかですね手袋とかあってもですね、安全と安全じゃないところっていうのをちゃんと区別できてないそんなものは何の役に立ったないんですね。レッドゾーンでだけPPE をきちっとつけてする安全に脱ぐっていうことを遵守して初めて自らの安全が守れる。自らの安全が保障できないときに他の方の安全なんか守れない。今日は藤田医科大学に人を送ったり搬送したりするってことで皆さんすごく忙しくしてたんですけど、そうするとこう研究所の方と一緒に歩いててヒュッと患者さんとすれ違ったりするんです。今、患者さんとすれ違っちゃうと、笑顔で検疫所の職員が言っているわけですよね。
我々的には超非常識なこと平気で皆さんやってて、でみんなそれについて何も思っていないと。聞いたらそのそもそも常駐してプロの感染対策の専門家が一人もいない。あの時々いらっしゃる方いるんですけど彼らも結局やばいなと思ってるんだけど何も進言できないし、進言しても聞いてもらえない
やってるのは厚労省の官僚たちで、で私も厚労省のトップの人とに相談しました、話ししましたけどものすごく嫌な顔せて聞く耳持つ気ないと。で、「なんでお前こんなとこにいるんだ」「何でお前がそんなこと言うんだ」みたいな感じで知らん顔するということです。非常に冷たい態度を取られました。
DMATの方にもそのようなことで「夕方のカンファレンスで何か定義申し上げてもよろしいですか」と聞いて、「まあ、いいですよ」という話をしてたんですけど、突如として夕方5時ぐらいに電話がかかってきて、「お前は出ていきなさい」と検疫の許可は与えない、まあ臨時の検疫官として入ってたんですけど、その許可を取り消すということで資格を取られて研究所の方に連れられて、当初電話をくれた厚労省にいる人に会って、「なんでDMATの下でDMATの仕事をしなかったのと感染管理の仕事をするなと言ったじゃないか」と言われました。
DMATの方にそもそも感染管理してくれって言われたんですよって話したんですけど、とにかくあの岩田に対してすごいムカついた人がいると、誰とは言えないけどムカついたと、お前はもう出ていくしかないんだ、って話をしました。
でも僕がいなかったら、いなくなったらこの感染対策するプロに一人もいなくなっちゃうって話をしたんですけど、それは構わないんですかって聞いたんですけど、それからこのままだともっと何百人というかな感染者がおきてDMATの方も……DMATの方を責める気はさらさらなくて、あの方々は全くその感染のプロではないですからその
どうも環境感染学会の方が入った時にいろいろ言われて、DMATの方は環境のプロ達にすごく嫌な思いをしてたらしいですね。それはまあ、申し訳ないなと思うんですけれども、別に彼らが悪いって全然思わない。専門領域へ違いますから。しかしながら彼らが実は恐ろしいリスクの状態にいるわけで自分たちが感染するという。それを防ぐこともできるわけで方法ちゃんとありますから。
ところがその方法が知らされずに自分たちをリスク下においていると、そしてそのチャンスを奪い取ってしまうという状態ですね。
彼ら医療従事者ですから、帰ると自分達の病院で仕事するわけで、今度はそこからまた院内感染が広がってしまいかねない。
ねぇ、もう~これは、あの……大変なことでアフリカや中国なんかに比べても全然ひどい感染対策をしている。シエラレオネなんかの方がよっぽどマシでした
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日本にCDCが無いとはいえ、まさかここまで酷いとは思ってなくて、もうちょっとちゃんと専門家が入って、専門家が責任を取って、リーダーシップをとって、ちゃんと感染対策についてのルールを決めてやってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです。
これ、英語でも、つたない英語でも収録させて頂きましたけど、とにかく多くの方にこのダイヤモンドプリンセスで起きていることをちゃんと知って頂きたいと思います。そしてできるならば、ちゃんと学術会ですとかね、或いは国際的な団体なり日本に変わるように促して頂きたいと思います。彼らはまぁ、あの、残念ながら。
あの、編集が下手でちょっと変なつながりになったと思いますけども、考えてみると03年のSARSの時に、僕も北京に行ってとても大変だったんですけど、特に大変だったのはやはり中国が情報公開を十分してくれなかったというのがとても辛くて、何が起きているのかよく分からないと。
北京にいて本当に怖かったです。でも、その時ですらもうちょっときちっと情報は入ってきたし、少なくとも対策の仕方は明確で、自分自身が感染するリスク、SARS死亡率10%で怖かったですけれども、しかしながら今回のCOVID-19、少なくともまぁ、ダイヤモンドプリンセスの中のそのカオスの状態よりは、遥かに楽でした。
思い出して頂きたいのは、そのCOVID-19、武漢で流行りだした時に、警鐘を鳴らしたドクターが、ソーシャルネットワークを使って、これはヤバいと勇気を持って言ったわけです。昔の中国だったらあのようなメッセージが外に出るなんて絶対許さなかったはずですけど、中国は今、BBCのニュースなんか聴くと、やっぱ、オープンネスとトランスペアレンシー(透明性)を大事にしているとアピールしています。
それがどこまで正しいのか僕は知りませんけど、少なくとも透明性があること、情報公開ちゃんとやることが、国際的な信用を勝ち得る上で大事なんだってことは理解しているらしい。
中国は世界の大国になろうとしてますから、そこをしっかりやろうとしている。ところが日本は、ダイヤモンドプリンセスの中で起きてることは全然情報を出していない。
それから、院内感染が起きているかどうかは、発熱のオンセットをちゃんと記録して、それから、カーブを作っていくという、 統計手法「epi-curve」 ってのがあるんですけど、そのデータを全然とっていないということを、今日教えてもらいました。 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応) の検査をした日をカウントしても、感染の状態は分からないです。
このことも実は厚労省の方に既に申し上げていたんですけども、何日も前に。全然、されていないということで、つまり要は、院内の感染がどんどん起きててもそれに全く気付かなければ、気付いてもいない、対応すらできていない、で、専門家もいないと。ぐちゃぐちゃな状態になったままでいるわけです。
このことを、日本の皆さん、或いは世界の皆さんが知らぬままになってて、特に外国の皆さんなんかはそうやってこう、かえって悪いマネジメントで、ずっとクルーズの中で、感染のリスクに耐えなきゃいけなかったということですね。
やはりこれは日本の失敗なわけですけれども、それを隠すともっと失敗なわけです。 確かにあの、まずい対応であるということがバレるというのは、それは恥ずかしい事かもしれないですけど、これを隠ぺいするともっと恥ずかしいわけです。
やはり情報公開大事なんですね。
誰も情報公開しない以上はここでやるしかないわけです。ぜひ、この悲惨な現実を知って頂きたいということと、ダイヤモンドプリンセスの中の方々、それからDMATやTPATや厚労省の方々がですね、或いは検疫従事の方々がですね、もっとちゃんとプロフェッショナルなプロテクションを受けて、安全に仕事ができるように……彼ら本当に、お気の毒でした。
という事で、全く役に立てなくて、非常に申し訳ないなという思いと、この大きな問題意識を皆さんと共有したくて、この動画を上げさせて頂きました。
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