白血病と闘う18歳の女子高校生が、スマートフォンで動画をつくり、同じ病を患う子どもたちやその家族を勇気づけている。「日常は当たり前のようで、当たり前じゃない」。お気に入りの歌謡曲にメッセージをのせ、生きることの尊さを訴える。
「朝目を覚ますこと ご飯が食べれること 笑いかけてくれる人がいること…… 当たり前のようで当たり前じゃありません」
11月中旬、千葉県成田市立加良部(からべ)小学校の体育館であった音楽会。ステージの大画面に、いきものがかりの曲「心の花を咲かせよう」にのせた動画とメッセージが映し出された。竹森夕海(ゆうみ)さん(18)=千葉市=は大勢の児童と一緒に、穏やかな表情で自分の「作品」を見つめていた。
夕海さんは、近くの成田赤十字病院にある院内学級「あすなろ学級」の元生徒。中学1年で急性リンパ性白血病と診断された。闘病で受験を1年延ばし、今は同県八千代市の高校に通う2年生。2月に3度目の再発がわかり、3回目の入院生活を送っている。
5年を超す闘病生活を支えてくれたのが音楽だ。3年ほど前にスマホを持つと、アプリで動画づくりを始めた。
はじめて人に作品を贈ったのは2年前の夏。白血病の治療で福島県の病院に行くことになった、入院仲間で6歳の佐藤凜汰朗(りんたろう)君=千葉県香取市=のために、いきものがかりの「笑顔」にのせた動画を作った。
♪どこまでも どこまでも 明るくなれる りんちゃん(凜汰朗君)の声がいつだって一番のひかり♪
「早く帰って来てね」と祈りながら、アレンジした歌詞に、病室で撮った凜汰朗君の写真をちりばめた。
凜汰朗君は福島で帰らぬ人になった。息を引き取る直前、手拍子をしてスマホで動画を見ていた姿を母の圭子さん(42)は忘れられない。「月命日に必ずこの曲をかける。大事な宝物」
同じ頃に亡くなった岩井優真(ゆうま)君(当時10)=同県銚子市=の家族は一周忌の際に、絢香の「にじいろ」にのせた「♪これからはじまる ゆうまくんの物語♪」という字幕つきの動画をもらった。母の広美さん(46)は「虹の向こうとこちらがつながっていて、優真はまだどこかで頑張っているように感じる」という。
つらい別れを経験し、夕海さんは、人前で思いを語るようになった。昨年に続き2回目となる音楽会への出演は、あすなろ学級で教える小田幸枝教諭の勧めで実現した。今回、夕海さんは闘病中の自分や凜汰朗君と優真君の写真を動画に取り込み、元気いっぱいの児童にメッセージを贈った。
「当たり前じゃない日常を どう生きるかは自分次第です」
前向きで笑顔を絶やさない夕海さんだが、治療後に免疫力が下がった影響で左目はほとんど見えない。骨が弱くなり自力で歩くのも難しくなってきた。
でも、調子が良ければ学校に顔を出し、友人と買い物や食事をする。ある覚悟が夕海さんを支えている。
「私はたくさん泣いて怒って そしてたくさん笑って 日々を過ごしていきたいです」
<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>
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