塩田亮吾
日本に漂着する北朝鮮漁船、遺骨――供養しているのは誰か
2/18(火) 6:58 配信
毎年、秋から冬にかけ、日本海沿岸では不審な木造船の漂着が相次ぐ。新潟県の佐渡島もそうした場所の一つだ。木造船は日本海でイカ釣りをする北朝鮮籍の漁船とみられる。日本の排他的経済水域、EEZ内で違法操業を行う船も多いという。粗末な船での漁は、船員にとっては命がけだ。日本海の荒波で転覆し、命を落とす船員も少なくない。浜に流れ着く船、遺体。それを処理し、供養するのは誰なのか。冬の佐渡島に飛んだ。(取材・文:ノンフィクションライター・中原一歩、撮影:塩田亮吾/Yahoo!ニュース 特集編集部)
佐渡島に流れ着いた木造船
冬の佐渡には「波の花」が咲くという。これは、強風に巻きあげられた波の一部が、泡状の「花」となって辺り一面を埋め尽くす現象だ。こうした日は決まって台風並みに発達した低気圧が日本海に居座っている。
古くは流刑の島として知られる佐渡島は、新潟県の沖合32キロに浮かぶ。人口は約5万4千人。半農半漁の島で、近年は農業を志す移住者も多い。新潟と佐渡の間には、1日数便の連絡船が運航しているが、海が荒れる冬は運休する日もあり、そうなると佐渡は四方を海に囲まれた孤島となる。
素浜海岸に漂着した木造船(2019年12月15日撮影)
木造船が漂着している――。
佐渡在住の知人から情報が入ったのは12月初旬だった。向かったのは島の南西に位置する素浜(そばま)海岸。夏は海水浴場として家族連れで賑わう浜辺も冬は閑散としていて、周囲に人影は見当たらない。
波打ち際に朽ち果てた無人の船が打ち上げられていた。全長は10メートル強。外形こそ船だと分かるが、甲板には何もない。操舵室は無残にももぎ取られ、錆びたエンジンがあらわになっている。相当、長い時間、海上を漂っていたのだろう。船内は浸水した形跡があり、甲板の内側に藻や貝が付着して、乗組員のものと思われる長靴などの遺留品が船底に放置されていた。
木造船の甲板、内部
船首と船尾の外板に、「587-61174」の数字とハングルで「リョンジン」と書かれている。調べると、リョンジンとは「連津」と表記され、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の北東部、咸鏡北道清津市青岩区域に位置する港町だと分かった。
数字の下に「リョンジン」と書かれている
佐渡海域の警備を担当する第九管区海上保安本部に問い合わせると、この船は「北朝鮮からのものと思われる漂流・漂着船」だという。同本部がこの船を「北朝鮮籍」と断定しないのは、船長も乗組員も不明で、持ち主が特定できないからだ。
同様の木造船の発見が日本海沿岸で相次いでいる。2019年、日本国内で確認された木造船は158隻。また今年に入ってすでに17隻(2020年1月16日現在)が確認されている。
木造船は、北海道、青森、秋田、山形、新潟、福井、島根県の日本海沿岸部などに漂着している。佐渡島への漂着も多い。海上保安庁の資料をもとに編集部で図表作成(図表:EJIMA DESIGN)
海上保安庁の資料をもとに編集部で図表作成。2019年の確認件数は2018年のものと比べ減少している(図表:EJIMA DESIGN)
木造船はなぜ漂着するのか
どうして木造船は日本海沿岸に漂着するのだろうか。第九管区海上保安本部・総務部総務課の箕輪周一企画係長によると、これらは日本のEEZ内にある大和堆(やまとたい)でイカを釣っている漁船だと話す。大和堆とは佐渡島の沖合にある岩礁で、日本海有数の漁場として知られている。
「大和堆周辺で確認された北朝鮮の船は、年間のべ1624件(2018年)。警備に当たる海上保安庁の巡視船の警告を無視し、それでも操業を続けるため放水を浴びせるなどして日本のEEZ内から退去させた船は513件(同)ありました。これらの船は大きさにもよりますが、およそ10人から20人が乗船していることを確認しています」
しかし、秋以降、大和堆周辺では最大風速20メートル強の猛烈な北西の季節風が吹く。そうなると装備の古い北朝鮮の船はひとたまりもないと佐渡漁業協同組合・専務理事の内田鉄治さんは話す。
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