ドローンの小型化・高性能化により、防衛上脅威となる国やテロリストが操作するドローンが群れを成して襲来する「飽和攻撃」が想定されている。ドローンは出現予測が難しく、発見した時点でかなり接近していると考えられ、対処の時間に猶予が無い。
こうした事態に備えるため、防衛省の外局で防衛装備品の研究開発や調達を担う防衛装備庁は、ドローンの迎撃にも役立つ技術の研究を進めている。その成果を2019年11月に催した「防衛装備庁技術シンポジウム2019」で披露した。
高出力マイクロ波と高出力レーザーの組み合わせも
公開したのはミサイル防衛(MD)などのために研究している「高出力マイクロ波」を小型ドローンに照射した試験の成果である。MDに向けて研究している技術が、小型ドローンを墜落させることも原理的には可能であると試験で判明した格好だ。
高出力マイクロ波の利点は幾つかある。具体的には(1)照射対象に光速で到達する、(2)ビーム幅があるため命中率が高い、(3)弾数の制約がなく低コストで運用できる、(4)装置の方向を物理的に変えなくてもマイクロ波の照射方向を電子的に変更できるので、飽和攻撃に対処しやすい――などだ。4番目の照射方向を電子的に変更できるのは、アクティブ・フェーズドアレイ(位相配列)方式を採用しているためで、世界でも珍しい試みだという。
2019年7月に同庁が実施した試験では、周囲の電波に影響を受けない「電波暗室」において、高主力マイクロ波照射装置を設置し、市販の小型ドローンを10メートル先に2.5メートルの高さでホバリング(空中浮揚)させた。
ここで小型ドローンに対してマイクロ波を照射したところ、一定の電界強度(電波の強さ)でドローンを墜落させたり制御できなくさせたりできた。マイクロ波が通信系やセンサー系などドローン内部の電子回路に影響を与えたためだ。
防衛装備庁の技術戦略部は「マイクロ波の出力を強めれば、原理的には100メートル先のドローンを墜落させることも可能だ」とする。現状は研究段階だが、早期の装備化に向け、出力の向上と装置の小型化を図るための検討を進める方針だ。