社会人として得た知識や経験を生かし、大学教授になるという夢を一度は持ったことがあるビジネスパーソンも多いだろう。
だが、大学教授になる方法はもちろんのこと、「大学教員」(教授以外の役職を含めた総称)という職業は、多岐にわたるため非常に分かりにくい。思い付くだけでも、「学長補佐教授」「特任教授」「客員教授」「招聘教授」など、さまざまな呼称がある。
ここまで大学教員が多様化したのは、1990年代の国の規制緩和を抜きには語れない。
先に挙げたのは大学教員の役職名のほんの一例だが、正規の大学教員というわけではない。正規の大学教員に比べて給与も低めで、大学側も採用しやすい。よって、このような肩書が増えた結果、大学教員の総数も増加していったわけだ(下図参照)。
ちょうどこのころ、総合政策、国際、情報系といった新ジャンルの学部が大学に乱立した。既存の教授陣では対応できない分野だったため、多くの民間企業経験者が「特任教授」「客員教授」などとして迎え入れられた。
さらに拍車を掛けたのは、2000年代初頭から増えた、経営大学院(ビジネススクール)、法科大学院(ロースクール)、教職大学院といった専門職大学院の創設である。近年では、専門職大学という新しい形態の大学まで登場するほどだ。
現在国の規定で、社会人を経て大学教員になった「実務家教員」を全教員のうち4割以上配置することが必要になっている。故に、大学教授に転身したいビジネスパーソンには、かつてないチャンスが到来しているといえよう。
まずは大学院で博士の学位取得が
最低限必要
では、具体的に教授になる方法を見ていこう。大学教授への道は、大きく二つのパターンがある。
一つは、多くの人がイメージする「アカデミック教授」といわれるもの。大学の学部を卒業後、大学院の博士課程まで進み、純粋な研究者になるためのコースを経るルートである。
一方、本特集で扱うのは「社会人教授」(実務家教員)を目指すルートだ。主に学部(文系が多い)を卒業した後、企業や官公庁、非営利組織などを経て大学院に再入学し、社会経験を基に、それに関する研究業績を積み重ね、大学教授になるルートを指す。
両者とも経緯は異なるものの、大学教授としての格は同じである。
社会人が大学教授になるための近道は、こうだ。まず、働きながら大学院に通い、博士号を取得する。そして、良質な学術論文を、自分の専門とする学会に発表することである(下図参照)。
近年では、働きながら博士号を取得できる社会人大学院(専門職大学院を含む)や通信制の大学院も多くの大学に設置されている。入学試験の負担も軽い場合が多く(書類審査、小論文、面接試験などで選抜)、社会人に配慮したカリキュラム(夜間や土日だけで博士号を取得できる)を行っている大学院はチャレンジしやすいはずだ。では、その中身について具体的に見ていこう。
【大学教授転身秘話】
●教授になるためには、学内の人事や政治に詳しい人となるべくつながることが、有力なコネになる。大学院の研究室を選ぶ際、そういった教授のところに入るべきだ(50代・私立大学准教授)。
●教授もまだまだ学閥の世界。大学院は旧帝大、一橋大、東京工業大クラスに行きたいところだが、神戸大、筑波大でも社会人教授になった例が多くお薦め。海外では米国の大学がよい(40代・国立大学教授)。
※ 『週刊ダイヤモンド』2019年3月2日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)