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ウェルネスとーく

コラム

[仮面女子 猪狩ともかさん](下)「娘は働けません」と伝えた父に、事務所は「やれることはたくさんあります」

 人気地下アイドルグループ「仮面女子」のメンバーで、2年前に事故で下半身不随になり、車いすで活動を続ける猪狩ともかさん。障害を抱えながらも笑顔を絶やさず、前向きな姿勢は、逆に多くの人を励ましています。アイドル活動を続けられた理由や、車いす生活になって感じていることなどを聞きました。(聞き手・藤田勝、撮影・中山博敬)

予定通りに動けないこともある車いす生活

――車いす生活に不便を感じることは多いですか。

 タイムリーな話ですけど、きょうは予定通りに行動できませんでした。埼玉の自宅からタクシーで都心に出る予定が、雨や雪の天気のせいでつかまらず、急きょ電車に変更しました。そのうえ、講演する会場に駅が直結という地下鉄にわざわざ遠回りして乗ったのに、そのルートには階段しかなく、いったん外で出ることになり、悲しいやら、怒りがわいてくるやら……。そんなことも、たまにあります。どこにも気持ちをぶつけようがなくて、家族に当たっちゃったりすることもあります。

――でも、いつも笑顔ですね。

 マイナスな面はあまり見せないように心がけていますが、気持ちが沈むこともあります。そんなときは発散しないといけないので、だれかと話したり、ドラマやアニメを見て、そっちに意識を持っていったりして、何とか保っています。ライブもそうですね。ステージに出るとアドレナリンが出て、ワーってなります。

――電車に乗るのは慣れましたか。

 自宅の最寄り駅から数駅先までは、ひとりで行けるようになりました。でも、乗り慣れない駅までひとりで行く勇気は、まだないですね。駅や電車の種類によって、ホームと車両の間のすきまの広さが違ったり、電車に車いすで乗るときのスロープの勾配が違ったりするので、ドキドキします。

――車の運転もしていますね。

 自宅から30分圏内ぐらいなら、ひとりで行けます。いずれ高速道路も運転できたらいいなと思っています。

けがを機に家族の理解も深まった

――家族はアイドルの仕事を応援してくれていますか。

 兄は、私に直接は言いませんが、最初すごく反対して、父に「だいじょうぶなの? 甘やかしすぎじゃないの」って言っていたらしいです。でも、事故の後、たくさんの人が応援してくれたことで、「家族以外にも、こんなに支えてくれる人がいるなんて」っていう感じで、やっと理解してくれたみたいです。

 両親は応援してくれますが、父は心のどこかで「早く管理栄養士として働かないかな」と思っていたようです。けがをした時、事務所に「ごめんなさい。娘は働けません」って言ったらしいのですが、「だいじょうぶですよ、全然。車いすでもやれることはたくさんあるので」と言われて、救われたようです。今は、私を支えてくれる事務所の姿勢に感銘して、「一生、そこで働きなよ」って言ってます(笑)。本当に、仮面女子じゃなかったら、自分はどうなっていたんだろうって思います。

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