ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 初アルバムが到着! 白井悠介、弥之助、ESME MORIが語るシブヤの新曲“Stella”と〈ヒプマイ〉の世界
機は熟した! 勢いの止まらない人気コンテンツの初アルバムがいよいよ到着。シブヤを取り巻く3人が、このヒップホップ・エンターテイメントの魅力を語る
声優の演じる12人のキャラクターが〈イケブクロ〉〈ヨコハマ〉〈シブヤ〉〈シンジュク〉の4つのチーム(ディビジョン)に分かれてラップで競い合うコンテンツ〈ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-〉。2017年9月の始動から楽曲及びドラマ・トラックを中心に展開され、実際に日本のヒップホップ・シーンで活躍しているアーティスト/クリエイターらも作家として起用した楽曲と声優ならではのラップ表現、少年マンガ的なストーリーの融合によって、今や絶大な人気を獲得している。
昨年にはユーザーの投票結果によってバトルの勝敗が決まるCD企画〈Battle Season〉が行われ、激戦の末にシンジュク・ディビジョンの麻天狼が優勝。その記念CDとなる『The Champion』では、麻天狼による表題曲をZeebraと気鋭トラックメイカーの理貴が手掛けて話題となった。そしてこのたび、待望のファースト・アルバム『Enter the Hypnosis Microphone』が完成。これまでのディビジョン曲及び初音源化となる12人全員=Division All Starsの楽曲、各ディビジョンのリーダーが過去に結成していたユニットであるThe Dirty Dawgのナンバー“T.D.D LEGEND”に加え、各ディビジョンの新曲と新たな全体曲を収録し、〈ヒプマイ〉のこれまでと今を一望できる作品となっている。
今回はアルバム収録の新曲のうち、シブヤ・ディビジョンのFling Posseによる“Stella”の作詞/作曲を担当したAFRO PARKERの弥之助、作曲/編曲を手掛けたESME MORI、そしてFling Posseのリーダーである飴村乱数役の声優・白井悠介を迎え、“Stella”の話題を中心に〈ヒプマイ〉の魅力について語ってもらった。
ヒプノシスマイク - Division Rap Battle- Enter the Hypnosis Microphone EVIL LINE(2019)
底知れない可愛らしさ
――〈ヒプノシスマイク〉に参加するまで、白井さんはどのようにラップに触れてこられていたんでしょうか?
白井悠介「HOME MADE家族さんとかSOUL'd OUTさんの曲を聴いたり、たまにカラオケで歌ったりはしてました。きっかけは結構アニメだったりしたんですけど(両アクトともアニメの主題歌を担当していた)。実際にお仕事としてラップをしたのは〈ヒプマイ〉が初めてだったんですが、そこで本当の難しさや楽しさを実感できた部分はあります。ラップはテンポが速かったりするので、歌よりもキャラらしい声を出すのが難しい部分があるんですよ。そこはレコーディングのたびに試行錯誤しています」
――飴村乱数としてラップするにあたって心掛けているのはどういったことでしょうか?
白井「元気でキャピッとしたキャラクターなので、毎回可愛らしさやあざとさは出していきたいと思ってますけど、いかんせん僕もかなり無理してまして(笑)。声も普段はそんなに高いわけではないので、そのなかで例えば、語尾の最後を上げるようにしたり、ポップな感じを意識して歌ってますね。ただ、一度テンションが上がったら楽というか、乱数自身が自由なキャラクターなので、ステージでは自由にできるところがあるんです。僕も素の自分はそういうタイプなので、ライヴではあまり苦労はないですね。あとは声の高さの問題です(笑)」
――皆さん、乱数がリーダーを務めるFling Posseについてはどのように捉えてますか?
白井「飴村乱数というキャラクターの裏の部分が徐々に出てきてますけど、その本心が露呈したときに他の二人(夢野幻太郎と有栖川帝統。それぞれCVは斉藤壮馬と野津山幸宏)はどういう反応を取るのか、Fling Posseは存続するのか、という意味では今後の先行きが一番気になるディビジョンだと思います」
弥之助「僕はシブヤのチーム曲(“Shibuya Marble Texture-PCCS-”“Stella”)を2曲とも担当させていただいたので、2曲を通してFling Posseのキャラクターにかなり向き合ったつもりなんですけど、いまだに掴めないところがあって、底知れないですね。ユルいようで空恐ろしいところがあって。物語のなかでもストーリーを進めていく立ち位置にいますし。ただ、結果的には何をしても可愛いんですよね。そこがまた好きなところです」
白井「お洒落なんですよね。幻太郎もどこまでウソをついてるのかわからないですし。まあ帝統は逆にわかりやすいんですけど(笑)、そこがまたいいバランスなんでしょうね」
ESME MORI「僕は3人の声のバランスがいいなあと思っていて。先ほど白井さんは無理をしてるとおっしゃってましたけど(笑)、声が高ければ高いほどいいというわけでもないですし、バラバラなようでいて絶妙なんですよね。それこそ掛け合いもそのバランスの良さで聴かせるところがあると思います」
テーマは〈エモ散らかす〉
――そんなFling Posseの新曲“Stella”は、宇宙を舞台にそれぞれの役柄に扮したメンバー3人の邂逅が物語調で描かれる、SF風の壮大なナンバーです。
ESME「最初にディレクターさんから〈惑星間を移動する物語の楽曲〉というお話をいただいたんですが、その設定が壮大すぎて〈どうやって楽曲にすればいいんだろう?〉と思いましたね。資料を読み込んでも〈わからん!〉となりまして(笑)」
弥之助「資料には、ざっくり言うと『カウボーイビバップ』や『スペース☆ダンディ』みたいなスペースオペラ的な世界観で、シブヤの3人が宇宙船に乗って星間を移動する、という設定が書かれていたんです。そもそもこの曲は〈幻太郎が書いた小説〉という設定にして、〈フィクションのなかでフィクションの話をする〉という狙いが最初にあったんですよ。そこから僕が盛大に妄想を広げた結果がコレなんです(笑)。まず最初に誰がどの星で何をしているのかを決めたんですが、そこは驚かせたい思いがあったので、あえて今までのイメージとはかけ離れたキャスティングにしました」
白井「確かに帝統が王様、幻太郎が山賊、乱数が科学者というのは意外でした。普通なら山賊は帝統だと思いますし。でも、みんな〈孤独〉という共通点がありますよね」
弥之助「そうなんです。どこから来てどこに行こうとしてるのかわからない3人が一時的に集まって何かをしでかすおもしろさが出ればと思って。Fling Posseは4ディビジョンのなかでいちばん歪な関係というか、なぜ一緒にいるのかよくわからない3人だと思うんですよ。そういう彼ららしい結束を、甘くてフワフワした“Shibuya Marble Texture-PCCS-”とはまた別の視点で描きたかったんです。深刻さや真面目な一面が出たのはESMEさんのトラックからの影響でもあるんですけど」
――トラックは各キャラのヴァースごとでトラップやブロステップ風などに変化して、サビは4つ打ちで加速感を増すという、次々と景色が移り変わるような構成です。
ESME「サビの部分は星の間を移動しているイメージで作りました。曲的に何度も場面転換する必要があると思ったので、それぞれ全然違う世界観のトラックを作って、それが最後にまとまっていくようなストーリーにしたんですが、個人的には4~5曲分の労力を使った気持ちなんですよ(笑)。でも、普段の作曲では使わないような脳を使うことができたし、〈ヒプノシスマイク〉という作品の枠にハマりさえすれば何でも自由にできるところが、大変でしたけど楽しかったです」
――イントロは映写機が回る音で始まり、そこに幻太郎のモノローグが被さるところも、この曲自体が物語であることを暗示しているように感じました。
ESME「そうですね。この提案は弥之助さんからもらいました。始まりは語り部が語っている感じにしようと思っていました。他にも科学者(乱数)のヴァースでは実験室っぽいポコポコした音をSEに使っていたり、サントラを作っているような気持になりましたね」
白井「この曲はひとつの映画を観ている感じがありますよね。ぜひ映像化してPVを作ってほしいぐらいです(笑)。僕も最初にデモを聴いたときからめちゃくちゃカッコイイと思いましたし、しかも今までのシブヤの楽曲とはまったくイメージが違うので、シブヤの3人で〈ヤバすぎない?〉ってテンションが上がっちゃいました。あと、音源と同時に設定資料をいただいたんですけど、そこに楽曲のテーマとして〈エモ散らかす〉というパワーワードが書かれてたんです(笑)」
ESME「あれ、本当にパワーワードですよね。僕も制作中にずっと意識してました」
白井「確かにめちゃくちゃエモ散らかしてるんですよ。レコーディングのだいぶ前から聴きすぎて大好きになってしまいました(笑)」
こういうことだなあ
――乱数は今回、いつもの甘い声とは異なるシリアスなラップを披露していますが、レコーディングはいかがでしたか?
白井「この曲は〈幻太郎が書いたフィクションの世界でのラップ〉という大前提がありまして、Fling PosseであってFling Posseでない、乱数で言えば科学者というフィルターを一枚通したうえでのラップになるので、声も落ち着いたトーンで歌わせていただきました。その科学者も、自分しか生命がいない星で孤独のなかずっと一人で研究している、普通の状態ではない設定だったので、声優としてのスキルが試されましたし、後半でラップが徐々に早くなっていくところもすごくやりがいがありましたね」
ESME「僕も白井さんのレコーディングには立ち会ったんですが、(キャラとしての)表現力を失わないままあの畳み掛けるフロウができることに、月並みな言い方ですが声優さんの凄さを感じました」
白井「そんなそんな。でも、レコーディングは僕がトップバッターだったので、他の二人がどういうふうに歌っているのかは気になってたんです。そしたら、帝統は王様っぽい歌い方になってましたし、あの幻太郎もちゃんと山賊になってて、そこはさすが斉藤壮馬だなと思いましたね(笑)」
――今までの〈シブヤ=ポップ〉というイメージからガラリと変わったところも大きいんでしょうね。
白井「それだけインパクトも強いでしょうし。あと、Fling Posseは最初、乱数が帝統と幻太郎を半ば無理やり誘う形で結成されましたけど、今回の“Stella”では逆に二人が乱数を導く設定なんですね。そういうところもまさしくエモ散らかしているんじゃないかと思います(笑)」
――キャラ同士の関係性の考察も捗りそうです。ちなみに仮歌のラップは弥之助さんが担当されたんですよね。
白井「あっ、そうだったんですね。めちゃくちゃ素敵なラップをありがとうございます!」
弥之助「いえいえ、心がバラバラに分かれそうで大変でしたけど(笑)。今回はキャラクターのフィルターを通しての演技になるので、3人ともキャラを演じているキャラクターっぽい仮歌を入れたかったんですけど、〈それっていったいどうしたらいいんだろう……?〉と思って(笑)。それと今回はフロウと声の高さも、今までとガラッと変えたものにしたくて、突き詰めると〈(自分が)乱数、幻太郎、帝統のこういうラップを聴きたい〉というふうに組み立てていったんです。なので出来上がったものを聴いたときの〈うわあ、こういうことだなあ〉という感動がすごかったですね」
ESME「この曲は物語としての強度がありますけど、僕は言葉のチョイスも好きなんです。例えば〈空蝉のコラージュみたいな starlight〉とか、ひとつひとつの言葉を聴くだけでグッときてしまうんですよね。〈このメロディーでこの歌詞が出ちゃうの!?〉と思わせるような歌詞で、僕もその言葉に(音のイメージを)広げてもらえたところがありました」
弥之助「その言葉は作詞家冥利に尽きますね。ありがとうございます」
ESME「こちらこそありがとうございます。僕もよく出来たなあと思って自分で聴き返したりしますから(笑)」
今までの経験がまとまりつつある
――〈物語の中の物語〉という構造はFling Posseらしくもあり、同時に新しさを引き出した楽曲だと思います。改めて皆さんの立場から見て〈ヒプノシスマイク〉の魅力はどんなところにあると思いますか?
弥之助「ラップは声が重要で、聴き手にとっては歌唱以上に好きな声/嫌いな声が色濃く出るジャンルだと思うんです。メロディーとかを削ぎ落とした結果、声の表情や色で多くの情報を伝えなくてはいけないので、声の表現をお仕事にされてる方々がラップするのはハマってたんだなと、曲が出揃ってきた今は思いますね。それとバトルの投票結果によってコンテンツの内容が変わっていくのが、インタラクティヴで新体験でした」
ESME「僕は声優とラップという一見全然違うコンテンツが組み合わさることで両方の良いところが出ていると思いますし、そのうえで〈ヒップホップとはこういうものだ〉と押し付けるのではなく、〈ヒプノシスマイク〉が入れ物となることで逆に何でもできるようになっているんじゃないかと思っていて。そういう意味では、今後もどんどん広がっていく魅力があると思いますね」
白井「お二人のおっしゃる通りですし、今まで二次元のキャラクターがラップでバトルするコンテンツはなかったと思うので、その新鮮さも取っ掛かりとして大きかったと思います。もちろん他のキャラクター・ソングもそうですけど、ラップはキャラの個性や性格が出やすいですし、〈ヒプマイ〉はちゃんとプロの方々に楽曲を作っていただいてるからこそ成立してるんだと思うんです。だからこそ我々も気合いを入れて臨まなくていけないですね」
――ちなみに、皆さんがお気に入りの〈ヒプマイ〉曲を挙げるとすればなんでしょう?
ESME「“BATTLE BATTLE BATTLE”と“Shibuya Marble Texture -PCCS-”の2曲は、楽曲のテイストは全然違いますけど、リズムの取り方ひとつ取ってもすごくしっかりしてますし、〈ヒプノシスマイク〉というひとつの表現を考えたときにものすごく成立してる印象を持ちましたね」
弥之助「あえて一曲挙げると銃兎さん(ヨコハマ・ディビジョンのMAD TRIGGER CREWに属する入間銃兎。CVは駒田航)の“ベイサイド・スモーキングブルース”はすごく好きですね。ラップは終始テンションが高いんですけど、トラックはスムースでソリッドにキメているところが、ニュー・スクール風にも感じられますし」
白井「僕は、それはもう“Stella”ですよ」
ESME「それ言えば良かった(笑)」
白井「“Stella”以外ということであれば、今回のアルバムに入っている新しい全体曲の“Hoodstar”(作詞/作曲/編曲はinvisible manners)ですね。これも今までの全体曲とは違った雰囲気で、各ディビジョンのパートごとに特徴があるんです。シブヤのパートがまたお洒落で、3人のマイクリレーがすごく気持ちいいんですよ」
弥之助「全体曲はマイクリレーが醍醐味ですものね。声色の違うラップが次々と出てくるのは楽しいですから」
――アルバムとしては各ディビジョンが新曲で新しい一面を見せ、ドラマ・トラックでは驚きの動きもありました。今後の展開のきっかけになりそうですよね。
白井「いつもそうですが、海外ドラマみたいに〈えっ! 次どうなるの?〉と思わせてくれるんですよね。今回はいつもと違うディビジョン同士で絡む場面もありましたし、気になるところも多いですけど、ドラマ・トラックを含め、今回のアルバムで初めてヒプノシスマイクに触れてくださる方でも入りやすいものになってると思うんですよ。楽曲ももちろん素晴らしいですし、聴いた後に改めて今までの作品をおさらいしたくもなる、今までのディビジョンの経験が徐々にまとまりつつある作品だと思います」
関連盤を紹介。
『Enter the Hypnosis Microphone』に参加したアーティストの関連作品。
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『Enter the Hypnosis Micro-phone』と併せて聴きたいヒップホップ作品たち
AK-69 THE ANTHEM Def Jam/ユニバーサル(2019)
ヒプマイのオールスター曲のように壮大でロックな質感のサウンドをたっぷり堪能できるのが、東海の重鎮による最新作。表題通りのアンセミックなビートを畳み掛けながら、メジャー級の風格を誇示する様が圧巻だ。Toshlとのコラボで締め括る豪快な手の広げ方は唯一無二。 *澤田
AKLO THE PACKAGE One Year War/Manhattan/LEXINGTON(2012)
スタジアム・ロックの如きスケール感と90年代マナーのプロダクションが交錯するヒプマイの音には、一時のBACHLOGIC作を想起させる瞬間が。本作は、そうしたヒプマイ曲と共に聴きたいBL仕事が詰まった一枚だ。NORIKIYOとの楽曲が一際アツい。 *澤田
KICK THE CAN CREW KICK! スピードスター(2017)
明瞭な発語とタイトな押韻に裏付けられるパーティー・スタイルによって90年代から世間を巻き込んできた最強トリオ。彼らが属するFG~DYNAMITE系クルーと縁深い池袋ならぬイケブクロ・ディビジョンにその正統派なラップ・スタイルが強く受け継がれているのも当然のことかもしれない。 *轟
餓鬼レンジャー ティンカーベル ~ネバーランドの妖精たち~ 東雲(2019)
イケブクロの三兄弟によるラジオ番組仕立ての“おはようイケブクロ”は、次々と移り変わるジングル風のトラック(□□□の三浦康嗣が制作)上で面白ネタを繰り広げる異色曲。作詞が毎度抱腹絶倒な曲で楽しませてくれる餓鬼レンジャーのポチョムキンというのも納得! *北野
RHYMESTER ダンサブル starplayers/CONNECTONE(2017)
酩酊感漂うトラップ・ソウルにヨコハマのハード・ライフを映すヨコハマの新曲“シノギ(Dead Pools)”を手掛けたのは、般若からロッカジャポニカまで幅広く関与するALI - KICK。大ヴェテランの本作でも、ゴツいブレイクビーツ曲“Back & Forth”で多芸ぶりを発揮。 *北野
DJ PMX THE ORIGINAL III BAY BLUES/HOOD SOUND/ビクター(2017)
ハードボイルドなヨコハマのスタイルからは、このプロデューサーやDS455、本作にも参加のMACCHO率いるOZROSAURUSといった同地のアーティストのあれこれが窺える。そのウェッサイなメロウネスや不穏な空気は、ハマの2曲からも感じ取れるはず。 *澤田
AFRO PARKER Which date suits best? para de casa(2019)
MCの弥之助がアルバム収録のシブヤ曲を2曲とも作詞しているのみならず、観音坂独歩のソロ曲“チグリジア”ではジャジーな演奏で参加した生音ヒップホップ・バンド。その新作ではアフロ・ポップやアーバンなシンセ曲にも取り組み、色彩感豊かな音像を獲得している。 *北野
chelmico POWER unBORDE(2018)
昨夏を彩ったガールズ・デュオのメジャー初作には、シブヤの楽曲を手掛けたESME MORIが参加。思い出野郎Aチームのホーンがご機嫌な“OK, Cheers!”、チルな“UFO”をプロデュースしている。他の楽曲も、三浦康嗣(□□□)やAvec Avecのヒプマイ曲に近いカラフルな装いが楽しい。 *澤田
P.O.P いつもSTREET LIBERA(2019)
〈SR サイタマノラッパー〉シリーズのラップ監修も手掛ける兄弟ユニットの最新作。ファンクのグルーヴを全編に脈打たせながら、爽快なAORやアーバンなハウスなどを採り込んだ多彩なサウンドを展開。シブヤ勢にも通じる洒脱なアプローチでヒップホップをエンターテインしている。 *澤田
GADORO SUIGARA コロムビア(2019)
神宮寺寂雷の重々しい“迷宮壁”を作詞したのは、MCバトルで攻撃性を発揮しつつ、音源制作に関してはポエトリー寄りの詩情豊かで切実な語り口を強い武器とするGADORO。なお、この最新アルバムには“WAR WAR WAR”を手掛けたYuto.com™とKiwyのコンビも参加している。 *轟
SANABAGUN. OCTAVE CONNECTONE(2018)
このクルーより岩間俊樹(MC)と大林亮三(ベース)が提供した麻天狼の新曲“パピヨン”で描かれるのは、いつもの殺伐とした雰囲気とは真逆の和やかな休日模様。ピアノとフルートが導くピースフルなヴァイブスが最高に心地良く、サナバの曲で言えば本作の“P・A・N・T・I・E”に近いかも。 *北野
ヒプマイ新作の初回盤では“29歳のリアル”というドラマ・トラックが聴けるが、そこから想像できる狐火の〈〇〇才のリアル〉シリーズをカヴァーした“27才のリアル”を収めているのが本作。職を捨ててラップで生計を立てる覚悟の言葉は重く、観音坂独歩役の伊東健人が参考にしたという逸話も。 *北野
この男がMSCとしての登場時から現在に至るまで〈新宿スタイル〉と称されるマナーとリアルネスを貫いてきたのは言わずもがな。彼のマイクによって描かれた危険な光と影の交錯する風景は、“Shinjuku Style ~笑わすな~”をはじめとするシンジュクの世界観にも確実に投影されている。 *轟
梅田サイファー NEVER GET OLD DFBR(2019)
伝統的な〈日本語ラップ〉感に則りながらモダンな話法を駆使する存在といえば、R-指定やKOPERU、ふぁんく、KZらも名を連ねる、この大阪のフリースタイル集団が筆頭格だろう。なかでも近年のバトルで名を上げているpekoは、“Yokohama Walker”を書いた点からも注目しておきたい男前。 *轟
DJ HAZIME AIN'T NO STOPPIN' THE DJ VOL. 2 ユニバーサル(2013)
ヴェテランDJの2作目は、個性的なMC/ビートメイカーの共演が楽しめる一枚に。特に“I REP”は壮大なビート上でDABO、ANARCHY、KREVAが三様のヒップホップ愛を宣言。全チームが並ぶヒプマイのポッセ・カットに通じるエモさとカタルシスが詰まっている。 *澤田