第 2 回肖像権ガイドライン円卓会議 IN関西
2020年2月15日(土) 14:00~17:00
同志社大学新町キャンパス 尋真館
digitalarchivejapan.org
14:10~15:00 肖像権ガイドライン(案)の提案
数藤雅彦(弁護士・五常総合法律事務所)
15:00~15:50 現場での課題
植田憲司(京都文化博物館)
松山ひとみ(大阪中之島美術館準備室)
木戸崇之(朝日放送テレビ報道局ニュース情報センター)
三浦寛二(愛荘町立愛知川図書館)
村上しほり(大阪市立大学客員研究員)
15:50~16:00 コメント
曽我部真裕(京都大学大学院法学研究科教授)
16:00~17:00 ディスカッション
司会:原田隆史(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)→代打:福島幸宏(東京大学大学院情報学環 特任准教授)
肖像権処理ガイドライン案(ver.2)をベースに関西のデジタルアーカイブの現場のお話が紹介された。
このガイドラインはデジタルアーカイブを公開基準に迷う各機関が、その判断や議論を客観化をすることを助けることを目的に作成された。
数藤さんによると、判断の客観化とはドキュメント化であるという。判断を取り下げた場合においてもそれをドキュメントとして残しておくことが重要だと。
このドキュメント化は、その後の現場からの報告やディスカッションでも、かたちを変えて何度か言及されたように思ったので、円卓会議のテーマであったのかなぁと思う。
日本には肖像権を明確に規定する「肖像権法」はなく、判例などを参考にするしかない。つまり、人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合には肖像権の侵害になると判断できる。
曾我部先生曰く、それは、名誉棄損、名誉感情を肖像の点から毀損するか、にあるという。死者に肖像権はないと解釈されるのはそのためだ。
ver.1と2の違いで最初に気になったのは点数計算の結果のカラーである。マイナス31点以下(マスキングで公開可)が、レッドからグレーになっていた点である。ほかは各チェック項目に追加があった。
たとえば、被災撮影者の社会的地位に「事件の被害者とその家族(-5)」、被撮影者の活動内容に「公共へのアピール行為(̟+10)」である。ほかには、ver.1でもあった、被撮影者の立場「社会的偏見につながり得る情報の点数」が-10/-20で議論中であることも、紹介された。
変更や加筆ではないが、写り方「多人数(+10)」の「多」は、あえて具体的な人数を明示していないそうだ。
以下、現場からの報告を簡単にまとめる。
上田氏
- 石元泰博さんのノーファインダー(隠し撮り)のスナップ写真
- 肖像権ガイドラインに照らし合わせると、マイナス点がついちゃう写真がたくさんある
- キャンディト フォト
- The Neighborsの裁判(表現として認めらた)
‐芸術の自由
‐‐現代の社会における(法律上の)芸術の自由
-
- 現代の社会とは別の秩序に属する芸術の自由
- 撮影者の属性はガイドラインに反映できるか?(という提案)
松山氏
- 中之島美術館におけるアーカイブズの2つの系統
- アーカイブズベース?(システム)を導入しているが公開にはいたっていない。
- 問い合わせ対応するための管理システムとして、デジタル化
- 具体美術協会(すでに解散)が作成した、写真コレクションのアルバム(写真のキャプチャとネガフィルムの番号が対応している)
‐‐‐PDと判断した
- アルバムを公開したいが、被写体を特定しないと目的(ネガを特定)が達成されないが、特定すると肖像権を精査する必要がある。
- その時間がない。遺族の感情がある。
- 法的にはOKだけど、感情的にNGなことがある。
木戸氏
‐取材映像アーカイブ
‐‐インタビューの重視(被災者の顔)
‐‐‐被災者の肖像権に配慮すると避難所の映像が少なくなる。
‐どのような議論をしたか?
‐‐肖像権…社会的受忍の限度を超えるのか?社会的意義とのバランス
‐‐個人情報…氏名、住所、電話番号がうつった場所はカット
- 避難所に今は入れないからこそ、避難所の映像が大事だったり
- 報道出来る範囲が道義的に縮小している。からこそ
- 被写体の名誉を傷つける可能性が容易に推察できるものは加工
- 災害対応に激昂、悲しみに取り乱す、受験したけど結果が不明、職探ししたけど結果が不明、病歴
- 遺影、被救助者、震災孤児も加工したり、非公開に
‐受忍限度を定量的に把握した。30名くらいの人にインタビュー(反対はされなかった)
三浦氏
‐古写真の収集、保存、公開
‐おおよその担当者判断基準で
‐町のみなさんに懐かしんでもらうために
‐顔が見える関係だからこそできる草の根収集
村上氏
‐阪神・淡路大震災「1.17の記録」
‐‐顔に機械的なマスキング処理
‐人と防災未来センター
‐‐館内閲覧、インターネット公開、利用(ダウンロード)の複数段階で公開を考える
‐‐「震災資料の公開等に関する検討委員会」報告書 (H17.6)
‐‐個別事情で公開制限したものは10年ごとに見直す
曾我部先生
‐ABCのアーカイブで協力し、ガイドラインを紹介した
‐死者の承諾の問題
‐‐遺族から提供された写真(+15)死者には肖像権はない
‐‐あるのは遺族への配慮(遺影)や閲覧者の保護という文脈
‐step2の同意は何か?同意を得る努力の有無を問うのか?
‐公開機関によって公共性は変わってくるのか?それによってガイドラインの点数付けが変わるのか?
‐撮影者側の視点がない。
‐オプトアウトを想定する
‐‐時間の経過とともに見直すことを含んだ公開基準とする
‐‐公開は出来ないけど、持っておくことが求められる
‐アーカイブは報道なのか?
‐‐個人情報の適応除外に報道はあるが、そのアーカイブには?
ディスカッション
‐写真のサイズは論点にはいるか?
‐ガイドラインの外の契約の観点
‐現場のガイドラインを作る必要がある
資料の文脈をどう判断するのか
‐‐撮影目的(別の秩序)をどう考えるか?
‐アーカイブになる=撮影した時の目的とは違う可能性にある
‐‐目的外使用。報道≒記録?