「日本経済新聞 電子版」の有料会員数が70万人を超えました。2010年3月に創刊し、まもなく10年を迎えます。当初は30~50代のビジネスパーソンを中心に有料会員を増やしてきましたが、近年は20代を中心とする若年層の読者が増え、成長をけん引しています。
19年に有料会員になった20代は10万5000人超と5年前の3.7倍になり、世代別でも新規有料会員で最多の36%を占めました。仕事や就活のため、有料登録する新社会人や学生が増えています。女性の新規有料会員も7万3000人超と5年前の3.7倍になりました。
iPhoneなどのアプリ内で手軽に購読料を払えるようにし、利便性を向上。10月にはPCトップ画面のデザインを刷新し、操作性や、写真などの表現の自由度を高めました。無料会員を合わせた総会員数は470万人を超えました。
コンテンツ面では、ネット上の情報を分析して報道に生かす「データジャーナリズム」や、ニュースの要点を多彩な表現で示す「ビジュアルデータ」など、デジタル時代の手法を駆使し、価値ある情報を分かりやすく伝える努力を続けています。
「データジャーナリズム」は様々なデータを収集・分析し、社会や経済のトレンド、問題を見つけ出す調査報道の新たな手法です。「中国版GPS網、世界最大 130カ国で米国製抜く」(2019年8月)では、衛星軌道のデータから宇宙時代の米中攻防を分析。19年度新聞協会賞を受賞した連載企画「データの世紀」でもデータ分析技術の活用に取り組んでいます。
また、昨春スタートの「チャートは語る」シリーズでは、中国マネーの変調を「中国、陰る外貨パワー 10年で130兆円流出」(19年6月)で明らかにしました。
ビジュアルな表現にも挑戦しています。2020年の新連載「逆境の資本主義」では、格差拡大や環境破壊など世界が直面する深刻なテーマを、分かりやすいアニメで親しみを持って考えてもらえるよう工夫しました。
新聞になじみの薄い若年層を意識し、ビジネスの現場で人々が織りなすドラマを描く「ストーリー」をシリーズ展開中です。ツイッターやネット投稿プラットフォーム「COMEMO」で投稿を募り、その声を報道に生かすという、読者と双方向のやりとりも重視しています。
コンテンツ制作を担う編集局の体制もデジタル時代に合わせ大きく変えました。読者の関心の度合いである「オーディエンスエンゲージメント」をデータを基にリアルタイムで分析する担当者を置き、コンテンツの制作や見せ方に生かすようにしました。日本の深夜から早朝の時間帯は米州編集総局でその役割を担っています。
自然言語処理などの人工知能(AI)を使って日経電子版の記事を短い話し言葉に自動変換する「AIアナウンサー」が解説する記事も登場しました。日経のベテラン記者が専門分野を読み解く有料会員向けのニューズレター「NIKKEI Briefing」も創刊し、のべ購読者数は13万人を超えました。
今月下旬には、「経済・金融」や「ビジネス」など注目記事を分野ごとにまとめるセクションページを強化します。芸術作品を扱う「文化」は、写真が映えるビジュアルなデザインに刷新。「経済・金融」や「ビジネス」などニュースを中心に扱うページは編集者えりすぐりの解説やコラムを増やし、さらに読み応えをアップさせます。「オピニオン」では、鋭い分析記事を執筆する一押し記者を担当分野とともに紹介します。
3月下旬には新セクション「マネーのまなび」を開設します。日経ヴェリタスや日経BPの月刊誌「日経マネー」などマネー関連コンテンツを集約。コミュニティーやイベントも交えながら、家計から投資までおカネにまつわる幅広い、正確な知識が得られる場を目指します。