オリオン座に輝く赤色超巨星「ベテルギウス」は昨年2019年後半から暗くなり続けており、超新星爆発が間近に迫っているのではないかと話題になっています。2月14日、ベテルギウスとその周辺を写した最新画像がヨーロッパ南天天文台(ESO)から公開されました。
■一部が暗く見えるベテルギウスの表面と、周囲に広がる塵を捉えた
Miguel Montargès氏(ルーヴェン大学、ベルギー)らの研究チームは、ESOのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」に設置されている観測装置「SPHERE」を使い、およそ700光年先にあるベテルギウスを継続的に観測しています。今回公開された画像の1つは、Montargès氏らが2019年12月に撮影したベテルギウスのクローズアップ画像です。同年1月に撮影された画像と比較すると、ベテルギウスの一部が暗く見えるようになったことがわかります。
また、Pierre Kervella氏(パリ天文台、フランス)らの研究チームが2019年12月に撮影した、ベテルギウスから放出されて周囲に広がる塵を写した画像も公開されています。使われたのは超大型望遠鏡に設置されている観測装置「VISIR」で、ベテルギウスからの強い放射をさえぎることで、塵が放つ赤外線を捉えています。
赤色超巨星であるベテルギウスは、いずれ超新星爆発を起こす運命にあるとみられています。ただ、研究者の多くは、現在観測されているベテルギウスの減光が超新星爆発に直接結びつく可能性は低いと考えています。
前出のMontargès氏も、今回の減光は「ベテルギウスの例外的な活動によって表面の温度が下がった」か、あるいは「地球の方向に塵が放出されたことでベテルギウスの光がさえぎられた」ことが原因ではないかとの仮説を立てて研究を進めています。ただ、ベテルギウスのような赤色超巨星に関する知識はまだ限られており、異例な減光も進行中であることから、「驚きが待っている可能性もある」としています。
もともとベテルギウスは明るさが変化する脈動変光星として知られており、複数のパターンに従って増光と減光を繰り返してきました。25年間に渡りベテルギウスを観測し続けてきたEdward Guinan氏(ビラノバ大学、アメリカ)は、今年の2月21日頃(誤差は前後一週間)を境にベテルギウスが増光に転じると予想しています。
いま観測されているベテルギウスはおよそ700年前の姿なので、異例の減光も厳密に言えばすでに過去の出来事ですが、私たちはまだその結末を知りません。Guinan氏の予想通りであれば、ベテルギウスの減光もそろそろ底を打つ頃。今月末までにどのような変化を示すのでしょうか。
Image Credit: ESO
Source: ESO / Sky & Telescope
文/松村武宏
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